2013年7月16日火曜日

中国の国内消費は増やせるか :景気刺激はできるがインフレが大きすぎる

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●左:四半期GDP/中央:可処分所得の前年比増加率/右:各経済活動のGDPの伸びに占める比率。消費(赤)、投資(緑)、輸出(青)


ウオールストリートジャーナル     2013年 7月 16日 12:48 JST 
By TOM ORLIK AND BOB DAVIS
http://jp.wsj.com/article/SB10001424127887324802804578608722236947556.html

中国の国内消費は増やせるか 

【北京】
 消費者の財布のひもを緩めさせて、より国内消費に基づいた経済成長の実現を目指す中国の政策は行き詰まている。
 これを反映して今年第2四半期(4‐6月)の国内総生産(GDP)伸び率が鈍化、今後の成長の勢いも鈍ると予想されている。

 15日に発表された中国の一連の経済指標によると、都市部世帯の可処分所得の伸びは上半期に6.5%となり、前年同期の9.7%から鈍化し、GDPの成長率も前年を下回った。
 この結果、GDPに占める消費の比率も縮小し、政府の思惑と逆の動きとなった。

 IT企業のマネジャー、Peter Zhou氏(29)は、給与の伸びが「どんどん鈍化している」とし、今年の月給が2万8000人民元(45万円)と、わずか3.7%しか増えていないと話した。
 同氏は「これまでは電子機器や宝飾品などを毎月買っていた」が、今では大型の買い物は3カ月間していないと述べた。

 中国の経済が輸出や資本集約的な産業への投資へ依存することが一段と困難になり、国内消費依存型に変わる上で、所得の増加は非常に重要だ。
 内外のエコノミストはここ数年、長期的経済成長のためには増加してきた中国の中間層の支出の基盤を固めるべきだ、と主張している。

 6月の小売売上高は増えたが、上半期全体での伸びは12.7%と前年同期の14.4%増から減速した。

 中国の新指導部は、内需主導型経済への移行に際しては、短期的な経済成長が打撃を受けることも容認すると繰り返し表明している。
 しかし、これまでのところ構造的調整ではなく成長の減速が表面化している。

 国家統計局の盛来運 報道官は、30年間にわたる急成長のあとに中国経済は新たな段階に入ったと警告し、
 「技術面での突破口がなければ、同じインプットでもアウトプットが小さくなっている」
と述べた。

 第2四半期のGDP伸び率は前年同期比7.5%に減速し、ほとんどのエコノミストは今年の成長率が7.5%程度と、1990年以降最低に落ち込むと予想している。
 ウォール・ストリート・ジャーナルの試算では、米国方式である前期比伸び率の年率換算は、
 第2四半期は6.9%で、前四半期の6.6%を上回った。
 しかし、これは政府の年間目標である7.5%に達していない。

 統計局の発表を受けて、
 野村は2014年の予想成長率をこれまでの7.5%から6.9%に下方修正し、
 経済構造の調整が遅れていることなどを理由に挙げた。
 JPモルガンはこの予想を7.7%から7.2%に引き下げた。
 バークレイズは6月、中国の成長率は今後3年で
 「3%ないしそれ以下」
に減速する可能性がある
との見通しを示した。
 ただ、同社は、同国経済はこのような状況から「劇的に反転するだろう」としている。

 慎重な消費動向によって中国では再び、成長を押し上げるのに投資支出が寄与する形になった。
 上半期のGDPの伸びへの消費の寄与率は45.2%に縮小する一方で、民間設備投資や不動産、インフラ整備など国内投資は53.9%に拡大した。

 ソニーなどの企業向けにコンピューター部品を生産しているアモイの企業家Zeng Qinzhaoは、政府と同じような体質転換をしようとしたが、うまくいかなかった。
 同氏は、急速な賃金上昇と元の為替レート上昇で中国製造業の競争力は弱まっているとし、事業の多角化を決めた。

 しかし、経済が減速していることから、同氏はフライドチキン・レストランの計画を大幅に縮小した。
 同氏は当初は50店舗の新設を計画していたが、実際は10店舗だけになったと話している。
 その上、経済の減速で、「全ての店舗は赤字」だという。

 中国の最高指導者らは今年初め、バブルの気味がある不動産部門の崩壊の可能性を小さくするために、改めて厳しい措置を取ると約束した。
 今や住宅部門は経済を何とか押し上げている数少ない部門の一つだ。

 建設中の住宅は上半期に前年比2.9%増えて、昨年の縮小から反転した。
 しかし、これには代償があり、北京と深圳の不動産価格は2桁の伸びで、他の主要都市でもこれとそれほど違わない上昇率となり、初めてマイホームを持とうとする多くの人たちにとっては手が届かなくなっている。

 中国の指導者らが成長率の減速に不安を抱き始め、GDP成長率を加速させるために―あるいは少なくとも一段の減速を避けるために―いくつかのレバーを引っ張る可能性がある。
 李克強首相は最近、南部中国を視察した際に、
 「経済政策運営は成長率、失業率、その他の指標が下限を下回らないように行われるべきだ」
と述べた。
 同首相は、この下限が何なのか具体的には述べなかったが、中国は7.5%の成長を実現できないかもしれないと考えるエコノミストは増えている。
 同国ではこれまで15年間にわたって成長目標が達成されてきた。

 李首相は先週12日の国務院の会合で、成長を高めるための方策として、投資はエネルギー効率化とITに焦点を合わせるべきだと語った。
 首相は、これによって経済改革のペースも速まるとしているが、バンク・オブ・アメリカの調査ノートは、
 政府による優遇産業の選択はより根本的な構造改革というよりも、古くさい産業政策のにおいがする
と指摘している。

 中国人民銀行(中央銀行)の周小川総裁は15日の政府会合で、中小企業への貸し出しを増やすよう金融機関に求めるとともに、中小企業に対しては、資金獲得のために債券を発行するよう促した。
 会議後に発表された声明で明らかになった。

 政府当局者は現在、今年10月の共産党大会で公表される予定の経済改革計画をまとめているが、一部の学者らは既得権者の反対で大きな改革はできない可能性があるとみている。
 例えば、労働力参加率を引き上げ、消費支出の拡大にとって重要な措置である出稼ぎ労働者への社会福祉を増やせるように都市部の成長を促す計画は一部の地方指導者らの反対で行き詰まっている。

 経済改革にとっての最大の脅威は失業者の増加で、これが増加すれば、指導部は成長を迅速に加速させるためにできることは何でもすることになるだろう。
 これまでのところ、中国の労働市場は依然活況を呈している
 統計局の盛氏は、中国の諸都市では上半期に700万人の職場が創出され、農村部から都市部に流れ込んでいる出稼ぎ労働者の数は増え続けていると指摘した。

 国家発展改革委員会(NDRC)に関係のある研究者は
 「中国経済は今年第3四半期も減速傾向を続けるだろうが、政府は(成長加速のための)金融緩和政策を取らないだろう」
とし、政府はその代わりに公共支出を増やすだろうと付け加えた。
 一段の刺激策が役立つかどうかはまだ分からない。
 元中銀顧問のYu Yongding氏は、
 景気を刺激することはできるが、かつてに比べてインフレ効果ははるかに大きくなると指摘した。
 その上で、「資産バブルも心配しなければならない」としている。



東洋経済online 2013年07月12日 安間 伸
http://toyokeizai.net/category/economy-and-politics-article

中国バブル崩壊後、大相場がやってくる
シャドーバンキング問題は、「1997~98年型危機」に発展へ


●中国のシャドーバンキング問題に、世界中の関心が集まっている。中国は、果たしてこの危機を乗り切れるのか。日本の個人投資家はどう行動すべきか。このほど、『超絶バブルの安全な投資術 バブル期に始める株式投資の勝ち方』(小社刊)を書いた安間 伸氏に、「中国バブル崩壊後、世界のマネーはどう動くか」、「日米の株式市場はどうなるか」などを、大胆に予測してもらった。 

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 中国のシャドーバンキング問題に、世界中の関心が集まっている。
 中国は、果たしてこの危機を乗り切れるのか。
 日本の個人投資家はどう行動すべきか。
 このほど、『超絶バブルの安全な投資術 バブル期に始める株式投資の勝ち方』(小社刊)を書いた安間 伸氏に、
 「中国バブル崩壊後、世界のマネーはどう動くか」、
 「日米の株式市場はどうなるか」
などを、大胆に予測してもらった。
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 中国不動産バブル崩壊が、ついに金融システムへと波及し始めた。

 中国の銀行による簿外の資金運用は、2012年には14兆5千億元(約237兆円)に達している。
 そのうち約半分は「利回り10%」などと謳って、個人投資家に販売している「理財商品」である。
 だがこの投資先は不透明であり、地方政府の地上げ資金となって焦げ付いているのではないかとの噂が広がっている。

 中国政府の不動産融資規制に伴い、その「迂回路」として様々な方法が「開発」されたことは想像に難くない。
 かつて日本でも不動産融資総量規制への対策として、住専(住宅金融専門会社)など、ノンバンクを通じた間接融資が拡大、のちに大問題となった。

 日本のバブル崩壊は、
1].まず株式から始まり(1989年末に史上最高値、1990年から崩落)、
2].次に不動産下落と不良債権の顕在化、
3].そして小規模金融機関の破綻(1995年以降)が金融システム全体の危機(1997~98年)
へとつながった。

 中国も上海株の暴落からサブプライムショックを経て不動産価格下落、
 小規模金融機関の破綻と続いており、
 金融システム全体へ波及する段階にさしかかっている。
 非常に似たパターンを辿っているがゆえに、我々としては読みやすい部分もある。

 実のところ、この問題の行く末を金額から予測することは不可能だ。
 そもそも経済統計からして怪しまれる国であるから、投資金額や損失額を正確に把握することは難しく、対比するGDPも頼りにならない。
 そして経済よりも政治・軍事が優先する国なので、経済原則を無視した行動を取る可能性もある。
 したがってここではバブル崩壊のセオリーから、この問題が世界の株式市場に与える影響をざっくり考えてみたい。

■ポイントは最終消費地とグローバル信用創造の源

 確かに中国ほどの国で金融システムが機能不全に陥れば、そのインパクトは大きいに違いない。

 しかし、私はこの問題は中国を含むいくつかの新興国だけの危機で終わり、世界不況にまで発展する可能性は低いと見ている。
 つまり危機のタイプとしては2008年のリーマンショックよりも、日本の金融危機からアジア危機・ロシア危機へと波及した97~98年のイメージに近い。

 というのも、中国経済はまだ
 「代替可能な世界の工場のひとつ」
に過ぎないからである。
 日米欧のように巨大な最終消費地を提供していたり、グローバルな信用創造の源となっているわけではない。
 実はその2つがバブル崩壊の結末を予測する重要なポイントで、それらが崩れる前に適切な政策が取られるのであれば、危機は部分的なもので終わるのだ。

 今回は欧州の景気や金融機関にやや不安があるものの、米国の経済が好調なため最終需要にはほとんど不安がない。
 日本企業も生産拠点をアジアに移し、北米の好調さで穴埋めできそうである。
 したがって中国で信用収縮が起こっても、それが連鎖して世界的な投げ売りに発展する可能性は低い。

■逃げ出した資金は中国に戻らない

 もちろん影響を甘く見ているわけではない。
 しかし世界の金融経済とのつながりが深い日本など先進国と、特殊な制度・文化を持つ中国を同じように考えることも危険である。

 日本に何かショックが起こると、リパトリエーション(資金の本国回帰)が起こる。
 だから97~98年危機の時も、リーマンショックのときも世界の株が売られると同時に強烈な円高となった。
 「3.11」の東日本大震災時(2011年)も規模は小さかったものの、円高・株安となった。
 これは世界一の債権国として各国に投資している日本の特徴と言えるだろう。

 中国も確かに「金持ち国家」なのであるが、日本とは全く違う。
 政府高官からして家族や資金を国外に逃亡させ、生き残りのため「保険をかけておく」国である。
 中国の混乱が拡大すれば、むしろ資金の海外流出は加速する可能性が高い。
 いずれ「海外送金停止」「海外渡航禁止」の措置が取られる確率も低くないと考えている。
 そもそも、シャドーバンキングで集められた資金は本当に中国の不動産に投資されたのか?
 実は「投資で損をしたことにして」海外に送金されたのではないか。
 今の段階では想像に過ぎないが、たとえそうであっても驚くことではないだろう。

■株式市場は一時調整、そして緩和は「バブルの燃料」に

 中国バブルの崩壊は、一部の国や企業にとって深刻な問題である。
 特に中国の成長をあてこんで大きな投資をした資源国は、過剰投資と代金不払いに悩まされることになるだろう。

 しかしアメリカ・ドイツ・日本など競争力のある知的産業を抱える国にとって、そういった国の苦境はインフレ圧力を抑える「冷却材」のように感じるに違いない。
 輸入物価は上がらず、金利も上がらず、好調な企業収益を支える要因となるだろう。
 新興国での需要が落ちても、先進国企業のキャッシュフローは好調なはずだ。

 97~98年の危機のとき、日本・アジア・ロシアは大変な苦しみを味わった。
 日本では資金調達ができずに企業がバタバタ倒産し、大幅な円高を食らって悶絶した。
 LTCMやタイガーファンドが破綻し、リスク管理に限界があることを思い知らされた。

 しかし、欧米株式市場は95年から2000年まで続く長い株価上昇トレンドのさなかにあり、危機のピークであった98年秋に2割ほど調整をしただけである。
 今回も米国経済は盤石であり、そのおこぼれで日本企業にも相当な恩恵があると考える。
 ドイツも基本的に問題はないが、欧州ソブリン問題に飛び火すれば盤石ではないかもしれない。
 すると基本的に日米の株価は上昇トレンドが続き、中国やそれに連なる新興国は反発を交えながらも長い下降トレンドが続くという2極化が見られるだろう。

 そして中国の危機が本格化したとき
――たとえば海外送金停止、海外渡航禁止から内乱・軍事衝突まで様々なパターンがあるが――
 日米株式市場も2割から3割の急落となるに違いない。
 それに対して日米欧が大規模な追加緩和や緊急融資に踏み切れば、「今回の」中国危機はいったん落ち着きを取り戻すだろう。
  そこで生み出されたマネーは、バブルの「燃料」となり、日米の株価上昇を再加速させる可能性が高い。
 一時的な急落への備えは不可欠だが、恐がり過ぎて大きな上昇トレンドを取り損ねる愚は避けたい。


 「2015年中国バブル崩壊説」の急先鋒は確かジョージ・ソロスというアメリカの株屋だと思ったが。
 だいたいに置いて株屋連中は中国のバブル崩壊が近いと読んでいる。
 学者集団は逆に上下動はあっても中国の安泰に駒をかける方のほうが多いようである。
 どうなるかは、「神のみぞ知る」である。



減速する成長、そして増強される軍備


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