2013年9月11日水曜日

米国より成果が大きかった中国の財政刺激策:どちらも、失われた機会を象徴



●破産申請した米デトロイト市〔AFPBB News〕
デトロイト市が財政破綻、米自治体では過去最大


JB Press  2013.09.09(月) Financial Times
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/38648

米国より成果が大きかった中国の財政刺激策
(2013年9月2日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

 今や正式に破綻都市となったデトロイトでは、州間幹線道路の1つを空港までの短い区間で拡幅する以外、建設工事が行われている形跡はあまり見当たらない。

 実際、不振に喘ぐこの都市には概して、そのプロジェクト以外、2008年の金融崩壊を受けて成立した7890億ドル規模の米国再生・再投資法の成果を示せるものがない。

 デトロイトは5億ドルを超える資金を受け取ったが、輸送機関や建設に使われたのは、そのわずか「20%」だった。

 だが、これはデトロイトだけの話ではない。
 もしかしたらワシントンは例外だが、この法律から持続的な利益を得ている米国の都市は事実上1つもない。
 「資金の大半は、投資ではなく消費に向かった」と米連邦準備理事会(FRB)のある高官は言う。
 特にインフラに関しては、この資金に見合った成果を示すものはほとんどない。

 対照的に地球の反対側では、中国の中央政府が2008年11月に打ち出した財政刺激策は、使われた資金に見合った成果が多々ある。
 刺激策の規模は正式には4兆元だが、実際にはむしろ1兆1000元に近い(この数字には、その大半がやはりインフラの財源として使われた7兆元の地方政府支出は含まれていない)。

 むしろ一部のエコノミストは、中国は支出の成果として手に入れたインフラが多すぎると言う。
 まだ姿を表わさない乗客を待つ鉄道路線や、まだ入居者がいないマンションなどが多すぎるというのだ。

■米中の景気刺激策、既存の不均衡を強める結果に

 経済規模で世界第1位と第2位の座を誇る米中両国の財政政策は、鏡に映したように対称的だ。
 ある意味で、両国の景気刺激策は、既存の経済的不均衡を――反対方向にだが――強めてしまった。
 そしてどちらも、失われた機会を象徴している。

 米国の計画では、インフラのための資金不足に加え、政府が支援する所得移転が今では予算削減や増税に道を譲っているために、再生・再投資法は景気回復のための持続的な触媒役を果たしていない。 
 乗数効果はなかった。

 一方、中国では、政府の計画は同じことの繰り返しと見られてきた。
 国有企業に対する過去の過剰投資に逆戻りし、さらなる過剰生産能力が、投資の代わりにサービスや内需の方向にシフトする必要のある経済モデルを強化してしまう事態だ。


●企業の人員削減や賃金抑制が刺激策の効果を相殺してしまった〔AFPBB News〕

 米国の財政刺激策のほとんどは、州政府と地方政府への移転支出、減税、失業給付の延長、食料配給券のような貧困者対策に向かった。

 だが、所得支援を提供するこうした政府の取り組みは、労働者を解雇し、賃金を抑えることで利益率と収益を確保する企業の対策に圧倒されてしまった。
 支援金を民間部門からの雇用の提供と結び付ける方が良かった。

 「財政刺激策は、一時的な措置である速やかな所得支援と所得移転を、
 インフラのような動きの遅い対策と混ぜ合わせるように設計されていた」。
 JPモルガンのチーフエコノミスト、ブルース・カスマン氏(ニューヨーク在勤)はこう言う。

 「だが、この措置は、必要なものに比べると全く不十分だった。
 ただ、インフラであれば、時間とともにその恩恵が利益を生み続けていただろう。
 恩恵が薄れることはなかったはずだ

■経済において政府が果たす重要な役割

 デトロイトには今、この街をより明るい未来に向かわせる助けとなる明確な触媒役がない。
 民間部門も官民パートナーシップも、大きな希望を与えてくれない。
 ここから得られる1つの教訓は、
 政府は今でも経済において、特にインフラや新たな取り組みのための元手資金を提供する上で、不可欠な役割を果たしている
ということだ。

 デトロイトとシカゴ、トロントとを結ぶ高速鉄道があれば、不振に喘ぐこの都市ははるかに良い状態になるだろう。

 一方、カナダは、自動車のサプラインチャーンを機能させ続けるために、隣接するウィンザーからデトロイトへの新しい橋を建設するための資金を提供している。
 自動車はオールドエコノミーだと考えられているかもしれないが、そのサプライチェーンの40%はこのつながりに依存している。

 さらに、自動車の電子頭脳は完全にニューエコノミーだ
 クリーンエネルギー構想に対する政府の資金供与を含め、デトロイトが他人の資金を使って育てられるシーズはいくつかある。

  一方、大方のアナリストは、中国はインフラ重視の姿勢をもう少し弱めるべきだったと考えている。
 巨大な高速輸送路線や地下鉄路線を減らし、もっと消費を拡大させるべきだったという。

■少なくとも中国の道路や鉄道は米国よりずっと先進的


●地下鉄の切符代はコストを反映していないかもしれないが・・・(写真は地下鉄のホーム)〔AFPBB News〕

 だが、その見方は部分的にしか正しくない。
 北京の地下鉄利用者が首都の中心部から50キロ離れた頤和園に2元で行くことができれば、切符代は地下鉄のコストを反映していないかもしれないが、ここには社会財も関係している。

 「汚染、交通渋滞、食品の安全性、質の高い医療の不足は、どれも投資拡大を求めている」
とモルガン・スタンレーのアジア経済調査部門共同責任者ヘレン・チャオ氏は言う。

 どちらの国も思考をもっと大胆にする必要があるが、
 中国は少なくとも――米国のものよりもはるかに一流先進国らしい道路や鉄道の上を――正しい方向に進んでいるという期待がある。

By Henny Sender
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減速する成長、そして増強される軍備


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