2013年7月18日木曜日

中国国家発展改革委員会:中国経済を牛耳る組織、別名「ミニ国務院」

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ロイター 2013年 07月 16日 15:54 JS
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTYE96F05420130716

焦点:中国国家発展改革委の支配に疑問も、消費主導経済への移行で

[上海 16日 ロイター] -
 中国では今月、
●.粉ミルク
●.医薬品
という2つの分野で価格設定に関する問題で政府が調査を進めていることが発表された。
 その背後には、消費主導経済への移行を進める同国において、
 自らの存在意義を維持するために苦闘する国家発展改革委員会(NDRC)という権力機関の姿がちらつく。

 調査では、仏食品大手ダノン, スイス食品大手ネスレ と英製薬大手グラクソ・スミスクラインといった大手外資系企業が対象になった。
 ただ、この調査の奥には、別の何かがうごめいているとみられる。
 それは今後数年間、世界第2位の経済大国が進むべき政策の方向性だ。

 NDRCは産業や大規模投資の許認可から企業の買収・合併のほか、酒類やガソリンに至るまであらゆる商品の価格設定に口を出す中国の巨大な権力機関だ。
 その圧倒的な権力の大きさから「ミニ国務院と呼ばれることも多い。

 しかし、ここ数カ月間、習近平国家主席や李克強首相が中国経済を政府中心の投資主導型から個人消費主導モデルに転換させようとする動きをみせる中で、NDRCの役割について公然と疑問を投げかける声が、研究者ばかりでなく政府高官の間からさえも聞かれ始めた。

 NDRCはかねてから価格設定を監視する役割を負っていたが、粉ミルクと医薬品をめぐる今回の過剰ともいえる調査で国民の注目を集めた。
 これは規制機関としての有用性を証明しようとする姿勢の表れかもしれない。
 「根本的な点として、NDRCは自らが何かに貢献していることを示そうと躍起になっている」と、中国経済に詳しいカリフォルニア大サンディエゴ校のバリー・ノートン教授は指摘する。

<優先順位の変更>

 過去10年間に急速な発展を遂げた中国経済の政策立案を担うNDRCが自らの地位をあらためてテコ入れする必要があると感じているという事実は、
 中国の政策当局者の間で沸き起こっている論争のすさまじさを物語る。
 新指導部は実際に主要な分野においてNDRCの既存の支配力を疑問視することで、経済政策上の優先順位を変えようとしている。

 NDRCの支配が揺らぎかねない証拠の一つは、3月の全人代で李首相が党改革の主要な項目として、NDRCの主要な役割である許認可権の縮小を打ち出したことだ。

 NDRCは否定するが、関係筋がロイターに明らかにしたところによると、李首相は5月にもNDRCが提案した総額40兆元(約6兆5000億ドル)規模の都市化計画案を否決した。

 GKドラゴノミクスのマネジングディレクター、アーサー・クローバー氏によると、習主席と李首相は都市化推進の方針を変えてはいないが、「建設プロジェクトを縮小」し、出稼ぎ労働者が「もっと成熟した都市生活を送れる」ようにする政策姿勢を強めているという。

 NDRCの許認可手続きに代表される官僚的な形式主義を排することは、経済における国家の役割縮小に向けた新指導部の別の手法でもある。

 学者の間でも組織としてのNDRCに懸念が出ている。
 1952年に国家計画委員会として設立されたNDRCは、現在でこそ、ほぼ資本主義化された政策立案を行っているとはいえ、
 その存在は中国の過去の統制経済に深く根ざしているからだ。

 復旦大学経済学部のシ・レイ教授によると、NDRCの許認可権に基づく投資を通じて果たして資産の効率的な配分が行われているかどうかについても議論が及んでいるという。

 これだけ多くの権限が一つの組織に集中すると汚職の懸念も生まれる。
 NDRCの元副主任である劉鉄男氏は、銀行詐欺をほう助した見返りに賄賂を受け取ったとして捜査を受けている。

<消費者のための規制機関になれるか疑問も>

 NDRCはこうした論争には慣れている
 過去にもその強大な権力に疑問符が付きつけられ、そのたびに試練を乗り越えてむしろ権限を拡大してきた。

 事実、今月の医薬品と粉ミルクの価格設定をめぐる調査は、NDRCが規制機関として役割を強化すべきだとの新たな機運に自らを順応させている兆候と見ることもできる。

 2008年の独占禁止法の施行規則が11年に実施されて以降、NDRCはとりわけ企業などの価格設定慣行に関する調査を強化してきた。
 3月には国内の酒類メーカー2社が最低販売価格を支持するなどしていたとして4億4900万元の罰金を科したほか、顧客を欺き価格規制に違反したとして不動産会社8社に対して1000万元の支払いを命じた。
 1月には海外の液晶パネルメーカー6社が価格カルテルで3億5300万元の罰金を科されている。

 経済を輸出と投資依存から国内消費に依存する経済にシフトしようとする中国政府の努力に対して、価格引き下げは支援材料となる。
 医薬品と粉ミルクはどちらも価格が高すぎると一般にみられていた。

 「値下げが行われるのは毎回、キャンペーン活動が主要な目的だ。
 NDRCは値下げ幅がいかに大きくなるかを強調するが、実際にはわずかにしか価格は下がらない」
と招商証券のアナリストZhou Zhang氏は語る。

 NDRCはこれに対しコメントしていないが、関係者の1人によると、NDRCは最近価格設定に関する調査を異例の急速なペースで実施しているという。

 粉ミルクの調査は企業間のカルテルを明らかにするためではなく、小売価格がどのように設定されているかを調べるもので、米国など他国と中国の法律上の差異から生じる問題だ。

 NDRCの調査開始発表を受けて粉ミルクメーカーは値下げを実施した。

 これは短期的に消費者には良いことだが、インディアナ大の中国政治・経済研究センターの所長を務めるスコット・ケネディ氏は、NDRCが過去20年間にわたり中国の輸出及び投資主導の経済成長に中心的な役割を果たしてきた点を踏まえ、消費者のための監視機関としての信頼性を疑問視している。
 ケネディ氏はこれまでの中国経済について
 「産業の産業による産業のための経済」
と指摘した。

(Alexandra Harney記者)




減速する成長、そして増強される軍備


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