●15日、米華字ニュースサイト・多維網は記事「米中首脳会談、尖閣問題では意見一致できず、中国は反撃の世論動員を発動」を掲載した。写真は米中首脳会談を伝える中国メディア。
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レコードチャイナ 配信日時:2013年6月16日 12時59分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=73345&type=0
米中首脳会談、尖閣問題では意見一致できず、
中国は反撃の世論動員を発動―米華字メディア
2013年6月15日、米華字ニュースサイト・多維網は記事
「米中首脳会談、尖閣問題では意見一致できず、中国は反撃の世論動員を発動」
を掲載した。
7日、8日の2日間にわたり、習近平(シー・ジンピン)国家主席とオバマ米大統領の米中首脳会談が行われた。
詳細は明かされていないが、日本メディアの報道をみるに尖閣問題について米中は意見を一致させることができなかったようだ。
米国の態度に中国は世論動員という反撃を開始した。
人民日報は
①.13日に「典型的な“人格分裂”」、
②.14日に「“新冷戦”を作り出す陰謀を警戒せよ」
と、安倍外交を批判する鐘声名義のコラム2本を掲載した。
鐘声は人民日報国際部が外交問題に関する重要なメッセージを発する時に使うペンネームだ。
また人民日報海外版も13日に
「“イデオロギーの違いは必ず衝突を招く”の過ちを打破せよ」
「“他国内政の干渉”という罠に警戒せよ」
と2本の記事を掲載した。
こちらは人民日報海外版が国際問題に関する重要なメッセージを発する時に使う望海楼名義が使われている。
鐘声、望海楼はともに中国政府の態度を示す風見鶏としての役割を持っている。
米中首脳会談後にこうした記事が相次ぎ掲載されたことは、中国が米中首脳会談での尖閣問題の扱いに不満を持っていることを示している。
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なんでもかんでも世界が中国の思い通りに動くと思うほうが間違っている。
日本は強く抵抗するし、アメリカは安易に中国の主張を支持することはない。
外交とはそういうものである。
成金外交では、お金の力でなんでも自分の思った通りに事が進むと思ってしまう。
それがつまずくと、ちょうどダダッコがぎゃんぎゃん騒ぐような動作をする。
未熟ということだろう。
上の記事の1本の概要を。
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サーチナニュース 2013/06/15(土) 14:24
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2013&d=0615&f=politics_0615_006.shtml
安倍政権の価値観外交 「新冷戦」の狙いに要警戒=中国報道
安倍政権の発足から半年あまりが経過するが、日本の外交活動は過去の政権と比べ積極化している。
日本は共同の価値観を強調しており、外交の場で必ず「自由・民主・人権」に言及している。
安倍政権は「自由・民主・人権」は日本の看板であり、日本と他国間に生じる問題は価値観の対立によるものだと印象付けさせようとしている。
これは安倍首相が6年前に初就任した際に推進した「価値観外交」と非常に似通っている。
中国網日本語版(チャイナネット)が報じた。
以下は同記事より。
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安倍政権が夢中になる「価値観外交」とは、いったい何なのだろうか。
世界の多極化と経済のグローバル化が急速に進んでおり、平和・発展・提携・共栄が逆らえない時代の流れになっている。
世界各国は大小と強弱にかかわらず、共同の利益が増えており、共同で対応しなければならない課題も増えている。
各国は互いに尊重し、協力し、ともに発展していくべきだ。
国家間に人為的に障壁を設置し、対立を作る狙いのすべてが、時代の流れに逆行している。
安倍政権は流れに逆行しようとしており、いわゆる「価値観外交」を推進することで、一体化した世界を再び引き裂こうとしている。
本質的に言えば、いわゆる「価値観外交」は完全に冷戦的な考え方によるもので、その目的は冷戦時代のように世界の文明発展の多様性を抹殺し、意識形態・政治体制・社会制度の違いを国家関係の親疎の基準にし、世界を対立し合う陣営に分けることだ。
安倍政権は今回も過去のやり方を引き継ぎ、さらに「価値観外交」に熱中し、これに「戦略的外交」という美しい名前をつけた。
これは実際には新しいものではない。安倍首相は初就任時に「平和と繁栄の弧」という戦略構想を提唱し、意識形態によりユーラシア大陸を分割しようとした。
日本が冷戦的な考えに夢中になるのは決して偶然ではない。
日本は冷戦時代、他国の戦略の羽に庇護され、経済発展に注力できた。
これによりわずか20年足らずのうちに戦後の廃墟から再び台頭し、世界2位の経済大国になり、冷戦の主な受益者になった。
この特殊な経歴により、日本の政治家の間では融通のきかない戦略的惰性が形成された。
冷戦が終了してから20数年が経過するが、一部の日本人は世界で意識形態の小さなサークルを作り、冷戦時代に手にした巨大な既得権益を守ろうとしている。
世界経済成長の原動力が乏しく、国際提携が複雑を極める状況下、国際社会は日本の極右勢力による「新冷戦」形成の狙いに警戒を続け、さまざまな野暮なやり方により国際関係のムードに毒を注ぎ込むことを防ぐ必要がある。
アジア諸国は得がたい歴史的な発展チャンスに直面しており、日本の極右勢力の腹黒い意図を見抜き、アジア分裂を図るいわゆる「価値観外交」に自覚的に反対し、地域のウィンウィンの関係、共同発展の良い流れを維持するべきだ。
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WEDGE Infinity 2013年06月11日(Tue) 石 平 (中国問題・日中問題評論家)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/2882
米大統領から大変な「宿題」を持ち帰った
習近平の憂鬱
アメリカ側のペースで進められた首脳会談
アメリカのカリフォルニア州で開かれた世界注目の米中首脳会談が幕を閉じた。
連続2日間、両首脳がのべ8時間以上にわたって会談したことは米中外交史上初めての出来事であり、世界の外交史上でも稀に見るケースであろう。
■米中が抱える多くの問題
世界中の多くのメディアや論者もまさにこの点に注目して、アメリカ大統領の中国に対する「異例の厚遇ぶり」の意味を詮索したり、あるいはその事実をもって「G2の新時代の到来」を論じたりして大いに盛り上がっている模様だが、別の視点から見ると、多忙を極めるアメリカの大統領がそれほどの長い時間を今回の首脳会談に費やしたのはむしろ、米中の間には今、首脳会談を通じて解決しなければならない喫緊の問題があまりにも多すぎるからである。
実際、今回の首脳会談に当たって、オバマ政権側から提起されたのは、北朝鮮の核問題、サイバー攻撃問題、気候変動問題、そしてアジア太平洋地域での安全保障問題などの多岐にわたる重要議題である。
2日間にわたる会談において、特に時間が費やされたのはやはり、アメリカ当面の最大の関心事であるサイバー攻撃問題と北朝鮮問題であることは周知の通りだ。
そういう意味では、今回の首脳会談の主導権は中国の習近平国家主席よりも、アメリカのオバマ大統領にあったと見てよいであろう。
会談の主な議題はアメリカ側が提示した、アメリカ側が関心を持っているテーマばかりであれば、それはどう考えても、アメリカ側の主導下で進められた会談なのである。
たとえばサイバー攻撃問題に関して言えば、中国自身が攻撃源と見なされているため、習主席にとっては首脳会談であまり触れたくない問題のはずだ。
しかしオバマ大統領は結局、中国側が触れたくないこの問題を持ち出して、首脳会談の最大の議題の一つとして扱うことに成功した。
会談は完全にオバマ大統領ペースなのである。
それに対して、習主席は終始「新型の大国関係構築」という抽象論を繰り返した以外に、何らかの議題を持ち出してアメリカ側にぶつけてみるようなことはしていない。
彼は単にオバマ大統領のペースに乗せられて会談をこなしていった感じである。
■成果を勝ち取ったオバマと「宿題」を持ち帰った習近平
そして2日間にわたった会談は、
オバマ大統領にとっては比較的満足のいくもの
となったと思われる。
会談後の両国の発表や各メディアの報道などを総合的に見てみると、まずはサイバー攻撃問題に関しては、オバマ大統領は米企業などが被害を受けた具体的な事例を示したうえで、中国側に調査を要求したのに対し、習主席は調査を約束するとともに、共通のルール作りを急ぐことで一致したという。
そして北朝鮮の核問題については、両首脳とも核保有は受け入れられないことを確認したうえで、北朝鮮への制裁強化など具体的な措置を取ることで合意したと報じられている。
また、気候変動問題に関しては、習近平国家主席とオバマ大統領が両国で協力して問題の解決に当たることで合意した模様である。
このようにして、オバマ大統領は自らの関心順位の高いサイバー攻撃問題と北朝鮮の核問題に関して、習主席からかなり具体性のある約束を取り付けて会談の目的をほぼ達成できた。
それに対して、習主席が挙げた会談の成果と言えば、それはすなわち、彼自身が提唱した「新型大国関係の構築」についてアメリカからの賛同を引き出したことである。
しかし考えてみれば、
いわゆる「新型大国関係構築」うんぬんとはあくまでも抽象論のレベルの話
であって、アメリカ側にしてはこのような抽象的なスローガンの一つに賛同しても賛同しなくても、別に国益に触るようなことは何もない。
言ってみれば、オバマ大統領は当たり障りのない「新型の大国関係構築」に賛同したことで習主席に花を持たせた代わりに、具体的な現実問題の解決に関する協力の約束を中国から取り付けるという「実」を手に入れたのである。
■サイバー攻撃をどう「調査」するのか
しかし中国の習近平国家主席にとって、オバマ大統領に対するこの一連の約束は実に大変なものである。
習主席は大統領との会談を成功させて自分自身と中国のイメージアップを図るために、2日間の会談においてオバマ大統領に迎合するような形で上述の一連の協力の約束を交わして家路に着いたが、帰国後の彼には大変深刻なジレンマが待ち構えているはずである。
というのも、習主席がオバマ大統領に「協力する」と約束した上述の一連の問題は、中国自身が複雑な事情を抱え、とても解決できそうもない問題なのである。
たとえばサイバー問題はまさにそれにあたる。
米国に対するサイバー攻撃の発生地は当の中国であり、中国人民解放軍がそれに深く関わっていることは周知の通りだ。
もし習主席はオバマ大統領との約束に従って、本気でサイバー攻撃に対する「調査」を行おうとするならば、それは結局中国軍に対する「調査」となるのである。
そして、アメリカとの間でサイバー攻撃を防ぐための「共通ルール」まで作ってしまえば、それはまた、当の人民解放軍に対する締め付けのルールであるに他ならない。
そうなると、少なくとも人民解放軍の目から見れば、自分たちの総司令官であるはずの習主席が「アメリカの手先」となって自分たちの首を押さえつけにくるものだから、習主席に対する軍の反発が高まってくることが予想される。
軍事委員会主席に就任して日の浅い習主席にとって、それは政治的致命傷となりかねないのである。
したがって、おそらく習主席は帰国してから、サイバー攻撃に対する「調査」を決して真剣に行わず、何らかの方法でアメリカ側を誤魔化していくことを考えるのであろう。
しかしそれでは習主席は当然、オバマ大統領からの信頼を一気に失ってしまい、あの2日間の首脳会談の「輝かしい成果」は完全に台無しになるのである。
■中国にとっての北朝鮮の存在価値
北朝鮮の核問題についても同様である。
そもそも今まで、北朝鮮の核開発が進んでいる中で、中国はなかなか北朝鮮に対して思い切った制裁措置をとることが出来なかったのは、中国側の切実な理由があってのことである。
本来、北朝鮮の存在と一定の範囲内での暴走は中国にとってむしろ好都合である。
というのも、北朝鮮が暴れると、アメリカは結局中国の力を借りてそれを押さえつけるしかないため、アメリカに対する中国の立場はその分強くなる(実際、今回の米中首脳会談で習主席がアメリカからあれほどの厚遇を受けた理由の一つもやはり北朝鮮問題があるからである)。
そういう意味においても北朝鮮は中国にとって価値のある存在だから、思い切った制裁措置で完全に切り捨てるようなことは当然したくはない。
しかも、北朝鮮をあまりに追い詰めて体制の崩壊や軍事的大暴発を誘発してしまえば、様々な面で直接的な被害を受けるのもやはり領土を接する中国自身であろう。
そして、もし北朝鮮が崩壊して朝鮮半島が米国の同盟国である韓国によって統一されるようなこととなれば、それこそが中国にとっての悪夢なのである。
したがって中国は結局、北朝鮮に致命傷を与えるような制裁措置に踏み切ることがなかなか難しいし、一方の北朝鮮は、どんなことがあっても核の開発を放棄せずに最後まで踏ん張るのであろう。
そうなると、北朝鮮の核開発阻止のための「具体的措置」を取ることをオバマ大統領に約束したはずの習主席は今後、自らの「準同盟国」であるはずの北朝鮮との戦いを始めなければならないが、その戦い自体はむしろ中国の国益を損なうものであり、しかもそれはまったく勝算のない長丁場の戦いとなるはずだ。
言ってみれば、オバマ大統領を喜ばせて首脳会談を成功させるためには、習主席は実に大変な「宿題」を持ち帰ったということである。
■習近平の抱える「ジレンマ」
場合によって中国はまた、前述したサイバー攻撃対応の「誤魔化し策」と同様、北朝鮮にお灸を据える程度の「制裁措置」をとることで米大統領との約束を果たしたこととして、基本的に北朝鮮の体制温存の道を選ぶ可能性も大であろうが、しかしそれでは、オバマ大統領との信頼関係作りも「新型大国関係の構築」もまったく無理であることは明らかだ。
言ってみれば、自分の力では解決できそうもない宿題を中国に持ち帰った習近平国家主席は、今や深刻なジレンマに陥っているのであり、カリフォルニア州の保養施設で大変な厚遇と歓待を楽しんできた彼は今後、自らの抱えるジレンマの中で苦しんでいかなければならないのである。
そして一旦、習主席は持ち帰った宿題を満足に解決できなくなってオバマ大統領を失望させてアメリカからの信頼を失ってしまうようなこととなれば、アメリカを相手にした中国の「大国外交」は結局失敗に終わってしまうことは明らかである。
さて習主席は一体どうするのか、まさにこれからの見どころである。
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[減速する成長、そして増強される軍備]
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