『
サーチナニュース 2013/08/05(月) 13:11
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0805&f=national_0805_024.shtml
【中国BBS】中国人が議論「もしもわが共産党が倒れたら」
中国大手検索サイト「百度」の掲示板に
「もしも中国共産党が倒れたら…?」
というスレッドが立てられた。
スレ主が投げかけた際どい仮定の質問に対して、中国人ネットユーザーからさまざまなコメントが寄せられた。
スレ主は、もしも共産党が倒れても中国が民主国家になることはあり得ないと主張。
むしろ日米などに揺さぶられて、結局は植民地となる可能性が高いため、
国内の動乱を起こすべきではなく、共産党が引き続き政権を担い、腐敗をなくして生活環境を良くしていくしかない、
と述べた。
スレ主の質問は一見すると危険だが、
共産党の正当性を認める内容であるため、スレ主が検閲で監視対象となることはなさそうだ。
スレ主の主張に対し、ほかのネットユーザーからも
●.「現政権を転覆しようとするいかなる行為も、極めて愚かな行為である!」、
●.「党が政治をすると民が苦しむが、党が覆されると民はもっと苦しむ」
と、スレ主に同意するコメントが寄せられた。
しかし反論も少なくなく
●.「世が乱れても何も恐くはない」、
●.「どんな党派も寿命がある。遅かれ早かれの問題だ。ポイントはどのように終わるかだよ」、
●.「永遠に存在した政権などない」
などのコメントがあった。
中国にいて、共産党を否定するような意見は極めて危険であり、検閲対象となるはずだ。
またスレ主は、腐敗問題は段階を踏んで撲滅していけば良いと主張しているものの、
●.「中国には汚職役人が多すぎるからな。習主席は忙しくて手が回らないんじゃないか」
という意見もあった。
現政権は汚職撲滅を目指しており、賄賂や接待も減少傾向にあるが、副作用として奢侈品や高級レストランの売上が激減するなど、経済に悪影響も出始めている。
ほかには
●.「どうせ外敵を立てて政権を守るんだろ。つまらん」
という指摘や、
●.「党を変えるのではなくて、人を換えるのですよ」
という提案もあり、中国人の意見は賛否両論だった。
』
『
サーチナニュース 2013/08/05(月) 11:05
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0805&f=politics_0805_006.shtml
人民日報が「憲政要求」警戒
…“中国特有”の言動不一致には沈黙
中国共産党系の人民日報海外版は5日付で
「“憲政”は本質上、与論戦の武器」
と題する論説を掲載した。
「中国の憲政思潮は、米国情報機関が育成した各種の基金の資金援助のもとで生まれ、拡大した」
と主張。「憲政要求派」による
「中華人民共和国憲法が保障する、言論や集会の自由を認めよ」
などの「憲政要求」の内容には触れなかった。
中国では2013年になって、
共産党などに対して「憲法に明記している」との理由で、
共産党などに対して
「言論、出版、集会、結社、示威、創作の自由や、国家機関や国家公務員を批判する権利を認めよ」
という憲政議論が目立つようになった。
共産党内部でも受け止め方は多様と思われるが、人民日報などの「官制メディア」を中心に、
憲政議論に反論する文章がしばしば掲載されている。
5日付人民日報海外版が掲載した論説は
●.「マルクス主義学者は、憲政とは私有制経済を基礎として、至高無上の地位にある資産階級の財産権を神聖・不可侵のものと保障するものと考える」、
●.「自由主義学者の立場は反対で、社会主義制度は独裁などに結びつくものであり、憲政を実行してのみ民主と自由が存在すると認識」
と主張。
人民日報の論説は、中国における「憲政要求」の目的が「国家体制の転覆」にあると主張。
さらに、1980年代のソ連においては
「ゴルバチョフやエリツィンが、ソ連憲法内の社会的要素を排除し、ソビエト共産党の政権担当の地位を取り消した」
ことが
「かつては軍事上で米国を圧倒したソ連を、民主社会主義と憲政の二大心理作戦の武器で攻撃し、崩壊させた」
と論じた。
中国における「憲政」の思潮は、
「フォード財団が賛助する現代世界比較憲政史研究のように、米国情報機関が育成した各種基金の資金援助のもとで生まれ、発展してきたもの」
と決めつけ、
「警戒せざるをえない」
と結論づけた。
これれまでにも「憲政要求」に反論する文章はたびたび発表されているが、
「自国憲法を順守せよ」という要求内容そのものを正面から論破する議論は難しいと考えられ、
「憲政要求」の主張には「裏がある」との主張に終始することがほとんどだ。
5日付の人民日報の論説も、憲政要求派が批判する
「憲法の条文と現状の“言行不一致”」
については触れなかった。
5日付人民日報海外版の論説には、海洋安全と協力研究員高級研究員で、中国社会科学院世界社会主義研究センターの特約研究員である馬鐘成氏の署名がある。
**********
◆解説◆
現行の中華人民共和国憲法には、同国が「共産党の指導」により成立したなど、共産党の特殊な地位を強調しつつ、中華人民共和国の設立により中国人民が「国家の主人」となったと明記。
そのうえで、中国国民(公民=国籍保有者)に対して、西側諸国と同様な権利を保障している。
国民の権利については、以下のような条文がある。
●.「中華人民共和国国民は言論、出版、集会、結社、行進、デモの自由を持つ」(第35条)
●.「中華人民共和国国民は宗教信仰の自由を持つ」(第36条)
●.「中華人民共和国国民は人身の自由を侵犯されない。
いかなる国民も人民検察院の批准または人民法院(裁判所)の決定であり、公安機関(警察)が執行するのでなければ逮捕されることはない」(第37条)
●.「中華人民共和国国民は通信と自由と秘密について法律の保護を受ける」(第40条)
●.「中華人民共和国国民は、いかなる国家機関と公務員に対しても、批判したり意見を提出する権利を持つ」(第41条)
●.「中華人民共和国国民は、科学研究と文学芸術創作、その他の文化活動を進める自由を持つ」
』
「もしも中国共産党が倒れたら」
というのは21世紀前半の大きなテーマかもしれない。
アメリカあたりは、いろいろなファクターを使ってシュミレーションを試みているだろうが、日本はどうだろう。
中国は正史主義によって、過去の思想・社会・文化・慣習といったものはすべて共産党によってすり潰されている。
残っているのは中国共産党思想のみである。
その共産党が倒れたら、唯一の思想的バックボーンが消えてしまう。
ということは背骨のない民族ということになる。
「拠り所になり価値観は銭金主義・拝金思想のみ」
ということになってしまう。
そういうなった場合、中国国内はどんな状況に陥るのだろう。
このあたりが、シュミレーションの要になるのだろうと思うが。
今の中国は共産党という強権によってタガを締められることによって形をなしている。
共産党が倒れるということは、このタガが外れるということである。
そうなったら、中国はどうなるのか。
代替できるタガはすべて共産党が潰してきた。
そうすることによって共産党の正当性を主張してきた。
タガがなくなったとき、頼れるのはやはり「ゼニ」しかない、というのが正論であろう。
ということは、このゼニをめぐって中国民族がどう動いていくか、ということになるのだが。
『
サーチナニュース 2013/08/07(水) 11:03
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0807&f=national_0807_014.shtml
人民日報が再び「憲政要求」非難…ソ連崩壊と同様の事態と警戒
中国共産党系の人民日報海外版は8日付で
「中国がいわゆる憲政を実行するのは木に縁(よ)りて魚を求めることにすぎない」
と題する論説を掲載した。
「憲政要求」は本質的に情報心理戦であり、かつてソ連崩壊を推し進めた「民主社会主義理論」と同じと主張した。
中国では、広東省の南方報業伝媒集団発行の「南方週末」が2013年1月3日付の新年号で「中国の夢、憲政の夢」との社説を出稿。
現地共産党当局が同社説を差し替えさせたことで、大きな社会的波紋を巻き起こした。
「憲政」要求は実質的な民主化要求であり、中国共産党は警戒を強めている。
人民日報は5日付でも「“憲政”は本質上、与論戦の武器」と題する論説を掲載したばかりだ。
8日付の論説では、「現在、中国社会で盛況である“憲政”概念体系」などの表現で、
憲政要求の声が強まっていることを事実上、認めた。
これまでの経緯で、「憲政」派がまず打ち出したのは、
「中華人民共和国憲法に明記されている言論、出版、集会、結社、行進、デモの自由などを、当局は認めよ」
という点だ。
人民日報論説は
「事実上、中国の憲法の最も核心の内容は序言と総綱にある」
と主張し
「強固な社会主義基本制度と労働階級の階級利益の保障があってこそ、個々の利益がある」
と主張。
西側の「憲法の公民の基本権利を保障する条項」の核心内容は「私有財産の不可侵性」であると論じ、
「ただし、資本主義の雇用制度おいて、労働者の時々刻々の労働成果は生産財を独占する資本家階級に侵害される」
として、西側諸国の「憲政」は資本家の利益のためにあると主張した。
論説はさらに、憲政要求を
「米国憲法をかんがみて、中国憲法を修正するものだ」
と指摘。
中国式の
「人民民主専制の国家を転覆することを求めている」
との考えを示した。
**********
「革命政権」が成立した国家では一般的に、“反革命”あるいは“政権転覆罪”が“最大の罪”とみなされる。
中国では文化大革命期などに、対立セクトが互いに「反革命」と非難しあい、「武闘(武力抗争)」を繰り返す事態になった。
中国では、中華人民共和国成立直後に「懲治反革命条例(反革命法)」が成立した。
1997年の刑法改正で「反革命法」は最終的に「転覆国家政権罪」に改められたが、人民日報の論説は「憲政要求派」を「人民民主専制の国家を転覆を求めている」などとして、中国の政治伝統では「極めてきつい言葉」で非難したことになる。
論説は
「中国の憲法では、序言が人民大衆の権利について十分に明確に語っている」
として、
「毛沢東主席を指導者とする中国共産党が中国の各民族人民を指導し…(中略)…帝国主義と官僚資本主義の統治を覆し…(中略)…これにより、中国人民は国家権力を掌握し、国家の主人となった」
の部分を紹介した。
そして最後の部分で、
「資本主義と比べれば社会主義は新生児だ。
中国共産党が本当に人民のために奉仕する政党として建設されてこそ、人民の根本利益である社会主義憲法と法律が徹底的に貫徹され実施される。
いわゆる憲政は、木に縁りて魚を求めるものだ」
と主張した。
**********
◆解説◆
同論説の最後の部分の書き方は、かなり興味深い。
まず、論説全体を通じて示された、「憲政派は共産党の一党独裁そのものに批判的」との見方は、現状分析としてほぼ正しい言えるだろう。
論説著者の主張は現体制の肯定であり、「共産党が政権を掌握しつづけねばならない」との立場だ。
その著者しても、現在の共産党が労働者階級、あるいは人民全般の利益を「きちんと守っている」、つまり共産党本来の機能を完全に果たしているとは断言できなかった。
だからこそ「中国共産党が本当に人民のために奉仕する政党として建設されてこそ」という条件を書かざるをえなかったと解釈できる。
人民日報の論説と「憲政派」は厳しく対立しているが
「現在の共産党には問題あり。
理想的とは言えない」
との認識では一致していると言える。
』
『
JB Press 2013.08.07(水) 柯 隆
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38364
「憲政」の徹底を巡って中国で論争勃発
摘んではならない政治改革の芽
参議院選挙で自民党が大勝し、憲法改正議論が本格化する気配である。
政党によって、改憲、加憲、護憲など立場は様々だ。
戦後、日本は日米同盟の枠組みでアメリカによって守られてきた。
無論、日本はその分のコストを払ってきた。
改憲を主張する政治家は、アメリカに防衛費の一部をコストとして払うよりも自衛すべきだと主張する。
護憲を主張する政治家は日米同盟に反対する。
だが、実質的に国防は日米同盟に委ねるしかない。要するに、戦争が起きたとき、日本は自衛するか、それともアメリカを頼るか、という選択である。
中国でも、憲法(中華人民共和国憲法)を巡る論争が起きている。
経済改革を中心とする「改革開放」政策が行き詰まりつつある。
その中で、政治改革を求める声が日々高まっている。
一部の憲法学者は「憲政」の徹底を求めている。
すなわち、憲法を尊重し、その決定に基づいて国の運営を実行すべきだというのだ。
その真意は、共産党と政府の権力を法的に制限しようとすることである。
現在、共産党の意志決定は、実質的に憲法よりも上位に位置づけられている。
憲政の徹底は自ずと共産党の指導体制を脅かすことになる。
それに対して、保守的な左派の学者(注:日本で「左派」は革新的な勢力を指すが、中国では保守的な勢力を指す)は、憲政は資本主義の専売特許であり、社会主義中国では憲政は適さないと主張する。つ
まり、共産党指導体制を堅持するために、護憲を主張するのである。
■社会主義を理想とする左派勢力
現実的に見ても、歴史的な観点から見ても、社会主義体制は失敗に終わった。
しかし、中国では、社会主義体制が依然として左派勢力によって支持されている。
「改革開放」政策が30年以上経過したが、毛沢東時代の名残は依然として根強く残っている。
1990年代、冷戦が終わり資本主義と社会主義のイデオロギー論争は終結した。
だが、中国社会、とりわけ学界では、イデオロギーの違いを理由に、
自由化と“the rule of law”(法による統治)に反対する左派勢力が存在する。
北京の人民大学の特任教授、楊暁青氏は「憲政と人民民主制度の比較研究」という論文の中で、
「資本主義の『憲政』で唱えられている
★.私有財産の保護、
★.議会民主主義、
★.三権分立、
★.司法の独立と
★.軍隊の国軍化
は社会主義体制に適さない」
と強調している。
また、中国社会科学院政治学研究所陳紅太研究員は「人民民主制度の比較優位、政治責任と歴史的任務」の論文の中で、
「西側の『憲政』民主主義制度はせいぜい人民民主制度の参考に過ぎない」
と指摘する。
かつて、最高実力者だった鄧小平は党内のイデオロギー論争を封じ込めるために、
「社会主義であっても資本主義であっても経済発展さえすればよい」
というリアリズムの談話を発表したことがある。確かに、イデオロギーの論争はそれぞれの論者の立場によるものであり、簡単には結論が出ない。
問題は、なぜここに来て、資本主義か社会主義かの論争が台頭するようになったのかということだ。
その背景には様々な要因がある。
●.1つは、指導部が改革の方向性を明示していないことが挙げられる。
経済成長に偏重するこれまでの路線は明らかに持続不可能である。
●.もう1つは、改革の初期段階で鄧小平が提唱した「小康生活」はミドルクラス以上の層で実現したが、
これからどこへ向かえばよいのかが見えてこない。
さらに、所得格差の拡大などの社会矛盾が日々深刻化している。
中国社会にとって「改革開放」を進めて本当によかったかどうかが疑われている。
■改革派学者は社会主義体制の終焉を見通している?
中国では、政治改革を主張することはタブーでなくなったが、
共産党指導体制を否定するような言動は政権転覆罪に問われる。
胡錦濤前国家主席と温家宝前首相はいずれも政治改革の必要性を提起したことがある。
しかし、具体的にどのようにして政治改革を推進するかについては一度も言及していない。
政治改革の遅れは、さらなる経済発展を妨げている。
また、所得格差の拡大や生態環境の破壊が日々深刻化している。
共産党幹部の腐敗も横行している。
これらの諸問題を解決するためにも、政治改革の断行は不可欠だ。
例えば、環境汚染物質を垂れ流す国有企業があっても、裁判所はその企業を有罪とすることはない。
司法の独立性が担保されていないからである。
右派(改革派)学者は政治改革を促進するために司法の独立を唱える。
だが、右派学者は憲政の徹底が社会主義体制と両立できないことも認めている。
それにもかかわらず、憲政の徹底を提起するのは、すでに社会主義体制の終焉を見通しているということのようである。
共産党指導部は目下の政治体制の問題を十分に承知しているはずだ。
第18回党大会では、共産党指導体制、人民民主体制の健全化と法による国家統治を有機的に統一することがその報告の中に盛り込まれた。
習近平国家主席は2012年12月の憲法施行30周年記念大会で、
「憲法と国家の前途と人民の運命は密接に関係している。
憲法の権威を維持することは党と人民の共通の権威を維持することである」
と述べている。
少なくとも習近平国家主席のこの談話からは、憲法の権威を尊重しなければならないと認識していることが分かる。
しかし、憲政を巡る論争は簡単には収まらない。
実は、学者の間で起きている憲政論争は、単なるイデオロギーの論争ではなく、
「改革開放」の方向性を巡る指導部の対立も見え隠れしているからだ。
1].「改革開放」の第1段階においては、政治改革を避けながら、市場経済の制度改革が推し進められた。
2].今は「改革開放」の第2段階に入っており、政治改革を避けて通れなくなった。
政治改革は共産党指導体制の絶対性を揺るがすことになる。
しかし、習近平政権がこの問題について曖昧にすることは、もはや許されない状況である。
柯 隆 Ka Ryu:
富士通総研 経済研究所主席研究員。中国南京市生まれ。1986年南京金陵科技大学卒業。92年愛知大学法経学部卒業、94年名古屋大学大学院経済学研究科修士課程修了。長銀総合研究所を経て富士通総研経済研究所の主任研究員に。主な著書に『中国の不良債権問題』など。
』
『
サーチナニュース 2013/07/08(月) 10:49
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0708&f=business_0708_028.shtml
憲政を巡る大論争―岐路に立つ政治改革=関志雄
中国では、リベラルな論調で知られている『南方週末』紙の今年の新年号に掲載する「中国の夢、憲政の夢」というタイトルの社説が、監督当局の指示によって一部差し替えられた事件をきっかけに、「憲政」の是非を巡って、論争が起きている。
この論争は、主に中国が憲政を政治改革の目標にすべきだと主張する「憲政支持派」とそれに反対する「憲政反対派」の間で行われているが、「支持派」の中でも、現在の憲法を前提として穏健的改革をしていくべきだと主張する「社会憲政派」と、憲法の全面的改正など、より急進的改革を求める「自由憲政派」の論点の対立が鮮明になっている(図1)。
論争の行方は、今後の政治改革の方向性を左右しかねないだけに、内外の注目を集めている。
図1 憲政を巡る論争に参加する三つのグループ
(出所)筆者作成
■「憲政反対派」の主張
「憲政反対派」の主張として、中国人民大学の楊暁青教授の見解が典型的である(楊暁青、「憲政と人民民主制度の比較研究」、『紅旗文稿』2013年第10号、2013年5月)。
それによると、西側の現代政治の基本的な制度的枠組みとしての憲政は、その核心となる制度的要素と理念が、あくまでも資本主義とブルジョアジー独裁のものであり、次のように、中国が現在採用している社会主義人民民主制度とは明らかに異なっている。
(1). 憲政では私有制の市場経済が基礎となるが、人民民主制度では公有経済が主体となる。
(2). 憲政では議会民主制が実行されるが、人民民主制度ではすべての権力は人民に属する。
(3).憲政では三権分立が実行されるが、人民民主制度では人民代表大会制度を実行する。
(4). 憲政では司法機関が独立性と違憲審査権を持っているが、人民民主制度では全国人民代表大会とその常務委員会が憲法の実施を監督する。
(5). 憲政では軍隊の「中立化、国軍化」が実施されるが、人民民主制度では軍隊は共産党の絶対的指導を受ける。
それゆえに、憲政を受け入れることは、国家の性質、政治制度、社会発展の方向を全面的に変えることをも意味するので、断固拒否すべきだという。
■「社会憲政派」と「自由憲政派」に分かれる「憲政支持派」の主張
一方、「憲政支持派」の学者たちは、憲政を政治改革の目標にすべきだという点において一致するが、現在の憲法への態度によって、「社会憲政派」と、「自由憲政派」に分かれている。
まず、「社会憲政派」は、共産党による長期政権は誰かの意志によって変えられるものではなく、その地位に挑戦することが現実的ではないという認識を踏まえて、憲法で共産党の権限を具体的に明示し、国民の基本権利を確保しながら、憲法の効果的かつ全面的実施を求める。その代表的人物として、共産党の憲法学の元老で、中国における四部の憲法の起草にすべて参加した唯一の学者である中国人民大学の許崇徳教授や、華東政法大学の童之偉教授をはじめとする体制内の学者が挙げられる。
童教授は、具体的に政治改革を次の四つの面から着手すべきだと提言している(童之偉、「社会主義憲政という概念に関する補足的な説明」、http://blog.sina.com.cn/s/blog_6d8baa340101gtiw.html)。
(1).国民の言論と出版の自由、結社の自由、宗教信仰の自由、特に、国民の公的権力機構と公務員に対する監督の権利を法律で保障する。
(2).地方各レベルの人民代表大会の過半数の議席を共産党が推薦した候補者に割り当てると同時に、直接選挙の適用範囲を県のレベル以上の人民代表大会に広げ、また自由選挙によって選ばれる議席数を増やす。
(3).裁判官による独立裁判権の行使を中心とする裁判制度を構築する。海外の経験を学び、裁判官の清廉、公正を保ち、法律を以て裁判の公開を保証する。
(4).公安部門の権限を厳しく制限し、国民の人身の自由、通信の自由を確保する。
これに対して、「自由憲政派」は、より急進的改革を通じて、最終的に司法の独立、権力への制約、軍隊の国軍化、公務員の政治的中立性の確保、自由な選挙などを特徴とする憲政民主制度の確立を目指すべきだと主張している。
その代表人物として、北京大学の賀衛方教授、華東政法大学の張雪忠講師など、体制と一線を画す学者が挙げられる。
賀教授によると、中国では、公有制、一党制、司法独立の欠如、党によるメディアへの全面的コントロールが発展に最も良い条件を与えていると思われていたが、このような考え方が間違っていると判明した今、他国の経験によって証明された正しい道を歩むべきである。
共産党にとっても、自己改革を通じて北欧型の社会民主党へ脱皮し、政治における競争の合理性を認めることは、決して悪い選択ではないという(「中国の憲政論争―賀衛方氏との対話」、聯合早報ウェブ版、2013年6月24日)。
■「社会憲政派」に近い習近平総書記のスタンス
一方、中国共産党の習近平総書記は、
「権力の行使への制約と監督を強化し、権力を制度という籠に閉じ込めなければならない」
ことを強調している(第18期中央規律検査委員会第二回全体会議での重要講話、2013年1月22日)。
「憲政」はまさにこの「籠」に当たると言える。
習総書記の憲政に関する考え方は、次のようにまとめられる(習近平、「現行憲法公布・施行30周年記念大会」で行った重要講話、2012年12月4日)。
まず、中国の憲法は、
「国家の基本法の形で、
中国の特色ある社会主義の道、
中国の特色ある社会主義理論体系、
中国の特色ある社会主義制度の発展の成果を確立し、
わが国の各族人民の共通の意思と根本的利益を反映して、
歴史の新たな時期における党と国家の中心的事業、基本原則、重大な方針、重要な政策の法制上の最高の体現」
である。
また、業績を十分評価すると同時に、次のような足りない点を見て取らなければならない。
(1).憲法の実施を保証する監督の仕組みと具体的制度がまだ不備で、法律があっても従わず、法の執行が厳格でなく、違法行為を追及しないといった現象が依然みられる。
(2).人民大衆の切実な利害にかかわる法執行・司法問題が比較的目立つ。
(3).一部公職者の職権乱用、職務怠慢・汚職、法執行での違法行為さらには私情によって法を曲げる行為がみられ、国の法制度の権威が重大に損なわれている。
(4).一部の指導幹部を含め、公民の憲法に対する意識を高める必要がある。
さらに、
「憲法の全面的な貫徹実施は、社会主義法治国家建設の最重要任務にして基礎的作業である。
憲法は国の基本法、安定統治の総規則であり、法として最高の地位、権威、効力を備え、基本性、全局性、安定性、長期性を備える。
いかなる組織または個人も、憲法と法律を超える特権を有してはならない。
憲法と法律に違反する行為は全て追及しなければならない。」
最後に、
「国の法治はまずは憲法による国の統治であり、法に基づく執政のカギは憲法に基づく執政であり、党が人民を指導し、憲法、法律を制定し、党自身は憲法と法律の範囲で活動すべきで、党が立法を指導し、法の執行を保証し、先頭に立って法律を守ることを真に実現しなければならない」
という。
共産党の指導を堅持しながら、現行の憲法を貫くという習近平総書記のこのようなスタンスは、「中間派」ともいうべき「社会憲政派」に近いと見られる。
中国共産党は、習総書記の下で、如何に「自由憲政派」(右派)と「憲政反対派」(左派)の両陣営からの圧力をかわしながら、政治体制改革を進めていくかが注目される。
(執筆者:関志雄 経済産業研究所 コンサルティングフェロー、野村資本市場研究所 シニアフェロー 編集担当:水野陽子)
(出典:独立行政法人経済産業研究所「中国経済新論」)
』
[減速する成長、そして増強される軍備]
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