2013年6月26日水曜日

次の震源地?:時限爆弾化しつつある中国経済



次の震源地? 中国の信用不安を、アメリカのサブプライム危機になぞらえる声は多い


ニューズウイーク 2013年6月25日(火)17時02分 ベンジャミン・カールソン
http://www.newsweekjapan.jp/stories/business/2013/06/post-2974.php

中国経済:株価急落でも「中国は大丈夫」な理由
China Crisis: Stocks Slammed Amid Credit Squeeze

ついに世界の株式市場に波及した信用不安を中国当局は押さえ込めるか

 中国リスクが世界に広がっている。
 中国株式市場は今月24日に急落。
 上海総合指数は前営業日終値比で約5.3%、深セン成分指数は6.73%の下落で取引を終えた。

 影響は世界に広がった。
 中国景気が減速するという悲観的な見方が広まり、ニューヨーク株式市場でもダウ工業株30種平均が一時240ドル以上下落。
 一時5カ月半ぶりの安値を付けたロンドン市場など、ヨーロッパにも不安の波が押し寄せた。

 中国株式市場で、これほど大幅な下落が記録されるのは約4年ぶりのこと。
 その原因となったのは、収まる気配を見せない中国の信用不安だ。
 現在、中国の銀行セクターは供給資金の不足に悩まされており、短期の銀行間取引金利は上昇を続けている。

 それにもかかわらず中央銀行である中国人民銀行は、現在まで資金供給などの対策を取る姿勢を見せていない。
 政府も、市中銀行がこれまで低金利で集めた資金でリスクの高い融資を行ってきたことを問題視し、金融引き締めを継続すると見られる。

 それでも
 「最終的に政府には資金がある。
 それに彼らはすでに事態を十分に認識しているため、深刻な問題に発展するとは考えていない」
と、香港大学のチーカン・タオは言う。

 現在の中国の問題を、アメリカのサブプライム危機になぞらえる投資家は多い。
 だが、著名なポートフォリオ・マネージャーであるマーク・モビアスは、
 共産党支配下の市場経済という中国独特の経済形態のおかげで、リーマン・ショック的な惨事は避けられる
と考えている。

 「中国のシナリオはまったく別物になるだろう。
 なぜなら銀行は政府の管理下にあるため、破たんすることも許されない

 モビアスは、資産運用会社フランクリン・テンプルトン・インベストメンツの新興市場投資家として530億ドルを運用している。
 そして今でも、どの新興国よりも多く投資している先は中国だという。

From GlobalPost.com特約


 もし、
 銀行が破綻せず、ウミが出ないことになると、結果はどういうことになるのか?

 失敗のツケはどこへいって、何を引き起こすのか。
 ウミがある以上、何かが起こるはずであろう。
 それとも、ウミを消すということなのだろか。
 一時、ウミを消しても、ウミを出す仕組みがなくならない限り、ウミを出し続けるということになるだろう。
 ウミを出す仕組みとは中国の組織のありかたそのものにかかわってくる。
 独裁政治で経済がクローズしていれば問題はないだろう。
 しかし、グローバル化しているなかではどうなるのか。
 「中国のシナリオはまったく別物になる」
というが、どういう風に別物になるのか。
 そしてそれは何をもたらすのか。

JB Press 2013.06.25(火)  Financial Times

社説:中国、信用バブルへの対処という難題
(2013年6月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

中国で今年4度目の追加利上げ、インフレ抑制へ

 先週の出来事はパニックめいていた。
 中国の金融機関は先週、中国人民銀行が市場に流動性を供給するまで短期の銀行間融資を奪い合った。

 この一件は、自由奔放に債務を積み上げたが、なお自由化を必要としている金融システムを管理するうえで中国が直面する難問を浮き彫りにしている。

 銀行間借り入れの7日物レポ金利は20日、11%に迫り、先月のわずか3%から急騰した。
 このような金利が続いた場合、簿外の「資産運用商品」に基づく事業を展開する多くの銀行にとって致命傷となる恐れがある。

■GDP比200%に達した信用残高

 こうした商品は、多くの場合流動性が低く、時に中身が疑わしいプロジェクト(概して不動産)に投資している不透明な仕組み商品に短期的にお金を預ける。
 最近の二十数%に上る信用の伸びの大半は、これが原因だ。
 信用残高は中国の年間国内総生産(GDP)の200%に達し、5年前の120%から急増した。

 この問題は、金融資本主義の不変の性質と中央計画の意図せぬ効果を同時に映し出している。
 政府の政策によって人為的に低く抑えられている公式金利に不満を感じる貯蓄家は、預金に代わる貯蓄商品に対する膨大な需要を生み出し、金融機関はこれを喜んで提供してきた。

 一方で、中央から命じられる成長目標(および収賄の機会)のために、地方の政府関係者はありとあらゆる手段を使って建設のための資金を確保しようとする動機を持つ。

 こうした商品の満期のミスマッチを考えると、流動性に対する懸念は深刻だが、懸念はそれだけではない。
 こうした仕組み商品の多くは、根本的に破産状態にあることも疑われている。
 これは、2009年以降、中国の成長を牽引してきた建設プロジェクトの疑わしい実質リターンの裏側だ。

 貸し出し残高の多くが不良化しているとすれば、中国政府の課題は欧米諸国が直面したものと同じだ。
 つまり、崩壊を引き起こすことも、生産的な事業への信用の流れを遮断することもなく、いかにして無謀な貸し付けを抑えるか、だ。

■時限爆弾を爆発させてはならない

 人民銀行が当初、銀行間金利の高騰を和らげるのを拒んだことは、信用問題が悪化するのを食い止めようとする中国政府の決意を示している。
 だが、その後、折れたことは正しかった。
 もしこれが時限爆弾なのだとすれば、爆発させるのではなく、爆弾の信管を取り除かねばならない。

 預金口座の金利を自由化すれば、代替商品に対する需要を弱められるが、銀行の利益率を圧迫することにもなる。
 簿外の商品に対する需要が減ったら、損失が表面化するかもしれない。

 中国政府には、銀行に資本注入する準備金がある。
 だが、どこかが担わねばならない金融破綻のコストを取り消すことはできないし、
 それがどこかを巡る、必然的に激しくなる政治紛争を避けることもできない。

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