●BRICs諸国の台頭が騒がれ、年次サミットまで開かれるようになったが・・・〔AFPBB News〕
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JB Press 2013.07.29(月) The Economist:
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38325
世界経済:新興国の大減速
(英エコノミスト誌 2013年7月27日号)
新興国の減速は世界的な不況の始まりではない。
だが、世界経済のターニングポイントになるだろう。
短距離走のチャンピオンが自己記録を出せなくなった時、それが一時的なフォームの乱れのせいなのか、それとももう力が衰えてしまったせいなのかを判断するには、しばらく時間がかかる。
同じことが、21世紀の世界経済の短距離走者たる新興国にも言える。
10年にわたり急成長を続けてきたいくつかの新興経済大国は、世界の経済発展を先導し、金融危機のさなかに世界経済を牽引してきたが、いまや急激に減速している。
中国については、2013年に7.5%という政府の目標成長率を達成できれば、幸運と言えるだろう。
2000年代に中国が当然のように期待するようになった2ケタ成長にはほど遠いレベルだ。
経済成長率は、インド(約5%)でも、ブラジルやロシア(ともに2.5%前後)でも、ピーク時の半分に届くかどうかだ。
新興国全体では、5%という昨年の成長率に(どうにか)並ぶ程度だろう。
低迷する先進国に比べれば高く見えるかもしれないが、新興国経済の成長率としては、先進国が不況に陥った2009年を除き、過去10年で最低の数字だ。
このことは、「新興国の時代」のドラマチックな第1期の終わりを示している。
過去10年の第1期の間には、世界の総生産高の中で新興国が占める割合は38%から50%へと急増した(購買力平価=PPP=ベース)。
向こう10年では、新興国の成長は続くものの、そのペースはもっと緩やかになる。
この減速の短期的な影響には、間違いなく対処できる。
だが、世界経済に及ぼす長期的な影響は甚大なものになるだろう。
■息切れする新興国
過去の例を見ると、新興国は急成長の後、不況に沈む傾向がある(貧困国から富裕国になる例がこれほど少ないのもそれが一因だ)。
筋金入りの悲観論者なら、今回についても心配する理由をいくつも見つけ出せるはずだ。
特に、中国の減速がさらに急激に進む恐れや、世界規模の金融引き締めが突然実施される可能性を指摘するだろう。
だが、今回の場合、新興国が広範に不況に陥る可能性は低いと思われる。
中国は現在、投資主導の成長から、バランスの取れた消費主導の成長へと変わる、不安定な移行期にある。
中国の投資の急成長は、大量の不良債権を生んだ。
だが、中国政府には、損失を吸収し、必要に応じて経済を刺激するだけの財力がある。
これほど恵まれた力を持つ新興国は、これまでほとんどなかった。
その力のおかげで、
中国が最悪の事態に陥る可能性は、ずっと低くなっている。
また、先進国の経済がいまだに弱々しい現状では、金融引き締めが突然行われる可能性はほとんどない。
実施されたとしても、ほとんどの新興国は、変動為替相場、多額の外貨準備高、比較的少ない負債(そのほとんどが自国通貨建ての負債)など、以前よりも効果的な防御策を備えている。
ここまでは良いニュースだ。
悪いニュースは、記録破りの成長の時代が終わった
ということだ。
猛進してきた中国の投資と輸出のモデルは、息切れしている。
中国では高齢化が急速に進んでいるため、今後は労働者が減少していく。
また、国全体が豊かになっているため、「キャッチアップ(追いつき)成長」の余地も小さくなっている。
10年前には、中国の国民1人当たり国内総生産(GDP、PPPベース)は、米国の8%だったが、今では18%になっている。
中国の追い上げは続くだろうが、そのペースは遅くなる。
このことは、他の新興大国でも足かせとなる。
ロシアの急成長の推進力となっていたのは、中国の成長に牽引されたエネルギー価格の高騰だった。
ブラジルのハイペースでの成長を支えていたのは、好調なコモディティー(商品)市場と国内信用の急拡大だった。
現在のブラジルに見られる根強いインフレと成長の減速は、基盤となる経済成長速度の上限が、ほとんどの人が考えていたよりもずっと遅かったことを示している。
同じことはインドにも言える。
インドでは、2ケタ近いGDPの年間成長率のせいで、政治家も、多くの投資家も、急速な追い上げの可能性(人口が若く、貧しい)を、必然的なものだと勘違いした。
インドの成長率を再び押し上げることは可能だろうが、そのためには抜本的な改革が必要だ。
それでも、2000年代のピーク時のペースに戻すことは、ほとんど不可能だろう。
■何周も先を行く国は・・・
今回の「大減速」は、もはや新興国経済の急成長では、先進国経済の弱さを補えないことを意味する。
米国か日本がもっと力強く回復するか、あるいはユーロ圏が復活しない限り、
世界経済が現在の3%という冴えない成長率を大幅に上回るペースで成長する可能性は低い。
今後は、むしろ停滞ムードが漂うことになる。
また、過去10年がいかに異例だったかが、ますます明らかになっていくだろう。
過去10年は、規模の大きな中国の急成長に支配されていた。
その異常なまでの破壊力は、中国という国のとてつもない大きさだけではなく、輸出の急増や、コモディティーへの大規模な需要、外貨準備高の増加から生み出されていた。
今後、様々な国のよりバランスの取れた成長が、世界中にもっと小さな影響を及ぼしていくことになる。
中国とインドの後に控えるインドネシアやタイといった次の新興国10カ国の人口は、合計しても中国1国よりも少ない。
成長は今よりも幅広くなり、BRICs諸国(ゴールドマン・サックスがつけたブラジル、ロシア、インド、中国の総称)への依存度も小さくなるだろう。
新興国が成長の道を猛スピードで一直線に歩んでいると考えていた企業の戦略担当者は、スプレッドシートを見直す必要があるだろう。
今後は、シェールガスを燃料にして回復した米国の方が一部のBRICs諸国よりも活気のある有望株になる年もあるかもしれない。
だが、最大の難問に直面するのは、新興国の政治家たちだろう。
成長を促進するか遅らせるかは、彼らの手腕次第だ。
★.これまでのところ、最も機敏に改革に力を注いでいるのは、恐らく中国の政治家たちだ。
★.それに対して、ウラジーミル・プーチン大統領率いるロシアは、天然資源に頼った鈍重な政治により、一握りの権力者が私腹を肥やしているが、その顧客はシェールガスに流れつつある。
★.インドには人口動態の利があるが、インドとブラジルはいずれも、改革への熱意を取り戻す必要がある。
そうしなければ、最近デリーやサンパウロの街頭に結集したような、急拡大する中流層を失望させることになるだろう。
■「北京コンセンサス」からの揺り戻しはあるか?
経済を取り巻くムードにも変化があるかもしれない。
1990年代には、「ワシントン・コンセンサス」が新興国に、経済の自由化と民主主義を(時に横柄に)説いた。
ところがここ数年、中国が台頭し、ウォール街が危機に陥り、米国政治が行き詰まり、ユーロ圏が自らの首を絞める中で、旧来の自由主義的真理に疑問が投げかけられた。
流行したのは、国家資本主義と現代的な独裁制だ。
独裁者にとっても民主主義者にとっても、「北京コンセンサス」が自由主義的改革を放棄する言い訳になった。
成長が必要になったことで、自由主義的改革への関心が、再び高まることも考えられる。
そうなれば、欧米も多少は自信を取り戻せるかもしれない。
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英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。
英語の原文記事はwww.economist.comで読むことができます。
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ロイター 2013年 07月 31日 11:51 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE96U01X20130731
焦点:新興国の明暗分ける成長持続性、メキシコとフィリピンが有望
[ロンドン 30日 ロイター] -
選別眼を備えた投資家は新興国市場の中でも持続的な成長モデルを持つ国に狙いを定めており、
単に見かけの成長率が高いだけの新興国は外国資本を引き付けられなくなってきた。
国内貯蓄を促進してインフラ投資に回し、長期的な成長維持を確保しようとしている国の筆頭がメキシコとフィリピンだ。
米連邦準備理事会(FRB)の資産買い入れ縮小計画が新興国の明暗を分け、
多額の資金調達ニーズを抱えた国からは資金が足早に逃げ出している。
一部の新興国は、外国の短期マネーの流出入に左右されにくい体質作りを目指し、より安定的な資金源に裏付けられた国内投資に着手している。
海外出稼ぎ労働者からの送金が着実な収入源となっているフィリピンは、国内総生産(GDP)の3%に相当する空港や道路建設プロジェクトに国内貯蓄を振り向けている。
メキシコは向こう6年間でGDPの約3分の1相当の資金をインフラ整備に投じる計画。
同国は他の中南米諸国と同様、労働者の着実な貯蓄を促すために年金制度改革を実行済みだ。
これがインフラ投資資金調達の土台となり、内需と潜在成長率の押し上げにつながるはずだ。
ロンバー・オディエ・インベストメント・マネジャーズのグローバル債券FXストラテジストのサルマン・アハメド氏は
「新興国市場においては、もはや勝ち組を見つけるのではなく生存組を見極める動きになっている。
われわれはメキシコとフィリピンが有利な立場にあるとの見方を変えていない。
過去の勝ち組だったブラジルとトルコには危うさが生じてきた」
と語った。
リッパーの推計によると、1─6月にメキシコの株式・債券ファンドは合計37億ドル、フィリピンは合計25億6000万ドルの、それぞれ純資金流入となった。
5月22日以来、新興国市場株全体の指数 .MSCIEFが約7%下げる中で、メキシコ株は1.6%上昇した。
フィリピン株は今年に入って14%以上値上がりし、ムーディーズ・インベスターズ・サービスは同国の格付け引き上げを検討中だ。
ムーディーズはフィリピン政府の安定的かつ良好な資金調達環境と、政府が政策方針を強化したことを格付け見直しの理由に挙げた。
■<資金の使い道>
中南米は制度的な国内貯蓄基盤の構築において一歩先んじている。
1980年代の債務危機を受けて年金制度を改革したからだ。
世界銀行によると、メキシコ、チリ、ペルー、コロンビアの貯蓄率はいずれも国内総生産(GDP)の20%を超えて比較的高い。
ブラックロックのソブリンリスク指数において、チリは新興国市場の中でシンガポールと台湾に次いで3番目に信用リスクが低い国だ。
ブラックロック・インベストメント・インスティテュートの最高投資ストラテジスト、イーウェン・キャメロン・ワット氏は
「この指数において、相当数の新興国市場経済が国内の金融・貯蓄制度ゆえに非常に高いランクを得ていることは興味深い。
通貨調達が安定している国は通常、国内の年金・保険制度と貯蓄産業の発展を通じて国内金融システムを深化させた国だ」
と述べた。
メキシコの年金基金は資産規模が約1兆9190億ペソ(1507億6000万ドル)と民間貯蓄の約23%に相当しており、政府はこの基金を通じて国内貯蓄を建設に振り向け始めた。年金基金の1.5%はインフラ投資関連の国内債務で運用している。
メキシコは過去20年間、旅客鉄道サービス不在の状態が続いており、政府は3つの路線に9500万ペソの予算を付けた。
メキシコ市に2番目の空港を建設することも検討すると表明している。
フィリピン政府は民間企業に対し、少なくとも空港5カ所の近代化を発注した上、首都マニラの南に位置する2つの州で有料道路を建設する8億1400万ドルのプロジェクトについても近く入札を行う計画だ。
どちらの国にとっても日本が手本になる可能性がある。
戦後の日本経済の成長は、外国資本によってスタートを切ったが、その後は民間貯蓄が銀行を介して大規模なインフラ整備や復興計画に投資され、けん引役を果たした。
日本が旧西ドイツを抜いて世界第2位の経済大国となるころには、もはや外国資本頼みの成長を脱していた。
ロンバー・オディエのアハメド氏は
「インフラは長い目で見て前向きな要素だ。
競争力と経済の供給サイドの向上につながる」
と述べた。
(脇奈津子記者)
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[減速する成長、そして増強される軍備]
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