2013年6月13日木曜日

「日中の緊張状態の持続」のもつ意味?

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ウォールストリートジャーナル     2013/06/12 9:11 pm
http://realtime.wsj.com/japan/2013/06/12/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E3%81%AF%E5%B0%96%E9%96%A3%E5%95%8F%E9%A1%8C%E3%82%92%E3%80%8C%E6%A3%9A%E4%B8%8A%E3%81%92%E3%80%8D%E3%81%99%E3%82%8B%E3%81%AE%E3%81%8C%E5%BE%97%E7%AD%96%E3%81%A0%E3%82%8D%E3%81%86/

日本は尖閣問題を「棚上げ」するのが得策だろう=コロンビア大教授

 米コロンビア大学政治学教授のジェラルド・カーティス氏は尖閣諸島をめぐる問題について、日本が国際司法裁判所に持ち込まないのは誤りだが、中国がそうすることに合意しないだろうから、この問題は棚上げするのが得策だろうとの見方を示した。
 ウォール・ストリート・ジャーナルが6日に東京都港区のアークヒルズカフェで開いたトークセッション「WSJカフェ東京」で話した。

主な一問一答は以下の通り。

──安倍首相は領土問題にどのように対処しているか。

 「これも頭脳と心情の問題だ。
 つまり、実用主義と一段と観念的なアプローチの問題だ」

 「領土問題は3つある。
 中国との尖閣諸島の問題と、韓国との竹島問題、さらに、ロシアとの北方領土の問題だ。
 これら3つの問題について、深刻なのは1つだけだ。
 それは尖閣問題。
 これは潜在的に非常に危険な問題だ」

 「竹島問題はそうでもない。
 韓国人が独島(竹島)について語ったり、大統領がこの島を訪れるのを止めて静かにすれば、われわれは大ごとにするつもりはない、というのが日本の政権の見方だと考える」

 「日本にはこうした諸島を奪還する希望はないし、軍事力を行使する意図もない。
 しかし、韓国の指導者がこれは韓国の領土だと言えば、日本の指導者は国内的にはいいや違う、それは島根県に属すると主張するだろう。
 この問題は完全に対処可能だと私はみている。
 また、韓国側もそう考えていると確信している。
 したがって韓国の李明博(イ・ミョンバク)前大統領が竹島を訪問するというようなばかげたことをするのは完全に国内向けで、政治的な理由からで、私の見方では非常に無責任な行為だ」

 「2つ目は、北方領土問題だが、これは重要ではない。
 どうなるかに注目する価値はあるが、この問題は解決する可能性がある。
 その理由は2つだ。
 1つは日本には大きなエネルギー問題が存在すること。
 原発の再稼働は当面難しいだろう。
 日本経済が拡大すればするほど、エネルギーがますます必要になる。
 米国からのシェールガス輸入については多くの期待がある。
 しかしまた、ロシアから輸入できる天然ガスも大量にある。
 そして、ロシアはそれを輸出したがっている」

 「もう1つは、安倍首相が各国を訪問していることだ。
 首相はモスクワを訪問しプーチン大統領に会った。
 中国を取り囲むあらゆる国を訪れた。
 これが、北方領土問題の解決が不可能ではない理由だ。
 この地域の地政学的バランスの問題だ。
 日本がついに平和条約に調印し、大いに経済交流を行うと想像してみてほしい。
 中国政府はよく思わないだろうが、日本の強さを示すことになろう」

──日本はロシアとの間でどのような妥協ができるだろうか。

 「2プラスアルファ―と呼ばれるものだ。
 つまり、ここで問題になっているのは4島で、そのうちの2島は、日本が平和条約に調印する際にロシアが返還することで合意した。
 4島のうち、小さな方の2島だ。
 したがって問題となるのは、日本が示している公式な立場通りに、安倍首相が4島全部にこだわる場合には、解決は見られないだろう。
 したがって、2島プラス他の2つということだ。
 様々な形式が協議されている。
 1つは領土すべてをたして割って半分ずつというもの。
 あるいは、この問題を解決せずに50年か100年、共同で管理し、100年後の国民に心配をかけさせるというものだ。
 実際、これが最善の解決策だ。
 したがって、意思があれば道はあるということだ」

──中国についてはどうか。

 「これは非常に危険だ。
 安倍首相は実際、これは歴史的にも国際法に照らしても日本の領土で、議論の余地は全くないとの立場に固執している。
 習近平国家主席に会って多くのことについて語るのが非常に楽しみだが、尖閣諸島の問題での妥協については尋ねないでほしい、尖閣諸島は日本の領土だ、受け入れるように、というのが日本政府の立場だとみている。
 そして、中国政府の姿勢も同じくらい頑なだ。
 これは中国の領土なので、何としても取り戻す」

 「したがってこの状況が続く限り、日本にとっての鍵は米国を味方に付けておくことだ。
 米国の見方は米国が尖閣諸島に関して日本を見はなせば、安全保障条約自体が紙切れ同様になってしまうというものだと私は考えている。
 この条約は何のためのものか。
 日本の施政権下にある尖閣諸島を守ることを米国にコミットさせるものだ」

 「尖閣諸島は日本の施政権下にある。
 これが奇妙なほどに難しい問題になっているのは、日本の尖閣諸島の領有権を米国が認めていないことだ。
 米国は中立だ。
 米国の公式な立場は、あなたたち(日本)が中国と折り合いをつけるべきだというものだ。
 双方で解決せよと。
 しかし、日本政府は尖閣諸島を支配しているので、米国は日本の支援にコミットしている」

 「中国側は、中国人も意思によって尖閣諸島近海に出向くことができ、日本人はそれを止められないと主張し、また、中国も同諸島に対し高度な施政権を行使していると主張するために、日本政府の施政権を徐々に弱めようと試みている。
 中国側がその議論を正当化できれば、米国の立場は弱まるだろう」

 「問題は、可能な妥協などあり得るかということだ。
 答えは、あるというものだ。
 実際、田中角栄元首相は1972年に当時の周恩来首相と妥協に達し、1978年には鄧小平氏もその立場を繰り返した。
 忘れて、棚上げしよう。
 日本政府はそうした姿勢を取ったことがあることを否定している」

 「日本政府の見方はいわゆる棚上げも含め、議論することは何もないというものだ」

 「われわれは、棚上げという言葉を安倍首相と習主席に言ってほしいと思っている。
 この問題はあまりにも複雑すぎるということだ。
 そのままにしておくほうがいい。日本は施政権を保有している。
 中国は漁業権をはじめとする他の全権を有している。
 そしてそのまま棚上げしたほうがいい」

 「他の解決策は、この問題を国際司法裁判所に持ち込むことだ。
 中国側はこれを拒否している。
 日本はもっと強力にこの策を支持しないことによって過ちを犯していると私は考えている。
 日本政府の見方は、問題は存在しないというものだ。
 しかし、中国人がこれを問題だと考えれば、このケースを国際司法裁判所に持ち込むことができ、われわれは合意するだろう。
 安倍首相はそうしないとは言っていない。
 しかし、中国人は自分たちが負けることが分かっているので、そうしないだろう」


 日本としては安易な解決をとることはやめて、
 日中の緊張状態を持続していくこと
をメインにおいているのだろうと思う。
 そうすることによって中国は苛立ち、「沖縄奪回」とかいった、日本国内での「反中思想」を高揚するようなとんでもない議論が出てくる。
 日本政府はそういう中国を煽ることによって、「失われた20年」で影をひそめてしまった様々な日本人の精神的な活力に刺激をあたえようとしている、とみていい。
 国民の危機感が内部から克服されないのなら、外部から呼び水を与えるというのが目的だろう。
 また、中国としてはこのところ明確になりはじめた経済減速から発生する行き詰まり感からもたらされる、頻発する社会不満の噴出を尖閣問題でガス抜きしようとしている、ことのようだ。
 どちらもそれぞれの目的をもってやっているということである。
 どっちもどっち、ということになる。
 それが、「日中の緊張状態の持続」のもつ意味であると思える。
 日本側から言えば
 安易な結論よりも、
 長期的な「いまそこのある危機」的な刺激
を、中国が途切れずに日本に与えてくれることを望んでいる
ということだろう。
 日本は外部からの負荷や圧力には明敏に反応する体質をもっている。
 またそれを民族の特質としている。
 それを生かすためにも中国の出方は日本にとって重要だということであろう。


jiji.com (2013/06/13-13:41)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201306/2013061300487&g=pol

尖閣、対話継続が重要=日米首脳が電話会談



 安倍晋三首相は13日午前、オバマ米大統領と電話で会談した。米ホワイトハウスによると、オバマ氏は米カリフォルニア州で7、8両日に行った習近平中国国家主席との会談の内容について説明。
 また、中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島の問題をめぐり、日中が対話を続けていくことが重要との認識で一致した。
 日米首脳は、北朝鮮に核・ミサイル開発を放棄させるため、緊密に連携していく方針を確認。
 オバマ氏は、環太平洋連携協定(TPP)交渉について、日本ができる限り早く参加することに期待を示した。
 英国で17日から開かれる主要国首脳会議(サミット)で緊密に協力することも申し合わせた。

 「対話を続けていく」とは、短兵急に答えを出さずに、長期的に引っ張っていく、ということであろう。
 これで正解であろう。
 政治的に安定している日本は長時間戦術で望むことができる。
 外交とは気の長い仕事である。
 それに耐えていくことが外交である。
 いわく、日本人の好きな標語、
 『努力と忍耐』
である。
 安易な解決を求めるべきではない。
 ジックリいくのがスジというものであろう。



減速する成長、そして増強される軍備


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