●中国経済は長年急成長を続けてきただけに、減速をマネージするのが難しい〔AFPBB News〕
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JB Press 2013.07.04(木) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38151
中国経済ハードランディングのリスク
ジャンボジェットの墜落を回避できるか?
(2013年7月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
中国の新指導部は、経済運営で最も難しい操作の1つに数えられる任務に取り組んでいる。
すなわち、「飛行中の経済を減速させること」だ。
最近では中国当局が「シャドーバンキング(影の銀行)」の制御に乗り出すなど、数々の困難が以前よりも明らかになっているが、これはもっと大きな問題の一部に過ぎない。
大きな構図とは、減速している経済が墜落するかもしれないリスクだ。
実際、市場メカニズムを頼りにしたいという新指導部の意向は、このリスクを一段と大きくする。
ジェローム・レヴィ経済予測センターのデビッド・レヴィ氏は先日発表したリポートの中で、
「中国の失速速度はどれくらいなのか」、
という重要な疑問を提起した。
一般には、中国が向こう10年間で経済成長率を10%から、例えば6%に引き下げるのは容易なことだと考えられている。
(注:失速速度=それ以上遅くなると飛び続けられなくなる速度のこと)
■列車であれば、減速してもレール上を走り続けるが・・・
ただ、そこには1つの想定が暗黙のうちに織り込まれている。
「急拡大している経済は高速で走っている列車のようなものだ。
制御レバーを緩めれば減速する。
そしてしばらくはそのまま、以前ほどの速度ではないがレールの上を走り続ける」
という想定だ。
だが、レヴィ氏は、
中国は列車よりもジャンボジェットに似ている
という。
「ここ数年はいくつかのエンジンの調子が悪く、パイロットは、調子のいい残りのエンジンを酷使したくないと思っている。
そのため飛行機の減速を容認しているが、あまりに減速し過ぎると失速速度をも下回り、飛行機自体が墜落してしまうだろう」
中国では2008年以降、純輸出が経済の牽引力ではなくなった。
その穴を埋めたのは投資で、2009年は特にその色彩が強かった。
そのため国内総生産(GDP)に占める投資支出の割合は、2007年でも42%というかなりの高率だったが、「2010年には48%」という驚嘆すべき水準に跳ね上がった。
この投資のエンジンを稼働させたジェット燃料は爆発的な信用の拡大で、2009年には貸し出し残高が年率で30%近い伸びを記録した。
政策は大成功を収めた。
だが、純輸出の急拡大が過去のものとなった今、中国政府当局は、信用を燃料とする投資への依存度を引き下げたいとも考えている。
従って中国経済には、
「民間部門と公的部門の消費というエンジン」
が残るだけとなっている。
実際、成長に対する需要の寄与度の四半期データからは、
求められている経済成長の減速が、これまでのところは見事なほどスムーズに進んできた様子がうかがえる。
しかし、年率6%成長への移行の前には、まだ大きな壁が立ちはだかっている。
■年6%成長への移行が難しい理由
①.第1に、在庫投資は急減するに違いない。
在庫投資の水準は経済活動の水準ではなく、経済の成長率に左右されるからだ。
考えてみてほしい。
景気が低迷している時には、通常、在庫の積み上げはゼロになる。
また、ほかの条件がすべて同じであれば、成長率が6%の経済で必要とされる在庫投資は成長率が10%の経済のそれの60%にとどまる。
この調整は即座に在庫投資を急減させるだろう。
在庫投資の伸び率は年6%になる前に、いったん大きく低下することになる。
また、高度成長を何年も続けてきた後だけに、企業は経済の減速を予想できないかもしれない。 その場合、企業は在庫の急増を目の当たりにし、その圧縮を余儀なくされる。
そうなれば、GDPの水準は一段と落ち込むことになる。
②.第2に、固定資本への投資も急減するに違いない。
投資は40%減少することになるかもしれない。
ほかの条件がすべて同じであれば、中国で固定資本への投資が40%減ればGDPは20%減少するだろう。
深刻な(そして予想外の)景気後退が引き起こされることは明らかだ。
投資の決断を下す責任者たちは経済成長率がいずれ10%に戻ると見込み、迅速な調整をしないかもしれない。
その場合、経済はしばらくの間下支えされることになるだろうが、過大な生産能力がさらに過大になるという対価を払うことになる。
在庫投資の場合と同様に、固定資本への投資はそこからさらに大きく減少するだろう。
③.第3に、投資減少が引き起こす需要と活動の減退は、企業収益も大きく下振れさせる可能性が高い。
利益の減少は企業の支払い能力を損ない、投資を一段と減少させる。
④.最後に、経済成長率の低下、特に極めて大きな信用ブームが先行した成長減速は、
バランスシートの状況に思いのほか厳しい影響をもたらす可能性がある。
■経済の構造そのものが大きく変わる
中国の民間部門は既に、比較的大きな債務を抱えている。
経済が年間10%のペースで成長し続けるのであれば、そうした債務は管理可能だ。
それほどダイナミックな経済では、新規プロジェクトのタイミングは問題にならない。
だが、成長ペースが鈍い経済では、不良債権の急増はとてつもない規模になる可能性がある。
世界銀行の最新の「世界経済見通し」は
「リバランスに向けた現在の取り組みは、持続不能なほど高い投資比率の漸進的低下を成し遂げることと並び、今後も優先事項であり続ける」
と論じた。
だが、
「投資が不採算であることが分かれば、既存のローンの元利払いに問題が生じる恐れがあり、不良債権の急増を引き起こす可能性もある」
としている。
たとえ政府が金融セクターを救済したとしても、貸し出しの責任者は間違いなく以前より慎重になるだろう。
当局が最近対応に動いた簿外金融の拡大が、この問題への対処を一層難しくするのは必至と見られる。
上記の事実をもって、中国が中長期的に先進国に追いつくキャッチアップ型成長を続けられないと言っているわけではない。
重要なポイントはむしろ、年間6%のペースで成長する経済の構造は必然的に、10%成長する経済のそれとはかなり違ったものになるということだ。
こうした調整が成長率の変化に釣り合ったものになると思ってはならない。
反対に、新たに出現する経済は、GDPに占める消費の割合が例えば65%で、投資の割合がたった35%かもしれないのだ。
つまり、GDPの伸び率と比べ、消費はかなり早いペースで拡大しなければならず、投資ははるかにゆっくりと拡大する必要がある。
このことは、異なる所得配分を意味する。
GDPに対する家計可処分所得の割合が今よりずっと高まり、企業の利益の割合が低下するということだ。
また、経済生産の構造の変化も必要で、サービス産業が比較的急速に成長し、製造業が比較的ゆっくり成長する形にならなければならない。
■着陸しようとしているジャンボジェットを再設計
中国の新政府は今、事実上、
半分のエンジンがうまく機能しない状態で着陸しようとしている時にジャンボジェットを設計し直す任務
に取り組んでいる。
市場がそれほど大きな変化を円滑にもたらすことは、まずあり得ない。
筆者の見る限り、中国が望み通りの着陸を果たせると考える唯一の理由は、当局が過去に困難な任務をたくさん扱ってきたことだ。
だが、今回の任務は非常に難しいものになる。
政府は需要を支えるために、新指導部が望んでもいなければ今は予想もしていないこと(例えば、非常に多額の財政赤字を計上するなど)をやらざるを得なくなるかもしれない。
だが少なくとも、事前に警告があれば、事前に準備できる。
By Martin Wolf
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サーチナニュース 2013/07/05(金) 10:11
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0705&f=business_0705_023.shtml
わが経済急落の懸念なし
…13年下半期の上向きに転じる=中国
中国経済は現在、鈍化圧力が拡大しているが、安定化傾向にあると専門家は話す。
穏やかな成長政策が力を発揮するにつれ、2013年下半期の経済成長は上向きに転じる可能性があるという。
中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。
国家統計局サービス業調査センターの趙慶河シニア・アクチュアリーによると、小規模企業の製造業購買担当者景気指数(PMI)が15カ月連続で景気判断の節目となる50を下回った。
これは中国の経済状況が複雑に入り組んでいることを暗示している。
ただ専門家は、中国経済が急降下することはまずないと指摘する。
交通銀行の連平チーフエコノミストは
「経済成長の三大エンジンである投資・消費・輸出にしても、雇用や物価にしても妥当な区間にある。
中国経済の急落をそう懸念する必要はない」
と述べた。
また、国務院発展研究センターマクロ経済研究部の張立群研究員は
「中国の経済成長は年内は7.5%くらいの穏やかな成長を維持するだろう」
と語った。
張研究員は
「穏やかな成長に向けた政策は12年から実施され、財政金融政策で力を発揮した。
現在、投資と消費が安定している点は政策の効果といえる。
今年に入って政府はこれらの政策に対してさらに的確な調整を行った」
と説明する。
13年下半期の経済動向について、市場の見方がさまざまだ。
あまり見通しは良くないとの見方もある。
安邦コンサルの賀軍シニア研究員は
「下半期に中国経済は回復するという予想は外れるだろう。
唯一可能性のある変数は、中国の経済成長が中央政府の許容ラインを下回ったときだ。
経済成長が7.5%以下になれば政策上の調整がなされ、7%の警戒ラインを下回らない限り、それほど大きなマクロ政策の変動はないだろう」
と指摘した。
ただ、エコノミストのほとんどは経済が下半期に回復すると確信している。
JPモルガンのチーフエコノミスト、朱海斌氏の報告によれば、世界の経済情勢の改善と国内のインフラ投資などが中国経済の穏やかな回復を支えるという。
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[減速する成長、そして増強される軍備]
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