2013年7月30日火曜日

「チャイナリスク」:地方政府が「破綻する」という「中国の悪夢」

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●7月25日、中国経済を急成長から脱皮させようと試みる政府指導部にとって悪夢のシナリオは、地方政府が自らの債務の重みで崩壊することだ。写真は2011年、上海で撮影(2013年 ロイター/Carlos Barria)


ロイター 2013年 07月 29日 14:38 JST
http://jp.reuters.com/article/jp_forum/idJPTYE96S04I20130729
By 斉藤洋二=ネクスト経済研究所代表

コラム:夏枯れ相場を揺るがす「チャイナリスク」

 1990年代後半のアジア通貨危機、そしてロシア財政危機を乗り越え、新興国は成長を加速させ世界経済をけん引してきた。
 しかし、中国とインドが2ケタ台の成長を示した2010年をピークに、減速感が強まっている。

 国際通貨基金(IMF)は9日、中国、インド、そして新興国・途上国の2013年成長見通しを、それぞれ7.8%、5.6%、5.0%へと下方修正した。
 米連邦準備理事会(FRB)による量的緩和(QE)縮小を見越した資金引き揚げ懸念などを背景に株安や通貨安が進み、新興国情勢は世界経済のポジティブ要因からネガティブ要因へと一変しつつある。

 特に、世界第2位の国内総生産(GDP)を誇る中国では、09年の「4兆元投資」がインフラ・不動産投資を喚起し景気を浮揚させた一方で、急速な信用拡大や地方政府の巨額不良債権が新たな潜在リスクとして浮かび上がってきた。

6 月後半には、上海の金融市場で銀行間取引金利(翌日物)が一時13%台まで急上昇。
 上海総合株価指数は2000ポイントの大台を割り込むなど4年ぶりの安値水準へと下落した。
 中国人民銀行(中央銀行)の資金供給により四半期末の危機はひとまず回避されたが、同国の抱える根本的問題は何ら解決されておらず、今後も潜航した「チャイナリスク」が突如再浮上し、世界の金融市場を揺さぶるかもしれない。

■<中国版サブプライムローン問題>

 中国経済は土地・労働・資本という三大生産要素のうち、
 特に労働と資本において喫緊の課題を抱えている。

①.そのひとつは労働生産性が低い点だ。
 13億人の人口を抱えつつも農村部から供給されてきた労働者(農民工)は底をつき、労働力不足も深刻化している。

②.もうひとつの問題は資本効率の悪さだ。
 実体経済とかけ離れたマネーが膨張し国内に溢れているにもかかわらず、中小金融機関を中心に流動性不足が生じている。
 マネーサプライM2伸び率(前年比)は、5月は15.8%、6月は人民銀行による抑制効果により圧縮されたものの、依然14.0%と通年目標の13%を上回っている。

 この背景には、「通常の銀行システム外の事業体および活動に関連する信用仲介」と定義されるシャドーバンキング(影の銀行)の存在がある。

 これは預貸金利や銀行融資総量に関する規制の存在など硬直化した金融システムに起因しており、同時に個人や企業の資金が地方の不動産開発に流れ込み信用バブルを生じさせる温床ともなっている。
 金融当局によるこの問題への対処が6月の金融市場の混乱を招いた要因となっており、それはまた金融システム改革の必要性が問われている背景でもある。

 「影の銀行」といえば、サブプライムローン問題に端を発する未曽有の金融危機を招いた米国のモーゲージブローカーやノンバンク、ヘッジファンドや投資銀行などがその代表例だ。

 その仕組みについては、住宅貸付債券が分割され、債務担保証券(CDO)などへと再証券化が図られ、レバレッジを高めるなど金融工学が駆使された。
 結果として、住宅市場の崩壊によりリスクが表面化し、その複雑さゆえに金融当局の把握を超えた実体が未曽有の金融収縮をもたらしたことは記憶に新しい。

 一方、中国における「影の銀行」は、仕組み的には、理財商品(高利回りの金融商品)で集められた資金や企業間の余剰資金の投融資である。

 「中国版サブプライムローン問題」との捉え方があるが、米国版と比較すれば案外単純なスキームであること(デリバティブを駆使した金融イノベーションというよりも、従来の融資業務に修正を加えた程度にすぎない)、そして投資家が主に個人であり、リスク総量が個人のバランスシートの範囲内に止まり限定的だと見込まれることが大きな相違点といえよう。
 一方で、金融当局の管理を超えたところで行われており、その実態が把握されていない点や、中国においても不動産市場の下落に連鎖する形で問題が拡大すると予想される点では類似しているといえる。

 理財商品の規模については最近、8.2兆元(約130兆円)と中国当局により公表され、さらに17日にはIMFが銀行融資以外の貸出しをGDPの55%にあたる約460兆円との推定値を発表した。

 言い換えれば、「影の銀行」の正確な規模や実体は政府もいまだ十分に把握しきれていない。
 また、商品性においても、債権・債務関係や投資家保護があいまいであり、デフォルト発生時には、深刻な信用収縮と財政負担、さらには市場の混乱がもたらされるのではないかと危惧される

■<円買い要因としてのチャイナリスク>

 こうした中、中国政府はどう対処していくのだろうか。
 李克強首相が「2020年までにGDPと国民1人当たりの所得を2010年の倍にする」との目標を掲げ、新体制が船出してから、早くも4か月が経過した
 。構造改革による成長を目指す経済政策は、「リーコノミクス」ともいわれている。

 早速、先の政権が放置してきた「影の銀行」に対して、国務院の指導下にある人民銀行による流動性供給抑制政策を行うなど、改革の動きを示した。
 既得権益層の反発をある程度覚悟して構造改革を進め、成長目標の達成を目指していく過程で、アクセルとブレーキ、アメとムチをいかに使い分けていくのか、その手腕が注目される。

 足元の経済状況をみると、4―6月期の実質GDP伸び率は前年同期比7.5%と2四半期連続で鈍化した。
 なかでも6月の輸出額が前年同月比3.1%減と1年5カ月ぶりにマイナスになるなど、外需の不振が目立つ。

 さらに内需についても住宅、自動車を除き、習近平指導部による「倹約令」により消費が伸び悩んでいる。
 住宅バブルの懸念や「影の銀行」問題に対処するために過剰投資の抑制が優先課題であり、金融緩和による景気刺激策を安易に打ち出すことはできない。
 今後も景気の停滞感が続くことになるだろう。

 このような環境下、規制が多く市場メカニズムが機能しない金融システムの改革が、リーコノミクスの主要な政策目標となるはずだ。
 具体的には
1).高度成長を支えるために低く抑えられてきた預貸金利の自由化を進めること、
2).新規参入を可能にすること、
3).資本市場の整備を進めること、
4).「影の銀行」の解決を図ること
だろう。

 これらの改革がうまく行けば、中国の金融システムは、時価総額で世界最大の銀行である中国工商銀行を筆頭とする4大商業銀行による寡占状態から脱却し、自由競争に基づく金融システムへの移行を果たすことができるはずだ。
 しかし、その改革は「影の銀行」を直撃し、バブル崩壊というハードランディングの可能性を伴う「両刃の剣」であることを認識しておく必要があるだろう。

 中国の金融システムリスクは依然、収束したわけではない。
 バブル崩壊による金融収縮発生の可能性、そしてその結果として流動性確保のために1.3兆ドルを超える保有米国債の売却に及んだ時の世界の金融市場へのインパクトは計り知れない。

 経常収支の不均衡に対し、海外から流入する短期資金への依存度を高めたことに端を発した97年のアジア通貨危機当時と比較すれば、新興国の外貨準備は増加し、さらに各国間でスワップ協定が結ばれ、国際金融システムは強固となっている。
 しかし、中国経済の巨大化とアジア諸国との連動性の高まりを考えれば、
 中国発危機の可能性を完全に否定することはできない。

 今後夏枯れる市場において、米国金融政策の行方がドル買い材料として注目を集めるとしても、円買い要因としての「チャイナリスク」にはくれぐれも注意が必要だ。

*斉藤洋二氏は、ネクスト経済研究所代表。1974年、一橋大学経済学部卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)入行。為替業務に従事。88年、日本生命保険に入社し、為替・債券・株式など国内・国際投資を担当、フランス現地法人社長に。対外的には、公益財団法人国際金融情報センターで経済調査・ODA業務に従事し、財務省関税・外国為替等審議会委員を歴任。2011年10月より現職。

*本稿は、ロイター日本語ニュースサイトの外国為替フォーラムに掲載されたものです。(here)

*本稿は、筆者の個人的見解に基づいています。

*このドキュメントにおけるニュース、取引価格、データ及びその他の情報などのコンテンツはあくまでも利用者の個人使用のみのためにコラムニストによって提供されているものであって、商用目的のために提供されているものではありません。このドキュメントの当コンテンツは、投資活動を勧誘又は誘引するものではなく、また当コンテンツを取引又は売買を行う際の意思決定の目的で使用することは適切ではありません。当コンテンツは投資助言となる投資、税金、法律等のいかなる助言も提供せず、また、特定の金融の個別銘柄、金融投資あるいは金融商品に関するいかなる勧告もしません。このドキュメントの使用は、資格のある投資専門家の投資助言に取って代わるものではありません。ロイターはコンテンツの信頼性を確保するよう合理的な努力をしていますが、コラムニストによって提供されたいかなる見解又は意見は当該コラムニスト自身の見解や分析であって、ロイターの見解、分析ではありません。



東洋経済online ロイター 2013年07月26日

中国の地方政府が「破綻する」という悪夢
代表格は江蘇省か

[無錫市(中国) 25日 ロイター] -
 中国経済を急成長から脱皮させようと試みる政府指導部にとって悪夢のシナリオは、地方政府が自らの債務の重みで崩壊することだ。
 最も多額の債務を抱える江蘇省がその代表格といえる。

 公式統計によると、江蘇省の省、市、郡政府は銀行や投資信託、起債を通じて借り入れを膨らませており、債務は他の地方投資をはるかに上回っている。

 造船や太陽光パネル製造など、同省の主要産業の多くは過剰な生産能力を抱え、利益は低迷して税収は伸び悩んでいる。
 中央政府が経済の投資依存を減らし、サービス業・消費主導型経済への移行を図っていることにより、江蘇省は打撃を被りやすい状態にある。

 政府は改革の一環として、多くの地方政府にとって主な資金源である借り入れと土地売却の取り締まりを命じる一方で、産業の縮小に伴うコストを地方政府自らが吸収することを期待している。
 江蘇省のような省にとっては八方ふさがりの状況だ。

 スタンダード・チャータード、フィッチ、クレディ・スイスの推計によると、
 中国の地方政府の債務は国内総生産(GDP)の15─36%相当、
 額にして最大3兆ドルに上る。

ドイツ銀行のグレーターチャイナ担当チーフエコノミスト、ジュン・マー氏は「中国地方政府の債務は、うまく管理しないとシステミックかつマクロ経済的リスクを同国にもたらし得る。これにはブラジルの先例があり、1989年、93年、99年の危機は州政府の過剰債務が根本原因だった」と話す。

中国地方政府の債務総額について公的な情報は乏しいが、格付け会社やシンクタンクの情報を総合すると、江蘇省の債務リスクは全31省の中でも突出している可能性がある。

江蘇省が中国経済に大きなリスクをもたらしかねないことは明らかだ。同省の域内総生産(GDP)は20カ国・地域(G20)メンバーであるトルコを超えて世界の上位20カ国に食い込む規模で、人口は7900万人と大半の欧州諸国を上回る。

■ストレスの兆候

江蘇省政府の財政に重圧が加わっているさなかで、省内主要企業の中には経営が行き詰まり、当局に救済を求めるところが出てきている。中国最大の民間造船会社、中国熔盛重工集団<1101 .hk="">は今月、地方政府に財政支援を要請した。

中国最大の太陽光パネル・メーカーの子会社である無錫サンテックパワーはことし、破産申請を行った。複数の関係筋によると、同社は江蘇省無錫市の政府に財政支援を求める意向もある。

ストレスが高まっている兆候は他にもある。中国メディアによると、経営難に陥った一部の地方企業は個々の職員に最大60万元(9万7800ドル)の資金調達ノルマを貸し、達成できない場合には勤務を許さないため、多くの職員が親戚や友人に金の工面を頼んでいるという。

地方政府にとっての主な資金調達手段は、借り入れか不動産デベロッパーへの土地売却しかない。地方政府は地元の経済開発を担っているが、税収の4分の3は中央政府に吸い上げられる。

しかし無錫市のある村の住人によると、市政府はデベロッパーに売るためとして住宅を破壊して更地にしているが、家主に収用代金を支払うための資金が不足している。「私の父は600平方メートルの土地を持っていたが170平方メートルを失った。市政府は父に『あなたは住宅を多く所有し過ぎている』と言って支払いを拒んだ」という。

中央政府は地方政府に対する銀行融資を絞めつけているため、江蘇省はシャドー・バンキング(影の銀行)からの借り入れを急増させている。

データ提供会社ユーズ・トラストによると、2012年に中国で販売された投資信託のうち、江蘇省内の自治体が発行したものは30%を占めた。 同業のウィンド・インフォメーションによると、12年の同省の債券発行額は3430億元で、中国で最も財政が豊かな広東省の3倍に上る。

無錫市だけでも投資信託の発行により92億元を調達し、銀行融資金利の6%を大幅に上回る10%近くのリターンを投資家に与えた。この資金の一部は不動産デベロッパーに土地を売ったり工業団地を建設するために村を更地にする資金に回された。

増大する中国の不良債権において、江蘇省が大きな割合を占めているのも不思議ではないだろう。中国メディアが先月引用した中国人民銀行(中央銀行)幹部の発言によると、2013年1─5月の不良債権増加分の40%を江蘇省が占めた。

中銀や監督当局に政策助言を行っているトリプルTコンサルテイングのマネジングディレクター、ショーン・キーン氏は「モラルハザードの有無を点検するため、ある程度管理されたデフォルト(債務不履行)を起こせば市場は歓迎するだろうが、中国政府にその態勢が整っているかどうかはおぼつかない」と話した。

(Koh Gui Qing記者)
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 最新の中国の外貨準備高を調べてみると下記の記事によりは3兆4400億ドルである。
 ということは、地方政府の債務を最大に見積もったときの金額とほぼ同じになる。
 「外貨準備高=地方政府債務」
という等式が成り立つ。
 つまり、中央政府が肩代わりしたら、中国の外貨準備高はなくなってしまうという計算になる。
 利益と借金で相殺され、手持ち「ゼロ」になるということである。


産経ニュース 2013.4.11 19:26
http://sankei.jp.msn.com/economy/news/130411/fnc13041119300018-n1.htm

中国の外貨準備高は343兆円と過去最高 3月末

 中国人民銀行(中央銀行)が11日発表した
 「3月末の外貨準備高は3兆4400億ドル(約343兆円)
と、2012年末より約1300億ドル増え、過去最高を更新した。
 世界最大で、日本の外貨準備の2・7倍、12年のドイツの国内総生産(GDP)に匹敵する規模。


 実際にはどのくらいあるかはわからない。
 おそらく半分を下回ることはないとすると「1.5兆ドル」は確実のあるとみていいだろう。
 ということは、外貨準備高の半分が消えることになる。
 もし、債務を置きっぱなしにすると独裁国家にあってはどうなるのだろう。
 何しろ、
 人類史上始めてのケースが目白押しの中国だから、
 誰にも確実なことが言えない
というのが現実なのだろう。


ロイター 2013年 07月 29日 15:27 JST
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE96S04U20130729

焦点:中国指導部、今秋の三中全会までは改革を小出しか

[北京 29日 ロイター] -
  中国の最近の政策をみると、政府は経済面で
 比較的痛みの伴わない改革
を推し進めようとしているようだ。
 李克強首相は容易な改革を点滴のように小出しに打ち出す一方、
 中国経済が変調をきたすことへの不安から、より大胆な改革には尻込みするだろう。

 主要な政府系シンクタンクのアナリストらは、中国経済を投資主導・信用依存型から脱却させ、消費やイノベーションを主体としたものに転換させようとする政府の計画は疑いようもないと指摘する。

 だが、中国指導部は自分たちが綱渡りをしていると気付いており、今年に入ってからの予想を下回る景気が慎重な対応の必要性を示している。
 改革は将来の成長を保証してくれるかもしれないが、今の段階で頑強に改革を推し進めれば、景気の波乱を呼び起こしかねない。

 全国政治協商会議委員も務める中央財経大学の賀強教授は
 「政府は経済の再編を進めつつ、成長のボトムラインも守らなければならない。
 バランスを取るのは非常に難しい」
と指摘。
 「経済の再編は一夜で達成することはできず、革命ではなく、漸進的な改革を進めるべきだ」
と語る。

 習近平国家主席と李首相の体制が固まった3月以降、中国指導部は改革の必要性をことあるごとに強調している。
 国営新華社は先週、「あらゆる側面で改革を推進する」必要性について語った習主席の発言を報道。
 一方で、主席は「勇断と着実な歩み」および「改革、発展と安定」の間を慎重に進む必要があるとも指摘した。

 景気減速が懸念される中、中国政府はここ数週間にいくつかの小さな改革を打ち出した。
 中国国務院(内閣に相当)は先週、600万社超の小規模企業を対象に、税を廃止すると発表。
 輸出業者向けに一段の支援措置を実施していく方針を決定したほか、鉄道投資も加速するとした。

 これは金利の完全自由化といった抜本改革が当面実施されないことを意味していると言えそうだ。

 ただ、10月に開かれる予定の中国共産党第18期中央委員会第三回全体会議(三中全会)では、抜本改革も議題に上るかもしれない。
 三中全会では向こう10年間の改革プランを打ち出し、政治改革も幾分盛り込まれる可能性もある。

 それまで、当局はたやすい改革を打ち出すにとどまりそうだ。

 中国人民銀行(中央銀行)はこのほど、銀行の貸出金利の下限を撤廃する方針を示した。
 預金金利の上限撤廃に向けた前振れとみられ、歓迎されたものの、人民銀行は預金金利の上限撤廃には預金保険制度などが必要だと指摘することも忘れなかった。

 政府系シンクタンク、国家情報センターのエコノミスト、Liang Youcai氏は
 「借り入れコストの上昇につながるため、今あえて預金金利を自由化することはないだろう」
と話す。

 中国指導部はこれまでに、改革を進めるためには景気の減速が必要だと指摘しており、今年の経済成長率目標を8.0%から7.5%に引き下げた。

 世界的な金融危機を受けた景気刺激策で大型インフラプロジェクトは既に実施済み。
 同様の景気刺激策を打ち出すのは難しい。

 そうした中でも政府は、低所得層向け住宅や都市化のためのインフラ整備、高速鉄道といった厳選分野における支出拡大計画を明らかにした。

 アナリストらは、消費者向け補助金の拡大や、公立病院や老人ホーム向けの支出拡大など、政府が一段と成長を後押しする余地はあると指摘する。

■<改革の必要性では意見一致>

 習主席が主宰する三中全会への注目が高まっている。

 政府系シンクタンク、中国社会科学院のエコノミスト、張斌氏は「改革の方向性は明確だ。
 改革の必要性をめぐってはわれわれに意見の違いはない。
 だが、一番の問題はどのように実行するかだ」と指摘。
 「今のところわれわれが目にしているのは、改革におけるランダムなパターン、もしくは限定的な抵抗に直面する改革だ」
と語る。

 政府の優先課題は、
★.農民の土地所有権を緩和する土地改革であり、
★.戸籍制度の改革だ。
 こうした改革により、政府の都市化政策を進めることが容易になる。

 財政・税制改革も避けては通れない。
 地方政府は土地の売却や借り入れで歳入をまかなっており、地方債務が膨張する要因などとなっている。

 一方、新興国市場における資本の流れが不安定となる中、中国政府は完全な人民元の兌換(だかん)性実現は急がない見通しだ。

 アナリストらによると、中国政府は健全な成長を維持しつつ、成長エンジンの転換を進めるバランスのとれた政策を引き続き進めることになりそうだ。

( 記者;翻訳 川上健一;編集 山川薫)



ウオールストリートジャーナル     2013年 7月 31日 11:33 JST
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887323670304578638804114560098.html
 By     RICHARD SILK

中国の公的債務はどれほど多いのか?


●中国政府の債務の対GDP比予測(左)と公的債務の対GDP比

 中国は多額の国家債務を抱えている。
 しかし中南海(中国共産党の本部や要人の官邸がある北京の隔離された地区)でさえ、どの程度に多いのか実際には誰も知らない。

 北京の中央政府が発行したソブリン債(国債)は昨年末時点で8兆4000億人民元(約1兆4000億ドル、約140兆円)で、国内総生産(GDP)比で16%にとどまっており、西側の基準でみれば驚くほど低い比率だ。
 しかし国家は責任を地方政府や各省庁に押しつけてバランスシートを浄化しており、地方政府や各省庁はその後、コストをカバーするため借り入れている。
 このため、真の公共債務額を合計するのは複雑な仕事だ。

 中国指導部は、借り入れが管理不能になっているかもしれないと懸念し、あらゆる公的借入に関する包括的な調査を国務院の審計署(NAO=会計検査院に相当)に命じた。
 それはこれまで民間部門のエコノミストが推量していたものだ。

 既に公表されている推定をみると、対GDP比の債務比率は
 国際通貨基金(IMF)の「46%」から、
 スタンダード・チャータード銀行(スタンチャート)の「78%」まで
さまざまだ。
  ドラゴノミクスの対GDP比債務比率の推定は「60%」で、
各種機関の予想レンジの中間だ。

 中国は、1997年のアジア金融危機によって壊滅的な打撃を受けた韓国やインドネシアなど近隣諸国よりも大きな利点を持っている。
 それは外国通貨による債務、あるいは外国人に保有されている債務がほとんどないことだ。
 北京に本拠を置く調査会社ドラゴノミクスのアンドリュー・バトソン氏は、これはギリシャ型の公的債務危機が中国ではほとんど想像できないことを意味すると言う。
 その代わり、政府がインフレ加速を容認して、債務(国債)価値を目減りさせるか、あるいは金融システムを高度に規制して弱い借り手を無期限にテコ入れするといった誘惑に駆られるリスクが存在する。
 その結果は経済全体の効率性を低下させ、スタグネーション(景気停滞)に向かわせかねない。

 スタンチャートは、中国ではソブリン債8兆人民元以外に、地方政府の債務が20兆人民元近くに達しているかもしれない、と推定している。
 中国の大半の省、都市、県は建前としては借り入れを認められていない。
 だが、リーマン・ブラザーズ破たん後2年間で中央政府は地方自治体の借り入れの動きに目をつぶった。
 これら地方自治体は、主として壮大なインフラ浪費の返済のため、投資会社を設立して自身のために融資を調達したのだ。
 この結果、中国は危機を乗り切ったが、都市など地方自治体には巨額の債務が残されてしまった。

 前回のNAOの監査では、2010年末時点の地方政府債務は10兆7000億人民元となっており、最近ではそれから急増しているとアナリストたちはみている。

 そして鉄道省の債務がある。
 同省は中国の鉄道網のコストを直接賄っている。
 スタンチャートは、この債務は3兆1000億人民元と推定している。
 この債務は3月に同省から分離・新設された鉄道運行会社・中国鉄路総公司に受け継がれた。
 しかし政府は、依然としてこの債務を政府が保証していると述べている。

 また、中国開発銀行やその他の政策銀行が発行した債務7兆6000億人民元もある。
 その主目的は政府の目標実現だ。
 アナリストたちは、政策銀行の債務を政府のバランスシートに加えるべきかどうかで意見が一致していない。
 その一部は他の政府機関に貸し出され、二重計算が問題になる可能性があるためだ。
 スタンチャートはそれを含めているのに対し、IMFは除外している。
 鉄道債務も同様だ。

 政府は、10年以上前の前回の不良債務危機に伴う混乱の一掃を依然として完了していない。
 当時、政府は銀行救済に乗り出し、銀行の不良債権を切り離して、特別に創設された資産管理会社(AMC)にそれを割り当てた。
 スタンチャートは、こうしたAMCは約1兆9000億人民元の債務を依然抱えていると推定している。

 こうしたすべての債務状況の裏面もある。
 つまり、中国は多大な国家債務を抱えているものの、同時に自らの救済のため売却処分できる膨大な資産を持っているという事実だ。
 地方政府は長年、土地入札で返済している。
 また土地が枯渇すれば、何万もの公営企業があり、理論的には民営化できる。
 これら企業が自らの債務にあまりに圧迫されなければ民営化できるということだ。

 再び債務面をみよう。
 ドイツ銀行と中国銀行の共同調査によると、全国の年金基金は18兆3000億人民元程度の資金拠出不足となっている。
 それだけの資金を調達するには、少数の地方公営企業を売却する以上の努力が必要だろう。


 ちなみに各国の外貨準備高は下記になる。


朝鮮日報 記事入力 : 2013/08/05 09:32
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2013/08/05/2013080500863.html

7月末の外貨準備高 過去最高3297億ドル=韓国

【ソウル聯合ニュース】韓国銀行(中央銀行)が5日に発表した7月末の外貨準備高は3297億1000万ドル(約32兆6050億円)となり、前月比で32億7000万ドル増加した。
 今年1月(3289億1000万ドル)に記録した過去最高を再び更新した。

 外貨準備高は4月に3288億ドル、5月に3281億ドル、6月に3264億4000万ドルと前月比で減少を続けたが、4カ月ぶりに増加に転じた。

 韓国銀行は
 「外貨資産の運用収益に加え、7月にユーロがドルに対し上昇したため、ユーロ建て資産のドル換算額が増加した」
と分析した。

 項目別では有価証券が3013億4000万ドルで全体の91.4%を占めた。
 次いで預金が175億5000万ドル(5.3%)、金の保有量が47億9000万ドル(1.5%)、国際通貨基金(IMF)特別引き出し権(SDR)が34億2000万ドル(1.0%)だった。
 IMFリザーブポジションは26億ドル(0.8%)となった。

 6月末の韓国の外貨準備高は世界7番目の規模で、順位は前月と変わらなかった。
①.1位は中国(3兆4967億ドル)で、
②.日本(1兆2387億ドル)、
③.ロシア(5138億ドル)、
④.スイス(5081億ドル)、
⑤.台湾(4066億ドル)、
⑥.ブラジル(3694億ドル)
⑦.韓国(3297億ドル)
と続いた。

聯合ニュース




減速する成長、そして増強される軍備


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