2013年8月3日土曜日

日本の脅威:軍事力増強ではなく経済の衰退にある:「いずも」の進水

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●「ひゅうが」超える海自最大の護衛艦『いずも』進水式


●海上自衛隊最大の護衛艦"いずも"進水式


●「いずも」進水


サーチナニュース 2013/08/03(土) 10:09
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0803&f=politics_0803_003.shtml

日本がもたらす脅威、軍事力増強ではなく経済の衰退にある

  米誌「Foreign Policy:フォーリン・ポリシー」はこのほど、日本がもたらす真の脅威は軍事力の急成長ではなく、急激な経済衰退による悪影響だと論じた。
 中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。以下は同記事より。

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  安倍首相は2013年の国防費を前年比0.8%増としたが、過去10年間で国防費は5%も削減された。
 一方、中国の国防費はこの10年で270%拡大(韓国は45%増、台湾は14%増)、米ドルで換算すると、2000年の日本の国防費総額は中国の1.63倍だったが、2012年には中国の3分の1になった。
 事実、2000年以降における日本の株式保有量の世界市場での比重は37%下がり、地域における軍事費も52%減った。

  こうした状況が多かれ少なかれ日本が直面している苦しい状況を物語っている。
 過去10年間の軍事費の減少で、日本は収縮策を回避できなくなった。
 日本のような終身雇用制を伝統とし、リストラ・福利削減を嫌う国では、財政支出の負担削減のしわ寄せが軍事調達にいく。

  その結果、潜水艦、護衛艦、戦闘機などに対して日本の重点は新設備の調達ではなく、旧設備の維持に置かれる。
 しかし設備維持費の急上昇で、冷戦終結時、新規調達の45%だった設備維持費は現在150%に高騰。
 軍事設備調達の支出が削減され、他方面の支出もかなり高騰しているため、日本の軍事設備の更新は非常にペースが遅くなっている。
 事業の予算延期とコスト超過によって軍事力のレベルアップが先延ばしにされている。

  日本の軍事力が衰弱化するなか、安倍首相の攻撃的発言は米国の利益に影響する。
 米国の対外政策の主な悩みの種となっている。
 米国は日本を伝統的意義における同盟国として、地域の軍事衝突に巻き込まれるリスクを担っている。
 日本の軍事力衰弱は米国のアジアシフトに不利となり、米国は安倍首相の言動の勘定を払うはめになる。

  安倍首相は新たに獲得した衆参両院の優位な地位を利用して実質的な憲法改正を行おうとしている。
 日本経済と軍事力が挽回できなければ、軍事規制を緩和する憲法も「空洞の勝利」でしかない。
 安倍政権は経済刺激策を長期実行可能な経済改革プランに発展させ、この国を苦しめる経済衰退、公的債務、人口減少などの問題を解決しなければ、日本は過去の栄光を取り戻せないだろう。
 安倍首相の国防費拡大の試みを実現するには、これらの構造的問題を解決するしかない。


 日本側の危惧は「経済の衰退」にあるという。
 とすれば、中国側の危惧は「国内社会不安の暴発」にあるのかもしれない。
 問題はど「ちらのほうが危険度が高いか」ということになる。


レコードチャイナ 配信日時:2013年8月5日 8時40分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=75106&type=0

日中間の心理戦、軍事衝突に発展させるべきではない―露メディア

 2013年8月2日、露ラジオ局・ロシアの声は、「日中間の心理戦、軍事衝突に発展させるべきではない」と題した記事を掲載した。
 環球網が伝えた。

  ロシア科学アカデミー極東研究所のヴァレーリイ・キスタノフ研究員は、東シナ海のガス田開発をめぐり、
 日中両国の間で繰り広げられている「心理戦」を軍事紛争に発展させてはならないと主張した。

 日本の安倍首相は、中国側の一方的なガス田開発に断固とした対抗措置をとると警告している。
 7月に日本は中国に対し、この問題に関して抗議を申し入れたが、中国はこれを無視。
 中国の石油ガス企業は、両国の排他的経済水域(EEZ)内にある7つのガス田の開発に着手しようとしている。
 日中両国は、この水域での国境線画定に合意しておらず、経済水域は互いに重複したまま。
 さらに7つのガス田のうちの2つは、尖閣諸島(中国名;釣魚島)のすぐ近くにある。

 中国側の積極的姿勢に、日本側がどう出るかは今のところ不明だ
 キスタノフ研究員は
 「ここ最近、日中の経済的利益の衝突が深刻化しているのは明確な事実
と指摘。
 「日本と中国は、アフリカやラテンアメリカ、ロシアなど世界各地を舞台に、資源獲得競争を展開している」
と語った。

 さらに
 「日中間の矛盾は、あらゆる領域で拡大する。なぜなら日本は、中国が日本を抜いて世界第2位の経済大国になり、自分達が3位になったことが許せないからだ」
と主張。
 「中国は、あらゆる領域で地位確立を目指している。
 この方針は、日本の国益に抵触するため、今後も日中間の摩擦は高まる。
 尖閣諸島や東シナ海のガス田をめぐる『心理戦』も続く。
 最も重要なことは、それを軍事衝突に発展させないことだ。
 もっとも、当面は軍事衝突にはならないだろう。
 日中両国はそれが想像もできないほど深刻な結果をもたらすと理解している」
と述べた。



レコードチャイナ 配信日時:2013年8月7日 11時15分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=75232&type=0

海自の新型護衛艦「いずも」が進水
=「侵略軍の戦艦『出雲』と同名」と報じられる―中国メディア


●6日、海上自衛隊の22DDH型ヘリコプター搭載空母が横浜で進水した。排水量は2.7万トンで、2015年に就役する予定。「いずも」という艦名について、環球時報は「戦時中に中国へ派遣された侵略艦隊の旗艦と同名である」と報じている。写真は「出雲」。

 2013年8月6日、海上自衛隊の22DDH型ヘリコプター搭載空母が横浜で進水した。
 排水量は2.7万トンで、2015年に就役する予定。
 「いずも」という艦名について、環球時報は「戦時中に中国へ派遣された侵略艦隊の旗艦と同名である」と報じている。

 戦時中に使用された「出雲」は装甲巡洋艦の1番艦で、イギリスで建造された。
 第一次大戦、日露戦争にも参加し、天皇の座乗する御召艦となったこともある。

 「出雲」は1921~1931年までの間、6回連続で遠洋航海訓練艦を務め、1932年の上海事変の際に上海に派遣され、中国側の航空機や魚雷艇による攻撃にも耐えたことで名を知られるようになった。

 1943年末には日本国内に戻り、海軍で訓練艦として使用されていたが、1945年7月24日、米軍による呉軍港空襲で被弾し、沈没した。



レコードチャイナ 配信日時:2013年8月8日 9時55分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=74832&type=0

日本の新型護衛艦は『いずも』と命名、刺激したいのは米国?
それとも中国?―13億人のアンケート

 2013年8月6日、海上自衛隊で最大となる全長およそ250メートルのヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」の進水式が横浜で行われた。
 防衛省は「戦闘機の発着は想定していない」としており、専守防衛の立場から保有が許されないとされる「空母」には当たらないと説明しているが、中国の専門家などからは「どう見ても空母だ」との指摘が出ている。

 また、「いずも」という艦名について、中国メディアは「戦時中に中国へ派遣された侵略艦隊の旗艦と同名である」と報じている。
 戦時中に使用された「出雲」は、日中戦争の際に旗艦として上海に派遣され、のちに米軍による呉軍港空襲で被弾し沈没している。

 これを受けて中国紙・環球時報は7日、ネット上でアンケートを実施。
 「日本が新型の護衛艦に『いずも』と名付けたのは、米国を刺激したいからだと思いますか?
 それとも中国を刺激したいからだと思いますか?」
と問いかけ、7日午後4時の時点で4738件の回答を得た。
 それによると、10%に当たる456人が「米国」、90%に当たる4282人が「中国」と答えた。
 以下は回答欄に寄せられた具体的な意見。

●.「日本はもともとボス(米国)に見せたかったのだろう。
 中国なんて眼中にないさ。
 ボスに
 『今日はあなたが広島に原爆を投下した日です。今の私はあなたに劣らない科学技術があります。
 もっと権力をください。さもないと…』
と言いたいのだろう」

●.「日本にもし実力があれば、必ず米国に原爆の復讐をするはず。
 中国の存在は日本の軍拡の口実だ。
 だが、今の中国は日本鬼子の侵入を許さない。
 もし本当に戦争が避けられなければ、小日本は必ず滅亡する」
 (※日本鬼子、小日本:いずれも日本の蔑称)

●.「この件は日本を非難するようなものではない。
 100年前の船の名前にすぎないのだから。
 だったら中国は新しい空母に『滅日』号とでも名付ければいいじゃないか。
 そんな勇気はないだろうけど」

●.「中国は小日本に警戒を強めなければならない。
 悲惨な歴史を繰り返させてはならない」

●.「これは日本が侵略者の魂を捨てていないことの証明だ。
 中国を刺激していることに疑いの余地はない。
 核兵器こそ日本を再び投降させる武器だ」

●.「日本はきっと次の護衛艦に『吉野』と名付けるだろう。
 中国は海軍・空軍を整備しなければならない。
 日中両国は遅かれ早かれ一戦交えることになる」(※「吉野」は日清戦争時に活躍した日本海軍の防護巡洋艦)

●.「今度は中国に沈めてもらいたいのだろう」



サーチナニュース 2013/08/09(金) 08:26
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0809&f=national_0809_002.shtml

【中国ブログ】いずも進水で「わが国はまた侵略されるのか?」

  ヘリコプター搭載型護衛艦「いずも」の命名・進水式が6日に行われた。
 中国では同護衛艦について、「先進的な攻撃力を持つヘリコプター空母」とする論調が多く、「中国侵略戦争に参加した軍艦・出雲と同じ名前」として警戒を強めている。

  中国人ブロガーの藍蝶456(ハンドルネーム)さん「いずも」の進水に過敏に反応している1人だ。
 今回の進水式から日本の野心が見えたとし、自身のブログで
 「わが国はまた侵略されるのだろうかと心配だ」
と主張した。

  筆者は冒頭で、
 「われわれには日本より有利な点が何かあるだろうか?
と問いかけ、
 「少しもない!
と断言している。
 例えば、
●.日本は政治も安定し、
●.汚職はなく、
●.軍隊も律せられた良い社会がある。
 だが、それに比べて中国は
●.社会が不安定で、
●.人は汚職にまみれ、
●.空母を作るべき資金が汚職にまわり、飲食に使われている
と嘆いた。

  筆者が主張するほど日本が良い社会かどうかは別として、筆者は
 「わが国のメディアは良い点しか報道しないが、わが国の軍は自国民を守ることも、自国の領土を守ることもできないのだ」
という。
 その証拠として、尖閣諸島(中国名:釣魚島)や南シナ海などを挙げ、他国に「侵略されてきた」のに自国の軍は何もできなかったと主張した。

  さらに
 「今の中国は清王朝末期のような状態で、
 中国は強くて先進的な武器を持っていると思っている人が多いが、実際はそうではない
とし、メディアが良い点ばかり報道するのは、
 「西太后の側近が良いことばかり伝え悪いことは言わず、
 本当の状況を知らなかったのと同じだ
と焦りと不安な心境をのぞかせた。

  筆者は、中国メディアが主張するような“日本の軍国主義の復活”などではなく、自国の腐敗ぶりや国家としての不安定さに懸念を抱いているようで、
 「わが国の汚職や腐敗にまみれた官僚役人を信用できるだろうか?
と結んだ。

  中国共産党の指揮下にあるメディアは、中国を美化しつつ、“日本の脅威”を煽っているが、筆者の意見を見ていると、
 中国人の共産党政権に対する不信感も相当高まっている
ようだ。



WEDGE Infinity 2013年08月20日(Tue) 
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/3084?page=1
小谷哲男 (日本国際問題研究所研究員)

ヘリ空母「いずも」導入の意味
日本の安全保障戦略における重要性

  8月6日、海上自衛隊に最新鋭のヘリコプター搭載型護衛艦(DDH)の命名・進水式が行われ、「いずも」と名づけられた。
 艦首から艦尾まで通じる広大な全通甲板を持つ、さながら空母のような外観で、海上自衛隊史上最も大きい護衛艦となる。2015年3月に部隊に配属される予定だ。

 「いずも」型は「ひゅうが」型の改良版である。
 基準排水量は19500トン(「ひゅうが」型は13500トン)、全長248メートル、横幅38メートル、建造費は約1200億円である。
 同時に5機(「ひゅうが」型は4機)のヘリコプターが発着でき、ヘリの最大搭載数は14機(「ひゅうが」型は11機)である。
 航空機運用能力が大幅に向上しているのがわかる。
 加えて、洋上で他の艦船に燃料給油を行うこともできる。
 同型艦がもう1隻建造中だ。

■対潜ヘリ空母の導入は海上自衛隊の長年の夢

 「いずも」の進水式は国内外のメディアが注目する中で行われた。
 中国などでは、「いずも」を事実上の「空母」だと報道し、日中戦争に投入された帝国海軍の巡洋艦「出雲」と同じ名前であること取り上げて批判している。

 一方、海上自衛隊は戦闘機の運用は考慮されておらず、攻撃型空母には当たらないと説明している。
 海上自衛隊が保有するDDHの主要任務は対潜水艦作戦である。
 「いずも」は一義的には対潜ヘリ空母であり、不透明な経緯で中国が導入した攻撃型空母「遼寧」とは本質的に異なるものだ。

 対潜ヘリ空母の導入は海上自衛隊の長年の夢であった。 
 創設当初、掃海能力しか持たなかった海上自衛隊に求められたのは、商船の防衛と米軍の来援を確保するために必要な対潜水艦能力だった。
 しかし、潜水艦という「見えざる敵」を水上艦が探知し、識別し、撃沈することは容易なことではない。
 海上自衛隊は、対潜水艦作戦には艦載ヘリが不可欠であると判断し、1950年代末から「ハンターキラー」と呼ばれるヘリ空母を中核とする対潜掃討群の編成を検討するようになった。

 ところが、独自のヘリ空母の建造計画は100億円と見積もられたため、専守防衛にこだわる防衛庁内局や、防衛予算の増大に後ろ向きだった大蔵省によって拒否された。
 もっとも、香田洋二・元自衛艦隊司令官が指摘するように、この時代にヘリ空母を導入していれば、他に必要な装備の購入費を圧迫していただろうし、当時の対潜ヘリや音響センサーの水準では十分な対潜作戦が行えたかどうかも疑わしい。

 その結果、ヘリ空母構想は1度なりを潜めたが、ハンターキラーの編成があきらめられたわけではなかった。
 その後、海上自衛隊ではヘリを3機搭載できるDDHを中心とする8艦6機の部隊編成を行った。
 4個の対潜掃討群が完成したのは1981年である。構想から実に20年以上が過ぎていた。

■空母構想と引き替えのイージス護衛艦導入

 一方、70年代後半以降、日本政府がシーレーン防衛を重視するようになる中、対艦ミサイルを装備した旧ソ連の原子力潜水艦に対処するため、海上自衛隊は8艦8機体制への移行を決定した。
 加えて、100機のP-3C対潜哨戒機を導入し、このうち80機を広域哨戒に、20機を艦隊の直接支援に充てた。
 この総合的な対潜体制が、現在も海上自衛隊の部隊編成の根拠となっている。

 同時に、旧ソ連の爆撃機から発射される空対艦ミサイルが艦隊に与える脅威が増大したため、洋上における艦隊の防空(洋上防空)の検討が行われた。
 その中で、空母の導入とイージス護衛艦の導入の2つのオプションが検討された。

 イージス護衛艦を導入すれば、対艦ミサイルを迎撃できる可能性は飛躍的に高まる。
 たが、爆撃機が残存している限り艦隊への攻撃は続くことが予想される。
 このため、爆撃機そのものを迎撃するために短距離離陸・垂直着陸(STOVL)要撃戦闘機を運用できる空母が必要だという意見が海上自衛隊内で強まった。
 しかし、1988年に主要メディアによって海上自衛隊が空母の導入を検討していることが報じられると、これが政治問題となり、結局イージス護衛艦の導入のみが決定された。

 イージス護衛艦の導入は、空母構想と引き替えではあったが、日米同盟の強化という意味では重要だった。
 海上自衛隊のハンターキラーは事実上、アメリカ第七艦隊の対潜部隊の位置づけであり、特に空母打撃群の護衛という重要な任務を帯びている。
 海上自衛隊が米空母を守れば、米空母が敵部隊への打撃力を維持できるからだ。

 このような強力な同盟関係を築く日米に対抗して、旧ソ連も膨大な軍事費を使って軍拡を推し進めたが、それが体制崩壊の原因の1つとなった。
 海上自衛隊の対潜作戦構想、そのための部隊編成、そして日米同盟関係の強化が、冷戦の終結に貢献したことはあまり知られていない。
 岡崎久彦氏は、これを「知られざるサクセスストーリー」と呼んでいる。

 海上自衛隊の空母構想は冷戦中に日の目を見ることはなかった。
 しかし、冷戦後に多様な任務が海上自衛隊に求められるようになり、ヘリによる揚陸作戦が検討される中で、安全性や効率性から全通甲板を持つ輸送艦「おおすみ」が1993年度に予算計上された。
 海上自衛隊創設から40年近くたって、ようやく全通甲板が採用されたのである。

 そして、2001年の中期防衛力整備計画策定に当たって、次世代DDHが検討され、3機の対潜ヘリと1機の掃海・輸送ヘリを同時に運用できる全通甲板を持ち、飛行甲板の下に巨大な格納庫を持つ空母型のデザインが採用されることになった。
 こうして、「ひゅうが」の建造が2004年度に予算計上された。

■「いずも」型は統合運用の要になり得る

 「ひゅうが」型DDHは、従来のヘリ搭載護衛艦からヘリ空母への過渡期的な性格を持っている。
 まず、艦隊に対する指揮統制能力が強化され、艦隊司令が搭乗する旗艦としての機能を持っている。
 多種多様なアンテナを備え、通信能力も強化されている。
 また、防空ミサイルや対潜ミサイル、魚雷など、強力な戦闘能力も備えている。

 一方、自衛隊の統合運用体制への移行を反映し、「ひゅうが」型は統合任務司令部を置くための多目的コンパートメントを備えている。
 このコンパートメントは、人道支援・災害救援任務では軍民両用の司令部スペースともなる。

 「いずも」型は、よりヘリ空母としての性格が重視されている。
 最低限の自衛装備しか装備されておらず、航空機運用プラットホームとして艦隊の中核に位置づけられている。
 つまり、戦闘指向のプラットホームではなく、より多目的艦船としての性格が強調されているのだ。

 特に、「いずも」型は今後、自衛隊が目指す統合運用の要になり得る。
 そして、南西諸島を守るための海兵隊的機能を支える柱にもなれる。
 「いずも」型を中核とする艦隊は、対潜任務だけでなく、水陸両用任務も実施可能な「両用即応グループ」を目指すべきである。
 こうすれば、離島防衛だけでなく、大規模災害における救援任務でもその能力を発揮できるだろう。

 今年6月にアメリカで行われた統合訓練「ドーン・ブリッツ2013」では、米軍の輸送機オスプレイが「ひゅうが」に着艦し、翼を折りたたんだ形で格納庫に搭載された。
 「いずも」型にもオスプレイは搭載可能と考えられるし、実際に後部エレベーターは「デッキサイド式」と呼ばれるものになっていて、大型機も昇降可能だ。
 「いずも」型でオスプレイや大型ヘリを運用すれば、自衛隊の水陸両用能力は大幅に向上が期待できる。

■限られた予算と資源の中で

 最後に、周辺の安全保障環境が大幅に改善しないのであれば、将来的にSTOVL戦闘機の運用も検討されることになるだろう。
 STOVL型のF-35Bの運用については、同機の開発が遅れているためスペックもコストも知るすべがなく、判断することはできない。
 だが、少なくともSTOVL導入と運用体制の検討は続けられるべきだ。

 もちろん、正面から軽空母を持つべきだという意見もあろう。
 しかし、限られた予算と資源の中で最適な作戦構想を立て、部隊を編成し、それを日米同盟体制の中に位置づけることが日本の安全保障戦略にとって何よりも重要である。
 だからこそ、「ひゅうが」型2隻と「いずも」型2隻を使いこなし、これらを中核とする運用体制を確立することがまず検討されるべきである。




減速する成長、そして増強される軍備


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