2013年7月24日水曜日

中国原発、7年後発電量5倍:地震帯直下にも建設、事故なら日本を直撃

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●中国では原発が既に15基稼働しており、建設中の原発は30基。2020年までに原子力発電量を現在の5倍の5800万キロワットへの拡大を計画、さらに30年までに2億キロワットを目指す。写真は広東大亜湾原発。


レコードチャイナ 配信日時:2013年7月24日 0時41分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=74604&type=0

中国の原発、7年後発電量5倍に
=地震帯直下にも建設中―事故発生なら日本直撃へ

 中国では原発が既に15基も稼働。
 建設中の原発は30基もあり、2020年までに原子力発電量を現在の5倍の5800万キロワットへの拡大を計画。
 さらに30年までに2億キロワットを目指すことを検討しているほか、2050年時点で原発の総出力4億キロワットと想定する構想まである。
 出力100万キロワットの原発で計算すると実に400基分。
 単純計算すれば今後40年足らずで原発を25倍に拡大することになる壮大なものだ。

 福島第1原子力発電所事故は、内外に大きな衝撃を与えた。
 日本政府は福島原発事故に伴う脱原発世論の高まりを受けて、基本的に「2030年代ゼロ」を目指すことになった。
 安倍晋三政権はこの目標を見直す方針だが、「原発縮減」の流れは変わらない。

 ところが、中国、インド、ベトナムなど高成長を目指す新興国では、化石燃料の輸入を削減できる原発は、成長のための不可欠な電源と位置付けられている。
 特に中国では経済の急拡大や生活レベルの向上に伴って電力需要が増大、供給不足が深刻化している。
 中国の発電総量のうち7割以上は石炭火力発電が占めており、中国は世界の石炭の半分近くを使用する世界一の石炭消費国である。
 石炭は大量の2酸化炭素を排出し深刻な大気汚染の原因となり、日本でも大騒動となった「PM2.5」の元凶とされている。
 このためこれ以上石炭の消費を増やせない状況に追い込まれている。

 天然ガス、原油を使う火力発電や太陽光、風力など自然エネルギーに力を入れているもの旺盛な電力需要に追い付かない。
 多数の人口を抱え、経済成長を確保するためには、大量のエネルギーをまかなう必要がある。
 エネルギー問題は中国アキレス腱といわれて久しい。

■放射線物質が偏西風に乗り日本列島へ

 そこで中国のエネルギー政策の「救世主」として期待されているのが原発だ。
 怖いのは、稼働中や建設中の原発の大半が地震の発生しやすい地域に立地していること。
 中国の沿海部は、北は遼寧省から南は海南島の昌江原発まで世界有数の原発集積地になりつつある。
 特に山東省は栄成原発、乳山原発、海陽原発と3カ所の原発が沿岸部に集中。
 津波の備えが不十分との指摘もある。

 渤海湾に面する海岸地帯に位置する紅沿河原発(遼寧省)では、108万キロワットの発電能力を持つ加圧水型軽水炉(PWR)1、2号基がほぼ完工済み。
 3、4号基も建設が進んでおり、14年夏までに運転を開始する。
 この原発の立地する渤海湾には中国でも最も地震を引き起こしやすいとされる地震帯があり、地震帯のほぼ真上に建設中だ。
 この地域はたびたび大きな地震に見舞われており、1976年には原発近くの唐山市で直下型大地震「唐山地震」が発生、24万人を超す死者を出している。

 広東省では既存の大亜湾、嶺湊の両原発に加え、建設中の陽江、台山など水流が途切れる「断流」が発生する河川に冷却水を依存する原発も多い。
 黄河は下流域で1990 年代に幾度も断流し、年間200日以上、干上がった年もあったほどだ。
 もし原発に隣接した河川で原子炉稼働中に水流が減り、十分な冷却水を得られなくなれば、福島第1原発事故の再来となる。

 これら原発が事故を起こしたら、一体どうなるか。
 中国から日本列島に向けて常時、偏西風が吹いており、酸性雨から黄砂まで様々な大気汚染物質が中国から日本に運ばれてくる。
 中国の原発で事故が起きれば、日本列島は放射性物質の影響を受けるのは必至とみられている。

■日本が中国原発事故想定の対策検討

 中国の原発で重大事故が発生した場合の日本への影響について、日本の原子力規制委員会が対応策の検討を開始した。
 放射性物質がどのような経路で日本にたどりつくかを示す拡散予測シミュレーションマップの作成も考えられるという。

 中国側の資料によると、
 中国の原発1基当たりのトラブル件数は05年2.6件(日本0.3件)、07年2.1件(同0.4件)で、
 日本の5倍以上の割合で記録されている。
 トラブルがあった場合、日本は原子炉を止めて安全を確認するが、
 中国では稼働しながら故障を修理するという経済優先の対処法もみられるという。

 中国国家核電技術公司首脳によると、国家機関による原子力発電所の検査によって14カ所で問題が発見され、これらの問題を解決するには4年かかるとしている。
 三菱電機など日本のメーカーからデジタル制御システムなどを輸入しているが、今後、技術者不足が中国の原子力発電所発展のネックになるという。
 監督・管理機関である国家核安全局は規模が小さく、現段階でさえ新たな建設プロジェクトに対応するのがやっとの状態。
 中国が原子力エネルギー政策をさらに発展させるためには原子力技術者の大量増員が必要となる。

 中国の原発関係者は
 「福島の原発事故の教訓を取り入れ第3、第4世代の原発を建設しており、安全性には絶対の自信がある」
と強調。
 数年以内に原発技術の輸出することも計画しているが、日本の原発専門家の多くは
 「中国が技術を輸出できるレベルに達するにはまだ相当の時間が必要」
と見ている。

 こうした中、多くの原発がある広東省の江門市政府が7月中旬、大規模な住民の抗議デモを受け、同市鶴山の核燃料工場建設計画の中止に追い込まれた。
 中国では震災・津波対策の実態などの情報開示もほとんど行われていない中、地域住民の原発建設に対する監視が厳しくなる一方。
 核燃料の調達問題もあり、中国の原発開発は多くの課題に直面している。

<「コラム・巨象を探る」その30>
<「コラム・巨象を探る」はジャーナリスト八牧浩行(Record China社長・主筆)によるコラム記事。著書に「中国危機―巨大化するチャイナリスクに備えよ」(あさ出版)など。>




減速する成長、そして増強される軍備


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