2013年7月2日火曜日

アジア市場に迫り来る危機:商品相場や鉱業株の急落はほんの手始め?

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●この1週間の出来事から、コモディティー業界に不安の波紋が広がった(写真はオーストラリアの鉄鉱石採掘現場)〔AFPBB News〕


JB Press 2013.07.01(月)  Financial Times:
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38120

アジア市場に迫り来る危機
試される投資家の「信念」、1997年当時とは違う?
(2013年6月28日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 証券会社は今、アジアの新興国が1997年当時よりはるかに健全な状態にあり、米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和政策の打ち切りに耐えられるということを示す図表をせっせと印刷している。
 1997年というのは、7月2日のタイバーツ切り下げによって、アジアの金融危機が本格的に始まった年だ。

 彼らのお気に入りの図表は、16年前に無力だった国々が、今は短期債務の2倍の外貨準備を持っていることを示している。

■アジア危機当時より外貨準備は増えたけれど・・・

 いざという時の蓄えがこれだけ潤沢にあるため、インドネシア、マレーシア、フィリピン、韓国、タイといった国々は(そして恐らく不運なインドでさえ)、かつてほど脆弱ではない。
 少なくとも表面的には、そうだ。
 だが、この地域は本当にそれほど幸運なのだろうか?

 予想されるFRBの金融引き締めと中国の成長減速が組み合わさった結果、重圧の兆候が既に表面化し始めている。
 アジアの通貨と、この地域の債券・株式市場はともに下落しており、結果として金融状況がタイトになっている。

 市場の下落に伴い、家計、企業、政府にとって資本コストが上昇し、過去数年間の投資の質が試されている。

 アジア地域の金融大手として事業範囲を広げているシンガポールの銀行、DBSでは、リスクマネジャーたちが、現地通貨が少なくとも10%下落することを前提に、借り手がこうしたより厳しい状況に耐えられるかどうか調べるために融資残高のストレステストを行っている。

 アナリストの中には、その前提が楽観的すぎると考える者もいる。
 SLJマクロのスティーブン・ジェン氏は、新興国への資本流入が逆転しているため、
 多くの通貨は少なくとも15%下落すると想定している。

 中国の成長減速は、中国自身にとっては良いことかもしれないが、中国の需要、特にコモディティー(商品)に対する需要から恩恵を受けてきた近隣諸国の経済にとっては有害であることが判明するだろう。

 最も大きな打撃を被るセクターの1つが鉱業。
 つまり、オーストラリアやインドネシアの大手石炭会社や製鉄会社だ。

 「ここでは誰もが鉱山を持ちたいと思っている」。
 国際的に事業展開するアジアの大手プライベートエクイティ投資会社のトップはこう言う。
 「まるで中国の『大躍進』のように、すべての裏庭に鉱山を持とうとした」

 だが、そうした願望は、中国が年10%の成長を示していた時に生まれたものだ。
 恐らく中国はもう2度と、そんなペースでは成長しないだろう。

■苦悩の兆候が見えるオーストラリア、
 「中国暴落リスクに対する保険」

 通貨の下落が特に劇的なオーストラリアでは、最初の苦悩の兆候が既に現れている。
 前回の金融危機で特に大きな利益を上げたファラロンは既に、オーストラリアの鉱業会社ホワイトヘイブンへの救済資金の提供に乗り出している。

 オーストラリアの政府高官らは、経済のバランスが以前より良くなり、製造業は景気減速から恩恵を受けると話しているが、
 オーストラリアは人口が少なく、労働力も高価であるため、こうした主張は希望的観測だ

 一方、多くのヘッジファンドは、中国について楽観的であるためか、あるいは中国について悲観的で、オーストラリアを中国本土の見通し悪化の犠牲者と見なしているために、ヘッジとしてオーストラリアでショートポジションを取っている。

 「これは中国の暴落リスクに対する保険だ」とシンガポールのあるヘッジファンドは指摘する。
 実際、オーストラリアは外国資本への依存を減らしてきたが、現在の状況では十分とは言えない。
 オーストラリアについて言えることは、インドネシアのような他の国々についても言える。

 この地域が1997年のトラウマから教訓を学んだと考えるのは、素晴らしいことだ。
 例えば、韓国は(同国では当時の悪夢がいまだに「IMF危機」として語られる)、資本収支が大幅な黒字になっており、外貨準備も増えた。
 それでも、外国人は、韓国の株式市場と国債市場から資金を引き揚げている。

①.資金引き揚げは、外国人投資家が、円の対ウォン相場を押し下げる日本の取り組みと、韓国にとって最大の市場である中国の減速の双方から打撃を受ける韓国に神経を尖らせているからなのだろうか? 
②.それとも、韓国が東南アジアの他の市場よりもはるかに流動的であるため、外国人がアジアへの投資を減らしたいと思った時に、韓国市場は手を引くのが一番簡単だからなのだろうか?

 そして、どちらにしても悪影響が同じであることを考えると、その理由はどれほど重要なのか?

 今回は前回とは違うし、アジアにとって状況はましだという自信が生まれる1つの理由は、この地域のドルの借り入れが少ないという確信だ。

 だが、そうした自信は正当化されないかもしれない。
 ここ数カ月間、FRBが低利資金という万能薬の供給を減らすことを公然と考慮すると予想していた人はほとんどいなかったし、ドルが上昇すると予想していた人はさらに少なかった。

■再び増え始めたドルの借り入れ

 銀行関係者や投資家によると、インドネシアやインドのような国では、一部のグループ、特に民間企業が利払い負担を抑えるためにドルを借り始め、こうしたドルのエクスポージャーをわざわざヘッジしていないという。
 もちろん、前回の危機で非常に多くの企業を災難に巻き込んだのは、そうしたドルの借り入れだった。

 この事実は、事態が今後悪化する可能性があることを示唆している。
 隠れたレバレッジ(借り入れ)の厄介な点は、いつまでも隠れたままではないことだ。

By Henny Sender
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JB Press 2013.06.28(金)  Financial Times:
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38109

コモディティー・スーパーサイクルの死
商品相場や鉱業株の急落はほんの手始め?
(2013年6月27日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 コモディティー(商品)の「スーパーサイクル」は死んだ。
 中国の急成長を原動力に価格が果てしなく上昇する時代が終わったかどうか、
 まだ疑問に思っている人がいたとしたら、この1週間の出来事が間違いなく疑いを払拭したはずだ。

 米連邦準備理事会(FRB)が「量的緩和」プログラムの縮小をほのめかした後の米ドル高騰と、中国での流動性逼迫への懸念が相まって、コモディティー業界に不安の波紋が広がった。

 では、投資家はどうすべきなのか? 
 その答えは、見た目ほど明白ではないかもしれない。
 大半のコモディティーの価格は既に劇的に下げている。
 2011年に高値をつけてから、銅価格は35%下げ、鉄鉱石の価格は40%、金の価格は36%下落した。

■鉱業株の空売りはもう遅い?

 クレディ・スイスのコモディティー販売部門を率いるカマル・ナクビ氏は言う。
 「投資家は大抵、原材料需要の減退を見込んだポジションを取ってきた。
 だが、今はその取引の終わりに近づいている。
 ここから先、確信を持って金属を売りに回るかどうかについては、顧客は、人々が織り込んできたよりも需要が弱いか、供給が多いか、あるいはその両方だという裏づけを待っている」

 コモディティー生産者の株価は、相場以上に激しい圧力にさらされてきた。
 アングロ・アメリカンの株価は2011年の高値から64%下落し、ヴァーレは45%、カザフミスは85%下げた。

 ジェフリーズの金属・鉱業専門家、ジェイク・グリーンバーグ氏が言うように、
 「もし誰かが今の段階でスーパーサイクルの終焉というテーマに基づき投資を行っているのだとすれば、鉱業株の空売りパーティーには少し遅い」
ということになる。

 コモディティーの弱気筋としては、どうすべきなのか? 
 一部のトレーダーとヘッジファンドは今、コモディティーのスーパーサイクルの終焉から利益を得るために、少々難解なチャンスを模索している。

 コモディティーに特化した香港のヘッジファンド、HFZキャピタル・マネジメントのポートフォリオマネジャー、スコット・ホバート氏は、コモディティーブームで儲けてきた産業や経済の中には、まだ金属価格や鉱業株で起きた急落を免れてきたところがあると言う。

 なおかつ、スーパーサイクルの終焉は一部の産業に対し、鉱業企業以上に激しい影響を及ぼす可能性が高い。
 鉱業会社の利益が落ち込むにつれ、新たな鉱山に対する投資は恐らくもっと早いペースで落ち込む。
 実際、この1年というもの、鉱業セクターの経営者の発言の多くは、もっぱら設備投資の削減に関するものだった。

 オーストラリアの資源・エネルギ-経済局(BREE)は最近、同国内では過去1年間で1500億豪ドル(1390億米ドル)相当の資源開発プロジェクトが中止ないし延期されたとの試算をまとめた。
 シティグループは、鉱業分野の世界の設備投資は2015年までに昨年より30%減ると予想している。

■鉱業大手の投資削減でサービス会社にダブルパンチ

 こうした投資の減少は、パワーショベルやドリルビットのメーカーからオーストラリアの奥地で仮設住宅を提供する会社に至るまで、鉱業企業にサービスを提供することを生業とする企業にとって悪い前兆だ。

 「鉱業企業は最初にサイクル逆転の痛みを感じたが、我々の見るところ、それはインパクトの第一ラウンドに過ぎない」
とホバート氏。
 「ほかのセクターと経済への波及効果はかなり激しいものになる」

 実際、鉱業サービス業界はちょうど、最初の大きな犠牲者を出したところだ。
 シドニーに上場しており、鉱業セクターに部品と専門労働者を提供するオールマイン・グループが6月21日に破産申請したのだ。
 同社株は年初から75%下落していた。

 だが、ホバート氏は、ほかの鉱業サービス企業はまだ過大評価されていると考えている。
 鉱業企業による支出の削減は、鉱業サービス企業に2通りの打撃を与える。
 これらの企業の受注を減らすが、各社が提供する装置やサービスの値下げも強いることになるからだ。

 シティグループの金属・鉱業調査部門を率いるヒース・ジャンセン氏は
 「サービス企業については、業況悪化の2つの側面が見られた。
 仕事の量が減った一方で、価格決定力が低下しつつある。
 市場では今、入札競争が激しくなり始めている」
と言う。

 鉱業サービス業界大手のアトラスコプコは今年第1四半期の受注が2011年同期比で15%減少したと述べた。
 同業大手のサンドビックは、受注が18%減少したと話している。
 また、シティグループが調査を行った鉱業企業の81%は、今年、サプライヤーと価格を再交渉するつもりだと答えている。

 「私の見るところ、この先3~4年はコモディティーの価格設定が下がる時期に入り、その結果、鉱業サービス業界への依存が急激に下がるだろう」。
 HFZのホバート氏はこう述べ、
 「これは鉱業サービス業界が大きな潜在生産能力を抱えている時に起きているため、明らかに非合理な価格設定と利幅の激減のリスクがある」
と指摘する。

 ホバート氏は、米国に上場しているオイル・ステーツ・インターナショナルを引き合いに出す。
 同社の本業は、石油・鉱業プロジェクトの労働者に仮設住宅を提供することだ。
 苦境に喘ぐクイーンズランドの石炭鉱業で大きな事業を手がけているにもかかわらず、同社株は今年28%上昇してきた。

■雇用喪失などの社会的影響は始まったばかり

 だが、コモディティーブーム終焉の影響は、地域・国全体に劇的なインパクトを与える可能性がある。
 4月半ば以降、豪ドルは既に12%下落し、南アフリカの通貨ランドは14.5%下げている。

 しかし、支出削減の社会的影響はまだ始まったばかりかもしれない。
 アングロ・アメリカンの最高経営責任者(CEO)、マーク・カティファニ氏は26日、豪州鉱業協会(MCA)で行ったスピーチで次のように述べた。

 「過去12カ月間だけで、ニューサウスウェールズとクイーンズランドで9000人近くの鉱業労働者の雇用が失われた。
 現在のメディア報道からすると、この数字は今後、急激に大きくなりそうだ」

 マッコーリーのコモディティー調査部門を率いるコリン・ハミルトン氏は
 「パースの不動産でデフォルト(債務不履行)が生じ始めるだろう」
と話している。

By Jack Farchy and Javier Blas
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ロイター 2013年 06月 26日 15:56 JST
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPTYE95P04W20130626

コラム:中国減速の影響はアジア域内でもまだら模様
By John Foley

[北京 25日 ロイター BREAKINGVIEWS]
 アジア市場の下落は、中国の景気減速がこの地域に悪影響をもたらすとの見方を反映している。
 しかし事はそれほど単純ではない。

 経済規模の大きいアジア諸国の輸出に占める中国向けの比率と、輸出の国内総生産(GDP)における重要性に目を向けよう。中国は過去10年間で急拡大を遂げたが、近隣諸国への影響は予想より小さい。

 オーストラリアの例を考えよう。
 国際通貨基金(IMF)のデータから計算すると輸出の3分の1は中国向け。
 大半は鉄鉱石や石炭などの鉱物資源だ。
 しかし中国向け輸出の総額は2012年のGDPの5%にすぎない。
 日本も同様に影響が遮断されており、中国向けは輸出の5分の1以上を占めるが、GDPに対する比率はわずか3%だ。

 これに比べてベトナムは中国の余波が及びやすい。
 世界の製造業サプライチェーンを構成する低コスト生産国としての役割拡大を反映し、輸出の17%が中国向けだ。
 これはGDPの13%に相当する。
 サムスン電子や現代のおひざ元である韓国は、中国向け輸出がGDPの15%に相当し、10年前の水準から倍増している。
 シンガポールの中国向け輸出はGDPの32%相当まで増加した。

 貿易統計だけでは経済的依存度を完全に把握できない。
 例えば、2012年に韓国を訪れた旅行客の約4分の1は中国からだった。
 オーストラリアにおいては、他の顧客に売るコモディティの価格を押し上げるといった別の経路で、中国の需要が成長を促進している。

 しかしアジアの貿易相手国の望み通りに中国が輸入を開放していたなら、中国の景気減速はより憂慮すべき問題となっていただろう。
 中国の経済規模がほぼ4倍に拡大した過去10年間で、近隣諸国のうち経済規模で上位9カ国からの中国への輸出は、輸出総額の17%から23%にしか増えていない。
 フィリピンとインドネシアでは、GDPに占める中国向け輸出の比率を見る限り、中国の奇跡的な成長はほとんど影響を及ぼしていない。

好況時には、中国が市場開放を遅らせていることが不満の種となったが、景気が減速するとむしろ幾分かの安心感をもたらす可能性がある。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。

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減速する成長、そして増強される軍備


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