●建物が未完成となっている中国河北省唐山市の曹妃甸工業区
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ウオールストリートジャーナル 2013年 7月 23日 20:59 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323689904578623510480027452.html
7%超の経済成長維持は不可欠=中国首相
中国の李克強首相は、同国の経済成長率を7%以上に維持しなければならず、
これが政府の容認できる下限だと認識を語った。
国営紙・新京報が23日付でこの発言を報じた。
同紙によると、李首相は先週の国務院(内閣)の会議で、
経済成長率が7%を割り込むことは許されないと強調。
この水準を維持できれば、今後10年間で国内総生産(GDP)を倍増させるという政府目標を達成できると語った。
』
ウオールストリートジャーナル 2013年 7月 24日 11:35 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323689904578624712185918442.html
「中国の経済成長鈍化に許容限度」-首相の発言報道で解釈交錯
【北京】
経済成長が鈍化し過ぎた場合に景気刺激策を講じることを中国政府高官が示唆したとの報道を受け、23日の上海と香港の株式市場は上昇した。
報道された高官発言の解釈は、ある米金融機関アナリストの解釈を含め、異なっており、これは中国当局が経済をどのように見て、どのように政策を立案するかの判断が難しいことを浮き彫りにしている。
エコノミストや投資家はこれまで、今年の経済成長が政府の公式目標を下回った場合、中国指導部が是正余地をもたせるか否かに注目してきた。
経済成長は1998年以来、目標を下回ったことはない。
中国紙「新京報」は23日、中国の経済政策決定者のトップである李克強首相が先週、国務院(内閣に相当)で行ったとされる発言を報じた。
同紙は情報源を明らかにしなかったが、同首相は席上、年間の経済成長率が7%を下回ることは容認できないと述べ、その理由として
「7%」というのが2020年までの10年間で経済規模を2倍にするという公式目標を達成するのに必要な最低伸び率
だからだと語ったと報じた。
投資家はこの発言報道を真剣に受け止めたようで、これがアジアの株式市場を上昇させた。
香港市場の代表的な株式指数は23日に前日比2.3%上昇したほか、上海総合指数は2%上昇した。
欧州の株式市場は正午までアジア市場の流れを受けて上昇した。
ただしその後は米国の経済データが期待外れだったことを受けて反落した。
中国政府の公式な経済成長率目標は7.5%で、通常なら、それを下回る数値は心強いとは見なされない。
報道された発言は、李首相が譲れない一線を示し、成長率が鈍化し続けた場合に景気を刺激する方向にシフトする可能性を示したことをうかがわせる。
2013年第2四半期の中国の経済成長率は前年同期比7.5%に鈍化し、第1四半期の7.7%を下回った。
これを受け、エコノミストは同国の経済成長予測を徐々に下方修正している。
2012年通年の成長率は7.8%と、前年の9.3%から落ち込んでいる。
新京報の関係者にコメントを求めたが、回答はない。
同紙は中国の大半のメディアと同様に国営だが、政府の意向を代弁する機関紙とはみられておらず、中国の経済予測専門家からそれほど注目されていない。
国務院新聞弁公室の関係者は、伝える情報は何もないと述べた。
李首相は、政府の政策立案の際に経済成長率と物価上昇率の閾値(限度)に当局者たちが注目していると述べたことがある。
しかし具体的な数値は公表しなかった。
同首相は10日に政府のウェブサイトに掲載された発言で、
「経済成長率、雇用、そしてその他の指標がわれわれの下限を割り込まず、物価上昇率がわれわれの上限を超えない限りは、経済を再構築し、改革を押し進めることに注力する」
と述べていた。
政府はこれまで、経済の特定分野で若干の調整を行うと述べている。
例えば雇用促進策、輸出コストの削減策、それに企業、とりわけ中小企業の税負担の軽減などといった措置だ。
しかし、幅広い景気刺激策については、債務増大への懸念などを理由に発動しない姿勢をみせている。
23日の「新京報」報道は、政府の考え方をより綿密に反映する新華社通信の先週末の報道を受けたもののようだ。
新華社通信は、
2010年代の10年間で経済規模を2倍にするには、GDP伸び率は現在から2020年まで年間平均6.9%になる必要がある
と伝え、
事実上7%水準が政府が許容できる最低の成長率であることを示唆した。
ただし、この記事は公式目標の正式な変更を示唆するまでには至っていない。
一方、23日に発表されたあるアナリストのリポートは、中国政府の立場について異なる解釈を打ち出している。
バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのLu Ting氏は、
李首相発言の最低ライン(要点)は実際には7.5%
であり、オンラインに掲載された李首相のトランスクリプト(発言内容)はそのことを明確にしていると書いた。
Lu氏にコメントを求めたが、回答はなかった。
Lu氏の事務所は同氏の情報源について説明し、国務院での李首相のトランスクリプトとされたものは、あまり知られていない中国語ブログサイト上に掲載されていると指摘した。
このトランスクリプトはインターネット上で流布されている。
ただし、どうやら政府の公式サイトには掲載されていないようで、その正確さは確認されていない。
エコノミストや投資家は、経済成長が目標である7.5%を下回るリスクに中国当局者がどう対処するかを注視している。
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ウオールストリートジャーナル 2013年 7月 25日 14:39 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323471504578627000790831828.html#articleTabs%3Darticle
By DINNY MCMAHON, BOB DAVIS
中国の経済成長モデルの欠陥を示す曹妃甸工業区
【曹妃甸(中国)】中国河北省唐山市の曹妃甸(そうひでん)工業区で総額910億ドル(約9兆1000億円)を投じたプロジェクトが債務と未履行の約束にあえいでいる。
それは、
中国経済がなぜ揺らぎ始め、なぜ反転が難しいのか、
その理由の一因を示してくれる。
北京の南東約225キロ、唐山市郊外の曹妃甸の中心にある製鉄所は赤字操業になっている。
近くではオフィスパークが2010年に完成予定だったが、大量の鉄鋼フレームと未完成ビルの塊と化している。
居住者用複合ビルの工事は、労働者がコンクリートフレームを完工した後、昨年末のクリスマスに停止された。
Bridge to Nowhere(どこにも行けない橋)さえも存在する。
支柱が10本立てられた後、この6レーンのスパン(径間)を持つ橋は放棄された。
鉄鋼強化プラスチックパイプを何カ月間も生産していない工場、つまり、日本の双日が関わる合弁のパイプ工場の労働者Zhao Jianjun氏は、入居者のない建物群を指しながら、
「状況がどうなっているかを確かめるためには、辺りを見渡すだけでいい。
北を見ても、西を見ても、東を見ても同じだ」
と話した。
中国のシンクタンク、北京安邦諮詢公司の陳功董事長は、曹妃甸が中国の経済モデルの欠陥を示していると話す。
政府がマーケットの状況とは関係なく、投資を計画し、
企業が追随することが期待されているモデルだ。
陳董事長は、中国の地方政府が
「国内総生産(GDP)の盲目的な追求に駆られている」
と指摘した。
エコノミストたちはおおかた、
世界第2位の経済大国である中国経済が年内に悪化し、
来年もそれほど好転しないと予想している。
政府は今年のGDP目標伸び率である7.5%を依然として堅持しているが、これは昨年の7.8%、一昨年の9.3%をいずれも下回る。
24日には経済鈍化をうかがわせる最新の統計が発表された。
7月の中国製造業購買担当者景況指数(PMI)速報値が過去11カ月間で最低水準に落ち込んだ。
その中の雇用指数は世界金融危機以来、最低となった。
中国の李克強首相は、今年のGDP伸び率があまりに大きく鈍化するのを食い止めるつもりだと述べている。
しかし、同首相は、大型の経済刺激計画の可能性を排除する発言を繰り返し、中国が経済モデルを作り直して投資依存型から国内消費・サービス依存型にすべきだと述べている。
それでもなお、エコノミストや実業家、地方政府当局者の中には、世界的な金融危機に対応した時のような大型の経済刺激プランを求める人もいる。
しかし、この支出と借金の大盤振る舞いは、経済をテコ入れする一方で、現在の諸問題の発生の一因になった。
中国の指導者は、2008年の世界的金融危機を受けて輸出需要が減退した後、信用取引によって増幅される投資に依存した。
GDPに占める投資の比率は07年の41.6%から12年には48.1%に拡大した。
地方政府が道路や空港を建設し、不動産開発業者が豪華なマンション群をどんどんと造成し、国営企業が工場を拡張したためだ。
こうした活動が経済成長を押し上げたのは疑いない。
しかし、通常なら10年分の投資をわずか数年で強行したため、中国は急成長時代の終えんをも早めてしまった。
余りに多くの事業が互いに重複しており、住宅から鉄鋼、コンクリート、太陽光発電設備に至るまで、あらゆる分野で供給過剰を最終的に生み出した。
余剰だが世間の耳目を集める大型プロジェクトも、銀行融資を食い尽くした。
それは、資金に枯渇している中小企業やサービス企業に振り向けられれば、もっと効率的なはずだった融資だ。
国際通貨基金(IMF)は、中国の総投資リターンが1990年代初頭以降、3分の1ほど低下したと指摘する。
中国ではGDPの10%ほどを過剰投資している、とIMFは試算している。
そして、現在、中国の1人民元当たりの融資は、09年以前の融資のわずか3分の1しか経済成長に貢献していない、と格付け会社フィッチ・レーティングスの北京駐在上級ディレクター、Charlene Chu氏は指摘する。
それでも、IMFの最近の推定によると、中国の政府債務はGDPの45%相当と比較的低く、このことは、必要ならば、中国がなお成長の急速な落ち込みを防ぎ、金融システムを支援する余地があることを示している。
しかし、08年以降犯したミスを回避するには、北京の中央政府は、いかにして資金を経済の融資不足分野に注入して長期的な見返りを生み出せるか検討し、策定する必要があるだろう。
仏銀ソシエテ・ジェネラルのアナリストWei Yao氏は、
中国のGDPのうち、38.6%と比較的多くのシェアが債務返済に回されていると推定している。
同氏は
「信用取引の成長が加速しているが、それが実体経済の成長にそれほど貢献していないのは不思議でない」
と言い、経済成長を促せる新プロジェクトや企業に対する資金が結果的に少なくなっていると語った。
曹妃甸プロジェクトの始まりは、少なくとも2003年にまでさかのぼる。
唐山市郊外のこの島を水深の深い大型の港と工業団地に変える作業が始まったのだ。
唐山市は1976年の地震で壊滅的な被害を受け、25万人以上が犠牲になったところだ。
中国政府は当時、首鋼集団の大型製鉄所を北京からこの渤海湾を埋め立てた工業団地に移転させることを望んだ。
鉄鋼の供給業者や顧客もこの近辺への移ることが奨励された。
オフィス用地も従業員の居住用地もたくさんあった。
2006年には、当時の胡錦濤国家主席がここを訪れ、この土地について「金と同じくらい価値が高い」と述べた。
曹妃甸の当局者によると、政府と国営企業が過去10年間でこの工業区に投資した規模は「5610億元(約9兆1000億円)」に上っているという。
しかし、同じような計画が中国全土で同時に始まり、鉄鋼など工業用の生産物の在庫がだぶついた。
鉄鋼の生産者価格はここ16カ月連続で下落している。
また、首鋼が11年に発行した社債の目論見書によると、入手可能な直近の統計である11年当初9カ月の同社の曹妃甸鉄鋼事業は36億元の純損失を計上、多額の負債を抱えていることが分かった。
首鋼集団の長期借入金総額740億元のうち、全体の4割に当たる289億元が曹妃甸事業に振り向けられている。
しかし、同社の代表は、そうした債務問題を知らないと話し、コメントの要請にそれ以上は応じなかった。
鉄鋼業界があえぐなか、曹妃甸のその他のプロジェクトも中断している。
日本の双日が関わる合弁事業、つまり、Zhao氏の働くパイプ工場は4カ月ほど前から生産を中止しているという。
従業員たちが明らかにした。
これについて、双日の広報担当者は、新規受注がないため一時的に生産を中止しているのだと答えた。
曹妃甸政府の広報担当者は、冬の間に一部のプロジェクトが中断したが、それ以降は全て再開されていると述べた。
この見解は現場の作業員たちの言い分と食い違っているようだ。
中国政府が成長促進のために伝統的に行ってきた対処法、つまり、
もっと投資するためにさらに貸し出しを増やすというやり方
はもはや機能しないだろう、とエコノミストたちは主張する。
フィッチのアナリストのChu氏は、最近のように与信がGDPの2倍のペースで伸びている時は、
「算術的にみて、過去の愚かな投資決定から逃れて成長することはできない」
と指摘した。
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[減速する成長、そして増強される軍備]
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