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ロイター 2013年 07月 17日 16:03 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE96G06T20130717
焦点:中国の景気減速で痛手受ける外国企業
[ロンドン 14日 ロイター] -
中国の巨大な財・サービス市場はかつてグローバル企業にとって現代版の黄金郷
とみなされていたが、
中国は今や成長が鈍化し、こうした企業にとって経営上の重荷
になりつつある。
過去20年間の中国経済の興隆で国際的なビジネスは変貌した。
しかし、その中国は最近の経済指標が示す通り、
●.輸出の不振と
●.銀行セクターの暴走
で景気減速に見舞われている。
このため世界のファンドマネジャーは世界第2の経済大国である
中国に事業を集中する企業に関して投資評価の再考を迫られている。
INGインベスト・マネジメントの投資ストラテジスト、マールテン・ヤン・バッカム氏は
「中国の影響を受けやすい企業はいずれも株価のパフォーマンスが悪い。
成長率に回復の兆しが見られない以上、この傾向は変わらない」
と語る。
INGインベストメントはこのほど、中国の事業比率が大きい企業の株式に対する投資比率を引き下げた。
市場は既にコモディティ需要の減速に備えている。
しかし高級品販売の落ち込みにつながった汚職摘発の動きをはじめ、シャドーバンキング(影の銀行)の取り締まりに至るまで、
中国政府の最近の動きは何もかもが国内需要を冷え込ませるもの
だとバッカム氏はみている。
実際に投資家が恐れているのは、成長率が7%を割り込むことよりも、銀行の本格的な信用引き締めがここ数年の銀行融資と消費の拡大を腰折れさせる事態だ。
バッカム氏は
「中国に対する懸念の一部が現実化するだけでも、
消費が打撃を受ける」
と付け加えた。
中国の売上高比率が高い50社で構成するモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル(MSCI)の中国エクスポージャー指数はことしに入って約10%下落した。
下落分の3分の2は中国の成長見通しに暗さが増した直近の四半期に集中している。
対照的に先進国の売上高比率が高い企業で構成する指数は12%上昇し、欧米や日本の景気見通しの改善傾向が際立っている。
フィデリティ・グローバル・リアル・アセット・セキュリティーズ・ファンドのポートフォリオマネージャー、アミット・ロダー氏は、中国事業の不振を欧州の販売回復で効果的に穴埋めできる独フォルクスワーゲン(VW)を選好している。
同社の高級車部門ベントレーは今月、中国の販売が23%減少する一方、米国と欧州は12─22%増加したと発表した。
ロダー氏は
「長期的なテーマは引き続き中国のような新興国市場の消費の伸びだ。
短期的には米国の復活と欧州の景気底打ちの兆しもあって、欧米の事業比率の高い企業に焦点を当てるのが好ましい」
と語った。
<半導体とセメント>
過去20年間に中国が年10%の成長を達成したことで、外国企業は利益拡大と株価の急騰という恩恵に浴した。
中国の数兆ドル規模に及ぶインフラ整備計画に伴いブラジルやロシアから資源が流入し、ドイツや米国から半導体や建設機械が集まった。
一方、自動車メーカーやアパレル、化粧品企業は13億人の中国国民が豊かになることで利益を得た。
中国の1人当たりの所得は2000年から4倍に増えている。
銀行の推計によると、米欧企業の利益のうち中国が直接占める割合は5─6%だが、資源や食品の価格面での影響を含めた間接的な割合はもっと高くなる。
中国の景気減速はすでにコモディティ取引に影響を及ぼしている。
シティ・プライベート・バンクでマネージドインベストメントのグローバルヘッドを務めるデビッド・バイリン氏は
「コモディティや原材料の事業比率が高い企業の投資には関心がない。
結局のところ、中国の需要は明らかに減退している」
と述べた。
消費が中国経済に占める比率は35%強にすぎず、隣国インドのほぼ半分の水準だ。
中国では3億人超が中間層とみられ、スマートフォンやブランド服の需要は当面不安がない。
しかし中国の経済発展と雇用は貿易と密接に関連している。輸出の不振にインフレのほかシャドーバンキングの取り締まりによる借り入れコストの増加が重なり、すでに可処分所得にも影響が及んでいる可能性がある。
例えば、スイス製時計の輸出はことし第1・四半期に25%減少した。
輸入関税が免除されるため多くの中国人が購入に訪れる香港では19%落ち込んだ。
モルガン・スタンレーによると、欧州の高級ブランドや半導体、エネルギー関連企業及び自動車などのメーカーはいずれも売上高の10%以上を中国で稼いでいる。
同社は先週、顧客向けノートで、中国と新興国の事業比率の高い銘柄に警戒するようアドバイスした。
ドイツ銀行によると、米国企業は利益の約5%を中国が占めるが、ピザ・ハットやケンタッキーフライドチキンなどを中国で展開する外食店チェーンのヤム・ブランズのように50%に達する企業もある。
このため中国の景気鈍化は企業収益のほか、中国の顧客に依存する新興国市場にも悪影響を及ぼす。
しかし中国の景気減速の意味合いはユーロ圏の景気回復にまで波及すると、JPモルガン・アセット・マネジメントのグローバルストラテジスト、ダン・モリス氏は指摘する。
同氏は
「ドイツ経済は欧州危機の最中にも堅調だったが、数字の上ではその多くが輸出の寄与によるもので、中でも中国向けが最大だった。
今や中国政府による景気対策は期待できず、ドイツの成長率は他国並みになるだろう」
との見方を示した。
(Sujata Rao記者)
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ロイター 2013年 07月 16日 13:35 JST
http://jp.reuters.com/article/mostViewedNews/idJPTYE96F03G20130716
コラム:中国GDP減速の「真相」
[北京 12日 ロイターBreakingviews] - By John Foley
中国にとって2013年は、国内総生産(GDP)の伸び率鈍化が明らかな1年になりつつある。8%だった経済成長目標は今年に入って7.5%に引き下げられた。
中国経済に何が起きているのか。ここで、減速の「真相」を見てみよう。
<減速は本物だが相対的>
習近平国家主席は当局にGDPより生活の質に留意するよう求めているが、投資家が注視するのはやはりGDPの伸び率だ。
公式目標7.5%は、1990年以降で最低の伸び率となる。
目標の引き下げを政府が公式に認めたことは、これまでの常識が打ち破られたことを示している。
つまり、
8%以下の成長率では、失業者と社会不安が増加するリスクが高まる
という常識だ。
中国専門家にしてみれば、成長率6%というのは突拍子もなく聞こえるはずだ。
中国が2桁台の成長を続けていたのはつい最近のことだからだ。
しかし、他の中所得国の水準と比べれば、中国は依然として優等生と言える。
国際通貨基金(IMF)は、2013年の中南米と中東の成長率予想を3%としている。
<3つの要因>
①.中国経済減速の要因の1つに、輸出需要の低迷が挙げられる。
6月の輸出は前年同月比3.1%減と特に低調だったが、過去12カ月の平均伸び率も2010年初め以降で最低となった。
需要低迷に加え、人民元高も手痛い。
しかし、中国が裕福になるに従い、人民元が高くなるのは自然なことであり、安価な労働力を背景とした輸出が減退していくのも当然だと言える。
②.第2に、中国の経済成長に「重力」がかかってきたことだ。
同国の労働人口はもはや増加しておらず、都市化のペースも減速している。
そして、さらに懸念すべき問題として投資効率の低下が挙げられる。
③.最後に、中国当局がこうした重力と逆らおうとしていないことだ。
政府は2009年に大規模刺激策を実施しており、何をなすべきかは分かっている。
財政赤字が対GDP比わずか2%であり、大手銀行を完全にコントロールしている同国には手立ては十分にある。
また統計もコントロールしているため、どんな数字を出すことも基本的には可能だ。
当局が低いGDP伸び率に満足していることは明らかだ。
<信用引き締めが原因ではない>
中国の経済成長は借入を燃料に加速してきた。
しかし、信用引き締めが減速をもたらしたとの兆候はまだ明確には見られない。
「シャドーバンキング(影の銀行)」を取り締まろうとする当局の取り組みが影響している可能性はあり、実体経済の流動性を示す指標であるトータル・ソーシャル・ファイナンシング(社会融資総量)は最近減少した。
しかし、ソーシャル・ファイナンシングは6カ月平均で見ればまだ増加している。
それでも問題がないわけではない。
利益性が低下し、レバレッジが拡大する中、企業はより多くの利益を債務返済に回する一方、投資を減らさなくてはならない。
こうした状況について、中国政府がそれほど頭を悩ませているようには見えない。
前回の刺激策で当局者らは、強制的な巨額融資は無駄や無謀さにつながると学んだようだ。
<良い減速になる可能性も>
重要な問題は経済成長のペースではなく、社会への影響だ。
中国の最近の経済成長はあまりにも速過ぎたというもっともな意見もある。
生産性向上を追求するあまり、深刻な環境汚染を引き起こし、汚職を育む気風も培われた可能性も否定できない。
より緩やかな経済成長の下では、長い目で見れば中国をより幸福で健康な場所にしていく投資が可能になるかもしれない。
それには、低公害型の生産技術や本物のイノベーションなどが含まれる。
しかし、世界最高層ビルや世界一長い海底トンネル、大胆な宇宙計画など最近発表されたプロジェクトを見る限り、昔からの習慣はそうたやすくは消えてなくならないようだ。
<ハードランディングにあらず>
中国がハードランディングするという投資家たちのうわさ話は役に立たない。
雇用が十分に確保され、社会不安が小さいのなら、GDPは年率2%の伸びでも許容範囲だろう。
逆に、労使関連のデモや倒産が急増するなら、年率7%の伸びでも事態は厳しくなる。
現在、中国の政策立案者たちは機が熟すのを待っているのだろう。
彼らには強制的な融資や人民元の切り下げ、巨額なインフラ投資などの道具があるが、これらは強力であると同時に危険性もはらんでおり、その結末は定かではない。
差し当たり、「様子見」というのが妥当な対処法のように見える。
*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。
本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。
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中国経済の動向で世界が一喜一憂している。
ということは、もはやあのバラ色の栄光の中国は戻ってこないということにもなる。
もはや中国の低落は既定事実といった雰囲気にまでなっている。
中国政府がやっきになったところで、わずかな上下しかないと誰もが思い始めているということであろう。
もののわずか1年前までは光り輝いていたのに。
尖閣問題でけつまづき、大気汚染で致命的なダメージを世界に披露してしまった。
ことがことだけに、隠し通せるものではなかった。
これをきっかけに、タブーであった中国の実情が陽の下にさらけ出された。
そしていまや、死に体に近いまで痛めつけようと、メデイアが殺到しているといった感じがある。
中国はいま、これまで溜め込んだ外貨と、お札を刷る機械とによって、切り抜けようとしている。
今年はなんとかいくだろう。
そういう見通しも立ってきている。
では来年はどうなる、再来年は。
そういう疑問は消えない。
誰もが何時かは破綻するとみている。
そのとき、中国はどうなるのか。
それを睨んで各国は各組織・機関・企業は動いている。
中国当局はさしあたり「様子見」だという。
世界で初の「独裁型資本主義」である。
中国は「独裁」にウエイトをおいて、どうにでも切り抜けて見せると思っているだろう。
西側は「資本主義」に注目して市場経済論理を当てはめ、それで中国事情をみていこうとする。
どちらが正しいかは時代と歴史が決めることだろう。
あと数年は答えが保留されることになる。
[減速する成長、そして増強される軍備]
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