『
JB Press 2013.07.02(火) The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38124
中国の資金逼迫:リーマンショックとは違うが・・・
(英エコノミスト誌 2013年6月29日号)
最近の資金逼迫は、中国版のリーマン・ショックではないが、中国経済の動きの変化を予感させる。
本誌(英エコノミスト)も例外ではないが、多くのメディアや評論家は好んで、中国経済を世界最大の米国経済と比較する。
このままいけば中国経済は、洗練度では米国と肩を並べられないとしても、規模の点では米国経済に匹敵するようになる。
しかし最近、両国経済の対比は不穏な色彩を帯び始めた。
中国がにわかに、ちょうど5年前の米国に重なって見えてきたのだ。
中国の金融機関は、数年前から過剰な融資を行ってきた――その多くは「影の銀行」によるもの――が、6月に入ると相互の融資に急ブレーキがかかった。
銀行間金利は同20日、一時25%にまで急騰した。
この信用逼迫は、2008年の米国の金融危機を恐ろしいほどに連想させた。
米国はまだ、あの危機から完全には回復していない。
ここから2つの疑問が生じる。
①.中国経済は、2008年の米国経済と同じレベルの苦境に立たされているのか?
②.そして、中国当局は正しい対策を取ってきたのか?
どちらの疑問に対する答えも、「そうとは言い切れない」だ。
今、改革を推し進めようとしている中国に、多くのことがかかっている。
■既にバッドバンクを所有していることの長所と短所
確かに、中国経済については、いくつかの行き過ぎが懸念される。
信用の伸びは国内総生産(GDP)の伸びをはるかに上回り、不動産価格が、特に沿岸都市部で急騰し続けてきた。
それは問題の前兆であることが多い。
不動産ブームを伴う融資の急増が、2008年の米国の危機など、多くの危機の土台を作った。
これらの危機では、性急な投資が不良化すると、銀行が倒産し、融資が滞り、信頼が失われた。
政府が介入し、一部の銀行については資本を注入し、それ以外の銀行には融資を再開するよう促さなければならなかった。
しかし、現在の中国の状況は、いくつかの重要な点でこれらの危機とは異なっている。
貯蓄率は極めて高い。
2008年の米国とは違い、国全体としては分相応の暮らしをしている。
中国の銀行はかなり厳格なルールに従わなくてはならない。
融資額は預金の75%を超えてはならないし、バーゼルIIIと呼ばれる、多くの国がまだ準拠していない国際的な銀行自己資本規制を既に施行している。
さらに、国内最大規模の複数の銀行を、国家がはじめから所有している。
これには短所もある(あまりに多くの融資が、政府がひいきする企業に流れている)。
しかし、それらの融資が焦げ付いても、国が銀行を国有化する必要がないという利点もある。
政府は、損失をいつどのように誰に負担させるかを決めるまでの間、銀行に融資を継続するよう命令できるからだ。
中国政府は、経済にとって事実上の破産裁判所判事の役割を果たし、債権者を抑え、整然と損失を分散することができる。
何よりも、そうすることで、継続的活動体としての中国経済の価値を維持できるのだ。
中国で資金逼迫が生じた理由も、米国とは異なる。
2008年に米国で銀行間取引市場が停止したのは、銀行同士が互いへの貸し出しを拒んだからだった。
今年6月の中国では、中央銀行自身が資金供給を拒んだ。
四半期末が近づいて一部の銀行が現金を必要としていたにもかかわらず、中央銀行はあえて何もせず、金利の急騰を許し、無謀な信用の伸びを抑制する決意を示した。
銀行間金利の急騰を許すというのは、過度に融資を拡大した貸し手を罰する方法としては、乱暴かもしれないが、非常に効果的なやり方だ。
さらには、浪費を続ける地方政府に有効なメッセージを送ることもできたかもしれない。
■中国が優先すべきこと
しかし、それ以外のすべての人々に痛みを与えることにもなりかねない。
中央銀行の自制の結果、銀行が破綻して、ATMの現金がなくなるのではないかという噂が渦巻いた。
6月24日、中国の株式市場は何年かぶりの下げ幅を記録した。
上海総合指数は5.3%下落した。
中央銀行が何もしなかったことで、金融そのものを可能にしている信頼感が危うくなった。
幸いにも、当局はやがて危険に気づき、翌日には市場を落ち着かせる措置を講じた。
現在優先すべきは、金融システムを整理して、経済のリバランスを図ることだ。
銀行に預金金利の引き上げを許可すれば、今は影の銀行システムに流れ込んでしまっている資金を招き寄せるのに役立つだろう。
預金保険の導入も、保護された銀行預金を、影の銀行による保護されない代替預金と差別化するのに役立つだろう。
政府は、一部の過熱した産業を沈静化し、一部の産業を自由化する必要もある。
重慶と上海で試験的に導入している不動産税制を拡大して、毎年、住宅の市場価格に応じて固定資産税を課すことで、不動産に対する投機的需要を抑制すべきだ。
そして、鉄道や通信など、今は国有企業が支配している様々な産業への民間投資を奨励するために、さらなる対策を講じるべきである。
そうすれば、中国の銀行は自由に、これまでとは違う企業に資金を貸し出せるようになるだろう。
■バブルの拡大を許したら危険も
そうした改革が機能するには時間がかかるし、短期的には経済を減速させる。
調査会社ドラゴノミクスによると、
中国の来年の成長率は、わずか「6%」にとどまるかもしれない。
これは、中国では当たり前になっていた2ケタの成長率からすると大きな落ち込みで、
政府が2013年の目標としている7.5%をかなり下回る。
そうなると、にわかに北京で不安の嵐が吹き荒れるかもしれない。
しかし、この改革を進めなければ、今後もさらに無駄な融資と非生産的な支出を続けることになる。
中国経済の回復力は強い。
過去には成長を続けることで様々な問題を解決してきた。
だが、バブルの拡大を放置すれば、かつての米国との類似性はさらに高まるかもしれない。
© 2013 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.
英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
』
『
WEDGE Infinity 2013年07月02日(Tue) 石 平
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2940?page=1
上海株急落で露呈した中国経済の深刻な「歪み」
「投資依存型」の成長戦略が生みだした副作用
先月24日、中国の上海株急落のニュースが世界中のマーケットを駆け巡り、関係者たちに大きな衝撃を与えた。
その日は月曜日で、上海株式市場全体の値動きを示す上海総合株価指数が前週末の終値に比べ5.30%安い1963.23で引けた。
心理的な節目の2000を割り込んだのは昨年12月4日以来約7カ月ぶりである。
■銀行の深刻な資金不足
本来、株価の浮き沈みの激しい中国では上海株が5ポイント程度落ちることはそれほど驚くようなことでもないが、問題はむしろ、今回の株価急落によって露呈した中国経済の抱える深刻な歪みにある。
急落の直接な原因は、およそ次のようなものである。
中国の各銀行が近年来の慢性的な資金不足に陥っている中で、「理財産品」と呼ばれる高利回りの財テク商品の償還が先月末に迫っていた。
償還に困った各銀行が競って他行から資金調達を急いだ結果、銀行間融資の短期金利が急騰したのである。
一方、債券の償還に迫られて資金繰りが苦しくなった各銀行に対して、中国人民銀行(中央銀行)は過去のように資金供給などの救済措置を取らず、むしろそれを傍観した。
証券市場はこの動きを見て、銀行の破綻を招く金融危機が発生するのではないかとの懸念から、銀行株を中心に売り一色となったため、上海指数は大幅に下落した、というわけである。
つまり、この一件から露呈したのは深刻な資金不足を抱えている中国の金融システムの脆さである。
★. 問題は、貯蓄率の非常に高い中国で13億の国民から膨大な貯金を預かっているはずの中国の各銀行が一斉に「金欠」となったのは一体なぜなのか、
である
■公共事業投資と不動産投資で成長してきた中国
その理由は突き詰めてみれば実に簡単だ。
要するに中国の各銀行は今まで、預金者から預かっているお金を無責任な放漫融資や悪質な流用などで放出し過ぎたからである。
過去数十年間にわたる中国の高度成長はある意味で、中央政府と各地方政府の主導下の継続的な投資拡大によって支えられてきたものだ。
2011年までの30年間、中国経済全体の成長率は「毎年平均10%程度」であったのに対し、同じ11年までの30年間、中国国内の固定資産投資の伸び率は「毎年30%前後」であった。
つまり、経済全体の成長の3倍程度の伸び率で「ハコモノ作り」としての固定資産投資が拡大してきたのだ。
とにかくこの数十年間、
中国全土で公共事業投資と不動産投資を中心とする「世紀の大普請」
が盛んに行われていて、道路や鉄道や不動産などがむやみに造られてきた結果、経済はそれなりに急成長が出来た。
■企業の設備投資過剰も深刻
しかし、このような「投資依存型」の成長戦略は当然、多くの深刻な副作用を生み出している。
たとえば不動産投資をやり過ぎた結果、江蘇省常州市や貴州省貴陽市などの中小都市を筆頭に、町一つ丸ごと造っておきながら誰も住まないという「鬼城現象」(ゴーストタウン)が全国に広がっている。
不動産開発大手の万科公司の王石会長も
「このままでは不動産バブルが崩壊して社会的大動乱が発生するだろう」
との悲鳴に近い警告を発したのはつい最近のことだ。
公共事業投資の拡大も当然、深刻な投資過剰を生み出している。
たとえば江蘇省には、省内に今まで9つも空港が濫造されているが、その中の7つは長年赤字経営を続けているという。
ちなみに、中国全国で造られた180の空港のうち、今や約7割が赤字経営であることが判明している。
企業の設備投資の過剰も深刻だ。
たとえば国家の基幹産業である鉄鋼産業の場合、今までの設備投資拡大によって年間10億トンの鉄鋼を造れる生産能力を持つようになっているが、実はそのうちの3億トンの生産能力はまったく使い道のない過剰能力であり、設備投資の無駄は実に壮大なものだ。
そしてよく考えてみれば、上述のような大規模な不動産投資も企業の設備投資も全部、銀行からの融資を頼りに行われてきたものである。
各地方政府の行った公共事業投資にしても、その資金源の大半はいわば「影の銀行」から捻出するものであるが、「影の銀行」の持っている資金はその出どころをたどれば、やはり正規の各商業銀行からの流出である。
しかし、企業や地方政府の行う投資拡大は結局上述のような莫大な不動産在庫や企業の生産過剰を生み出したから、このような無責任な投資拡大への銀行からの放漫融資の多くは当然、
回収不可能な不良債権と化していった。
貸し出した資金が回収できなくなると、各銀行は当然、大変な資金不足に陥ってしまうのである。
このようなことは今までにもよくあったが、前任の温家宝首相時代、一般の銀行が「金欠」となると、中央銀行はすぐさま彼らに救済の手を差し伸べて無制限の資金供給を行った。
しかしその結果、中央銀行から放出された貨幣の量が洪水のように溢れてきて深刻な流動性過剰を生み出した。
■インフレで死にたくない
今年4月10日、中国の各メディアが中国人民銀行(中央銀行)の公表した一つの経済数値を大きく報道した。
今年3月末の時点で、
中国国内で中央銀行から発行されて流通している人民元の総量(M2)は初めて100兆元の大台に乗って「103兆元」
に上ったという。
ドルに換算してみると、それは米国国内で流通している貨幣総量の1.5倍にもなるから、経済規模が米国よりずっと小さい中国国内では今、「札の氾濫」ともいうべき深刻な流動性過剰が生じてきていることがよく分かる。
2002年初頭、中国国内で流通している人民元の量は16兆元程度だったが、11年後の今年3月に、それが103兆元の巨額に膨らんだのは上述の通りだ。
11年間で流動性が5倍近く増えたことは、世界経済史上最大の金融バブルと言えよう。
こうした中で、2009年末から中国で大変なインフレが生じてきていることが、今年1月16日掲載の私のコラム
(「2013年の中国経済 インフレで死ぬか、経済減速で死ぬか 新政権が迫られる究極の二者択一」)
で指摘した通りであるが、中国経済は今でも、2011年夏に経験したような深刻なインフレ再燃の危険性にさらされている。
そして、食品を中心とした物価の高騰=インフレが一旦再燃すると、貧困層のよりいっそうの生活苦で社会的不安が拡大して政権の崩壊につながる危険性さえある。
温家宝氏の後を継いだ今の政府はようやくこのような危険性に気がついたようだ。
だからこそ中央銀行からの資金供給を抑制する方針を固めた。
先月1カ月間、共産党機関紙の人民日報が金融政策に関する論文を6つも掲載して中央銀行は資金供給の「放水」を今後はいっさい行うべきではないと論じたのも、中国人民銀行総裁の周小川氏が先月27日、中央銀行としては今後も引き続き「穏健な貨幣政策を貫く」と強調したのもまさに金融引き締め政策の意思表示であろう。
中国政府はやはり、「インフレで死ぬ」ようことはしたくないのである。
しかしそれでは、彼らに残される道は一つしかない。
要するに「経済の減速で死ぬ」ことである。
というのも、中央銀行は今後資金の供給を抑制する政策を貫いていくと、各商業銀行の「金欠」はこれからも長期的に続くこととなり、一連の恐ろしい連鎖反応がそこから始まるからである。
「金欠」となる各商業銀行は保身のために今後、企業に対する融資をできるだけ減らしていく方針であろう。
とくに、担保能力の低い民間の中小企業への貸し渋りは必至だ。
そうなると、中国の製造業の大半を支える中小企業の経営難はますます深刻化してしまい、すでに始まった実体経済の衰退は歯止めが効かなくなる。
■経済の果てしない転落はもはや止められない
今まで、各銀行から出た資金の一部はいわば「影の銀行」を通して各地方政府に流れて彼らの開発プロジェクトを支えてきたが、今後、こうした「闇の資金」の水源が正規の銀行の資金引き締めによって止められると、後にやってくるのはすなわち、
1].「影の銀行」の破綻による金融危機の拡大と、
2].多くの地方政府の財政破綻
であろう。
「金欠」となった各商業銀行は今後、深刻なバブルと化した不動産部門への融資も大幅に減らすのであろう。
回収期間の長い個人住宅ローンも当然融資抑制の対象となる。
そうなると、資金繰りが苦しくなっていく不動産開発業者はいずれ、手持ちの不動産在庫を大幅に値下げして売り出して投資資金の回収に励むしかない。
一方、住宅ローンが制限される中で不動産の買い手がむしろ減っていくから、その相乗効果の中で不動産価格の暴落は避けられない。
今までは金融バブルの中で何とか延命できた不動産バブルは今度こそ、崩壊の憂き目に遭うのであろう。
中国著名の経済学者の馬光遠氏は先月26日、
「(経済危機の)次の爆発地点は不動産部門だ」
との警告を発したのもまさにその故である。
経済専門紙の「証券日報」も25日、銀行の「金欠」のなかで不動産開発業者の資金繰りがますます苦しくなるから不動産価格の下落が不可避との見方を示す論文を掲載している。
どうやら不動産バブルの崩壊はもはや避けて通れないであろうが、
崩壊が一旦目の前の現実となればそれは当然、
さらなる金融危機の拡大とさらなる実体経済の衰退を招くこととなるから、
経済の果てしない転落はもはや止められない。
「2013年の中国経済の死」という、今年年初の私のコラムのささやかな予言は不幸にも(?)当たることになりそうである。
』
『
サーチナニュース 2013/07/02(火) 09:38
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0702&f=business_0702_017.shtml
中国経済が世界を深淵に引きずりこむ? 崩壊は絶対ない=中国報道
中国人民銀行(中央銀行)による貸付引き締めの噂(うわさ)で激しく揺れた中国の金融市場は、中国経済に疑問を抱く学者やメディアを神経過敏にし、当時のリーマンブラザーズを発端とする世界的金融危機と中国を結びつけ、
「中国経済が世界を深淵に引きずりこむ」
といった大げさな見出しまでみられた。
中国網日本語版(チャイナネット)はこのほど、
「わが国はリーマンショックのような崩壊はしない」
と報じた。以下は同記事より。
**********
米投資大手のPモルガン・チェースのシャルマン氏は「ウォール・ストリート・ジャーナル」誌で、
「個人向けローンが3~5年連続で経済成長率を上回ると通常金融困難が予想される。
中国の個人向けローンは08年以降ずっと経済成長を上回り、対GDP比で200%以上に高まっている。
当時の日米の危機前の状況に非常に似ている」
と指摘した。
また、世界3大格付け機関の一つ、フィッチ・レーティングスも
「中国の貸付規模は極限に達しており、これまでのように過剰投資の苦境から抜け出すのは難しい。
中国は今後困難な時期を迎える」
と指摘した。
中国人民銀行が6月25日に流動性維持の態度を表明後、同26日に英フィナンシャル・タイムズ紙が、
「中国の中央銀行は差し迫った危機は起きないと表明した」
と伝えたが、中国の株式市場ではっきりした変化がみられた。
25日、中国の株式市場は一度6%下落したものの、その後、中央銀行による流動性供給のニュースが伝えられると急反発した。
翌26日の上海総合指数の上海総合指数日足チャート は0.4%安となったが、中国の経済構造調整の方向を反映する創業板(ベンチャーボード)は5.5%上昇した。
中国国務院発展研究センターの丁一凡研究員は26日、
「流動性逼迫は国内の要因以外に国際的な環境にも大きく関係している」
と語る。
丁氏によると、連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和政策を実施後、大量のホットマネーが中国に流れ込んだ。
銀行や金融機関の多くも資金ならいくらでもあると考え、「シャドーバンキング(影の銀行業務)」に資金を回して不動産投機するなど大量の貸し出しを始めた。
一部の銀行は金融商品を空回りさせ、収益のある実体経済への投資をしなかった。
こうした状況が政府監督当局の目にとまり、中国銀行業監督管理委員会が6月に各銀行の資本充足率、投資状況を調べることとなった。
そのため、中国の各大手金融機関は大慌てで市場から資金を集めた。
丁氏によると、途絶えることなくマネーが供給されると思っていたところへ、FRBが突然量的緩和政策の早期打ち切りを宣言、外国の金融機関も事前に資本を米国に戻し始めた。
市場のマネーが突然減ったうえ、うわさで市場はさらに混乱、銀行は貸し渋りを始めた。
実際、「流動性には欠けていないが、ただマネーがどこに行くかが問題。だから25日まで干渉しなかった」と中央銀行は説明する。
丁氏によると、これは一時的な現象で、一部の海外メディアのいう「中国が金融崩壊に直面する」というのは大げさで、中国の銀行が倒産する兆しはまったくないという。
「米国が量的緩和政策を打ち切り、アジアに再び危機が起きたとしても、中国はまだかなりの外貨準備高があるため持ち堪えられる」
と述べた。
』
まだ中国は大丈夫でしょう。
「2013年の中国経済の死」はないと思うのだが。
おそらく危機はみんなが言っているように「2015年」あたりだろうか。
現在、危機が叫ばれているということは中国経済が下降線に入っているということを示しているが、しかしそれがすぐに破綻につながるものとはとはいえない。
独裁国家なので、やりくりはいくらでもきく。
問題はそのやりくり手段がなくなり、お手上げ状態になったときであろう。
それが2015年あたりではないかというのが、予想である。
つまり、いましばらくはやりくりで何とかなるということである。
しかし、「いつか破綻の日は来る」というのが常識的な見方である。
『
JB Press 2013.07.03(水) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38141
社説:中国、経済モデル転換までの長い道のり
(フィナンシャル・タイメス 社説)
市場は7月1日、中国から伝わってきた暗い経済指標に安堵のため息をついた。
確かに、HSBCが発表した6月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は48.2まで低下し、9カ月ぶりの低水準となった。
ただ、銀行間取引金利が2ケタに跳ね上がった先月の資金逼迫の後だけに、投資家はもっと暗いニュースを覚悟していた。
このため上海株式相場は動じず、0.8%上昇してこの日の取引を終えた。
だが、中国の成長鈍化は今後、悪化する一方だ。
中国人民銀行の介入のおかげで銀行間取引市場は再び機能しているものの、当局は、今年に入って極端に伸びた信用を抑制する決意を変えていない。
企業の借り入れコストの指標はまだ、1カ月前の水準を上回っている。
一部のアナリストは、中国が自ら定めた2013年の国内総生産(GDP)成長率目標(現在は7.5%)を達成できないかもしれないと懸念している。
■新たな景気刺激策は講じるべきではない
成長の減速は、中国の過剰な信用に終止符を打つためには、支払う価値のある代償だ。
2008~09年の金融刺激策に続く新たな刺激策は、経済に一時的な安心感を与えるだろう。
だが、新たな不動産ブームを生むことにもなる。
地方政府と次第に多くの個人投資家は、建設部門に多額の投資を行っている。
再びバブルを膨らませると、破滅的な結果を招く恐れがある。
だが、20年にわたる高度成長の後、指導部は成長減速をうまく操ることに苦労するだろう。
中国経済の純然たる規模が、この仕事を一段と難しくする。
不動産価格があまりに急速に下落し、投資需要が緩やかに減るのではなく急減すれば、中国は激しい好不況のサイクルに見舞われる。
地方政府・自治体の支払い能力に影響が及び、中央政府が救済を余儀なくされるかもしれない。
中国政府は経済のリバランスを進め、輸出・投資主導から消費主導へ転換したいと考えている。
これは賢明な計画だ。
だが、大手国有企業より個人に大きな役割を与えることは政治的に難しい。
民主主義の拡大を求める声は確実に大きくなっていく。
荒っぽい動きになる中国の減速は、他国にも影響を及ぼす。
中国のコモディティー(商品)需要のおかげで長年好況を謳歌してきた資源国は、これまでとは異なる経済モデルを見つけなければならない。
また、中国の力強い需要に頼って欧米の低成長を埋め合わせてきた西側企業も苦しむことになる。
しかし、指導部が経済モデルの転換に乗り出すのが遅くなればなるほど、転換をうまくマネージすることが難しくなる。
中国が新たなモデルに向けて前進し始めることは正しい。
世界は中国の幸運を祈るべきだ。
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「世界は中国の幸運を祈るべきだ」 とは?
世界は神頼みなっているのか。
今後おそらく中国は低下の一歩を進んでいくことになろう。
圧縮成長による歪みを解消できるほど、中国の政治家は資本主義にキャリアーではない。
資本主義の基本は「個人に大きな役割を与えること」であるが、それが政治的に難しいとなると、万策つきて公安武装組織で抑圧するしかなくなる。
やはり、神頼みか。
[減速する成長、そして増強される軍備]
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